表裏に魚眼カメラを備え、1回のシャッターでカメラの周囲の様子をまるごと撮影できる「360度カメラ」。自撮りや猫のアップなど、撮影したあとに好きなアングルを切り出した写真や動画を生成できるのが最大の特徴です。そんな360度カメラを積極的に手がけるInsta360が、新モデル「Insta360 X4」を発表。画質を最大8K相当に高め、切り出した写真や動画のクオリティを引き上げつつ、バッテリーの持ちも改善し、実用性を高めています。

スマホやミラーレスカメラでは不可能な「アングルを気にせず撮影し、そのあとで思い通りの写真や動画に仕上げられる」という360度カメラならではの体験は、ある程度撮影に慣れ親しんだ人にとってもインパクトが大きいと感じました。

従来のInsta360 X3をベースに多くの改良を実施

背中合わせに2つの魚眼カメラを備えた360度カメラは、かつてリコーの「THETA」シリーズが市場を開拓しました。その360度カメラに、激しい動きでもぶれずに撮影できるアクションカメラの特徴を加えて利用シーンを広げつつ、装着した自撮り棒が消える処理を施して人々にインパクトを与えたのが、Insta360の「Insta360 X」(旧Insta360 ONE X)シリーズ。Insta360は、社名にあるように360度カメラが“祖業”ともいえるだけに、360度カメラの開発に力を入れています。

シリーズの4代目として今回登場したInsta360 X4は、2022年9月に登場した「Insta360 X3」をベースに、以下のような改良が加えられています。

360度動画の画質を8Kに向上(5.7KのInsta360 X3よりも解像度は78%アップ)
バッテリー容量を2,290mAhに増強、5.7K動画の撮影時間を135分に延長(Insta360 X3は81分、67%アップ)
本体の熱を効率的に放熱するサーモグリップカバーが標準で付属
タッチパネル液晶を2.5インチに大型化(Insta360 X3は2.29インチ)、保護ガラスはゴリラガラスに変更
日本語による音声操作&手によるジェスチャー操作に対応
レンズを保護する取り外し可能なプラスチック製のレンズガードが標準で付属
スマホ用のInsta360アプリを用いれば、8K動画の編集や切り出しもスムーズ

いろいろな点を改良したInsta360 X4ですが、基本的なデザインや操作方法、AIを搭載したスマホアプリによる簡単&高速な自動編集機能は従来のInsta360 X3を継承しています。本体は若干大きく重くなりましたが、充実した内容を考えるとよくこのサイズに収めたな…と感じます。

日中、夜間ともに高画質化を体感できた

Insta360 X4を使ってまず好印象だったのが、動画や写真の精細感の高さ。360度カメラは、2つのカメラで周囲の状況をまるごと撮影できるものの、一部を切り出して動画や写真として表示すると精細感が損なわれる機種もありました。しかし、Insta360 X4は最大で8K画質の動画撮影が可能になり、一部を切り出しても精細感のある動画や写真が得られました。撮影したあとにスマホアプリで自由にアングルを変えて好きなように仕上げる360度カメラの実用性が高まったと感じます。

予想以上に優れていると感じたのが、光量の少ない夜間の画質。低照度の状況では8Kではなく5.7Kで撮影した方がよい、という説明があったので5.7Kで撮影したところ、被写体ブレもなく、薄暗い繁華街も道行く人やクルマの様子が鮮明に描き出されました。夜間モードにするなど設定を変える必要はなく、ふだん通り撮影すればキレイに撮影できるのは手軽で便利だと感じます。

バッテリー性能やハンドジェスチャーは好印象

画質面以外でInsta360 X3から改良が図られた「バッテリー撮影時間の延長」「音声&ハンドジェスチャーでの操作」「タッチパネル液晶の大型化」も明確な進化を実感できました。

バッテリーは従来よりも大容量化が図られ、8K画質でも1時間以上は撮影できました。Insta360 X4には、本体の半分を覆うサーモグリップカバーが標準で付属し、装着すると撮影時に発生した効果的に放熱できるとしています。晴天の屋外で8K動画を連続で撮影しても、確かに途中で撮影が中断することはありませんでした。

日本語の音声やハンドジェスチャーでの操作に対応したのも好ましい改良といえます。ハンドジェスチャーは、手をパーの状態にして出すと動画の撮影と停止が、チョキの状態にすると写真を撮影でき、声が出すのがはばかられる状況でもスマートに撮影できました。

唯一疑問に感じたのが、レンズを保護するレンズガード。標準で付属するレンズガードは、これは安っぽいな…と感じさせるプラスチック製で、装着すると光学性能に少なからず悪影響を与えそうな印象です。別売で強化ガラス製のプレミアムレンズガードを用意しているので、光学性能とレンズの保護を両立したいならばプレミアムレンズガードを購入すべきでしょう。機材の扱いに自信があるならば、一切のレンズガードを装着せずに使うのが画質的にはベストです。

3mまで延ばせる「超長い自撮り棒」が面白い

今回、Insta360の純正アクセサリー「超長い自撮り棒」(実売価格は13,200円)を試しました。名称の通り、最大3mまで延ばせる長い自撮り棒で、大人が腕を伸ばせば5m近い高さにInsta360 X4を配置でき、まるでドローンで撮影したような高い位置から写真や動画が撮影できます。

これだけ長いのに、カーボンファイバー(炭素繊維)を用いて重さを365gに抑えており、フルに延ばした状態でも重さが気になったり不安定になることはありませんでした。都市部では周囲の構造物や電線などの存在に十分気を配って使う必要がありますが、目を引く映像の撮影に活躍してくれそうです。
どんな高性能ミラーレスでも不可能な撮影体験が味わえる

Insta360 X4は画質が向上したことで、アングルを気にせず撮影してから自在にフレーミングするのがより実用的になったのが何より好印象でした。バッテリーの持ちや放熱性能も向上し、スキのない仕上がりになったと感じます。コンシューマー向けの360度カメラはほぼInsta360の独壇場ながら、それにあぐらをかくことなく改良を加えた新製品を投入したのは評価できます。

価格は約8万円とやや高めですが、バレットタイムなどユニークな撮影モードの存在もあり、ふだんの撮影はスマホやミラーレスで満足している人も、それらでは不可能な撮影が簡単にできて面白いと感じるはず。カメラに詳しくない人から相当な腕利きの人まで、新鮮な感覚で楽しめるカメラといえるでしょう。

※今回試用したInsta360 X4は試作機のため、製品版ではさらに画質がよくなる可能性があるとのことです(編集部)

センサーサイズ:1/2インチ
絞り:F1.9
35mm判換算の焦点距離:6.7mm
動画解像度:8K:7680x3840@30/25/24fps、5.7K+:5760x2880@30/25/24fps、5.7K:5760x2880@60/50/30/25/24fps、4K:3840x1920@100/60/50/30/25/24fps
写真解像度:72MP (11904x5952)、18MP (5888x2944)
マイク:4基
バッテリー容量:2290mAh
バッテリー駆動時間:135分(5.7K 30fps)、75分(8K 30fps)
バッテリー充電時間:38分で80%充電、55分で100%充電
メモリーカードmicroSDカード(最大1TB)
Bluetooth:BLE 5.2
Wi-Fi:2.4GHz、5GHz(IEEE802.11a/b/g/n/ac)
本体サイズ:46x123.6x37.6mm
重さ:203g
(磯修)

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