令和6(2024)年5月歌舞伎座『團菊祭五月大歌舞伎』夜の部で上演される『四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)』の特別ビジュアルが公開された。また、主人公・野州無宿富蔵を初役で勤める尾上松緑のコメント、撮り下ろしスチール写真も届いたので紹介する。

明治18(1885)年初演の『四千両小判梅葉』は、盗賊が主人公の「白浪物」を得意とした歌舞伎の名作者・河竹黙阿弥が、幕末に江戸城で実際に起きた御金蔵破りを題材にした作品。初演の富蔵は黙阿弥と共に数々の名作を世に送りだした五世尾上菊五郎。江戸・幕末の安政2(1855)年に野州無宿の富蔵と浪人者の藤岡藤十郎の二人が、江戸城内の御金蔵から四千両という大金を盗み出した前代未聞の大事件は、黒船来航や安政の大地震など不穏な世相の内に起きた一大センセーショナルな出来事だった。明治に入り初演された本作は、二人組の盗賊の役名に実名を用いるなど真に迫った内容で評判を呼び、黙阿弥異色の白浪物として今日まで上演が続く人気作だ。

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』の序幕「四谷見附外の場」は、夜も更けた四谷見附の堀端でおでん屋の商いをしている富蔵が、偶然再会した藤岡藤十郎に江戸城の御金蔵破りの企てを持ち掛ける場面。
この度公開された特別ビジュアルには、屋台の行灯の灯りに照らされた尾上松緑演じる富蔵の顔が闇夜に浮かび上がり、遠くには江戸城の影が……。何か見てはいけない瞬間を垣間見てしまったような、富蔵の鋭い視線と得体の知れない不気味さを感じる一枚となっている。

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

松緑は自身が演じる富蔵についてのコメントを寄せ、公演に向けて意気込んだ。

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

『四千両小判梅葉』野州無宿富蔵=尾上松緑 /(C)松竹

なお、松緑は、今月の歌舞伎座『四月大歌舞伎』では、昼の部『双蝶々曲輪日記 引窓』と夜の部『四季』に出演。歌舞伎座には、昨年9月より連続して出演しており、5月歌舞伎座『團菊祭五月大歌舞伎』で9カ月連続して歌舞伎座への出演となる。さらに6月の歌舞伎座出演も決まっている。

尾上松緑 コメント

尾上松緑

尾上松緑

御機嫌宜しう御座居ます
尾上松緑で御座居ます
来月の歌舞伎座、『團菊祭五月大歌舞伎』夜の部に於きまして
『四千両小判梅葉』の野州無宿富蔵を演じさせて頂きます
私もこの演目には何度も出演させて頂いておりますが
これまで、師匠の尾上菊五郎兄さんの富蔵を側で見ていて、陰と凄味が印象的で憧れだった役で御座居ます
また、私のイメージする“格好いい”が凝縮されている役の一つが、この富蔵で御座居ます
相手役の藤岡藤十郎に中村梅玉兄さんの胸を借りて勤めさせて頂ける事、心から嬉しく、有難く思っております
今回をスタートとして、両先輩に沢山の御教えを承りながら一生演じ続けて行きたいと考えております
この宣伝写真で拵えをしてみて、改めて身が引き締まり気合いが入りました
悪党が活躍するピカレスク物を、観に来て下さるお客様に喜んで貰える様に千穐楽まで取り組んで参ります 

歌舞伎座『四千両小判梅葉』特別ビジュアル