町田ゼルビアがついに首位から陥落した。

 J1第8節、首位に立つ町田と昨季の王者ヴィッセル神戸の試合は2-1で神戸が逃げ切り、4位に浮上。町田は3位に後退した。

 町田は序盤のJリーグの主役だった。初のJ1昇格で首位に立っただけでなく、ロングスローなどのセットプレーも話題になった。ただ、ここ3試合のサンフレッチェ広島川崎フロンターレヴィッセル神戸戦が、今後の町田を占うひとつのヤマだった。

 広島戦は完敗だった。自分たちのストロングポイントである球際への出足の速さ、寄せの速さで出遅れ、こぼれ球の回収で後手に回った。後手に回ると、広島にボールを回される。その速いパスワークについていけずファウルで止めるしかなかった。試合結果は1-2だったが、内容は完敗。黒田剛監督も「本来、自分たちがやりたいことをやられた」と完敗を認めていた。

 調子が出ない川崎相手には完勝だった。ロングボールを警戒した川崎がラインを下げた分、中盤でボールを繋いで押し込み、前半は川崎にシュートらしいシュートを打たせなかった。71分にGK谷晃生の退場で1人少なくなったが、それまでの試合は完全に町田が支配していた。結果は1-0だったが、自分たちのサッカーができていた。

 そして神戸戦。神戸は絶対的エースの大迫勇也をケガで欠き、町田にとっては大きなチャンスだった。ところが神戸は、町田対策というよりも、自分たちのサッカーを徹底させた。それがハードワークであり、球際のバトルで勝つことであり、寄せの速さと動き出しの速さで少しでも相手を上回りセカンドボールを回収すること。つまり町田と同じ土俵に上がって、根比べの勝負にしたのだ。

 ハードワーク、球際の奪い合いで互角なら、個の力では神戸が上回る。それ以上に、神戸には勝負強さがあった。神戸の先制点は前半終了間際の45分。2点目は試合終了間際の89分。ここで点がほしいという時間帯、相手にとっては絶対に失点してはいけない時間帯。そこで点を決めるのは、昨季の王者らしい勝負強さと言っていいだろう。

 町田は勝負どころの3試合を1勝2敗で終えた。J1で優勝を狙うチームの、レベルの高さを思い知らされたかもしれない。自分たちのストロングポイントであるハードワーク、球際の激しさ、寄せの速さという部分で相手に上回られたら、選手の個のレベルの差、チームのレベルの差、チームの完成度の差では勝てない。それが神戸であり、広島だった。

 J2では通用したことが、J1の上位チームには通用しない。町田にとってはいい勉強になった。ただ、これから対戦する相手は、この2試合を参考にしてくる可能性がある。町田のJ1での戦いは、ここからが本番と言えよう。

(渡辺達也)

1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。

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