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 テラスカイは、2024年4月16日、2024会計年度(2023年3月~2024年2月期、以下「2024年度」とする)の連結決算および2025年度の事業戦略に関する説明会を開催した。

 2024年度の決算は増収増益となり、2025年度以降は、4月12日に発表したNTTデータとの資本業務提携に基づく事業拡大に注力する。テラスカイの代表取締役CEO 社長執行役員である佐藤秀哉氏は、「2030年までに連結売上高700億円を目指す」と語った。

2024年度決算は増収増益、2桁成長をキープ

 テラスカイの2024年度(第18期)連結決算は、売上高が前年比23.9%増の191億3700万円となった一方で、営業利益は前年比2.1%増ではあるものの、期初予想の達成率としては47.4%の5億2200万円だった。後述する「DataSpider Cloud」の自社サービス(mitoco X)化、「mitoco ERP」のプロモーション費用などで、期中に原価と販管費が増加したという。「今期も引き続き2桁成長を遂げており、成長のトレンドに乗っているのは間違いない」と佐藤氏。

 セグメント別の売上高をみると、ソリューション事業が前年比25.2%増、製品事業が10.4%増と、両事業ともに2桁成長を達成した。ソリューション事業の伸長は、DX市場拡大を追い風とした案件の増加、テラスカイ・テクノロジーズの事業拡大を理由に挙げた。

 プラットフォーム別の売上構成でみると、Salesforce事業が前年度の62%から59%に、IaaS事業が38%から41%に変化。IaaS事業は、子会社であるSAPやAWSを中心に事業展開するBeeXおよびビッグデータとAIを手掛けるリベルスカイの売上増加に伴い上昇している。

 売上の6割を占めるSalesforce事業においては、Salesforce認定資格者数が国内1位に迫るほどに増加してきた。佐藤氏は、「NTTデータとも資本業務提携を結んだが、2025年度には単体で1番になりたい」と意気込む。

2024年度の振り返り:Salesforce上で稼働するERP「mitoco会計」をリリース、海外製品の独占契約も

 ここからは2024年度の取り組みを振り返った。

 2023年9月には、mitoco ERPブランドとしてSalesforce上で稼働するERP「mitoco会計」をリリース、財務・管理会計(GL)の機能を先行して提供した。テラスカイが“コストと時間を投資した”サービスであり、2024年に入り債務管理(AP)、2025年度内には債権管理(AR)機能を加えることで、会計機能が出揃う予定だ。

 mitoco ERPは、Salesforceのユーザー企業およびクラウドERPにおける中堅規模の市場をターゲットとしており、同ターゲット向けの機能を取り揃えて市場に切り込む。

 2023年6月には、Salesforce上でのDevSecOps推進ソリューションを展開する米Flosumと国内独占販売パートナー契約を締結。「Flosumのような海外で導入が進む製品をいち早く日本で展開していきたい」と佐藤氏。2024年2月にも、Salesforce上での建設管理ソリューションを提供する豪HardHatと国内初のインプリパートナー契約を結んだ。

 2023年9月には、セゾンテクノロジー(旧称:セゾン情報システムズ)と共同展開していたクラウド型データ連携サービスDataSpider Cloudを事業継承し、「mitoco X Powered by DataSpider Cloud」として提供開始。DataSpider Cloudと同等の機能をベースに、ユーザーのニーズに応じた機能追加、改善などの製品投資を継続していく。

 2023年7月には、テクノスジャパンと資本業務提携を発表。同社はSAPを中心にビジネスを展開しているが、Salesforceの市場にも参入しており、SAPビジネスを手掛けるテラスカイの子会社BeeXも含めて、SAP・Salesforceの両面で協業を進める。

2025年度の業績予想と取り組み:NTTデータとの資本業務提携を契機に事業拡大を

 2025年度の業績予想は、売上高は25.5%増の240億2400万円、営業利益は9億500万と、売上、営業利益共に過去最高額を目指す。「製品開発や人材採用、拠点の整備・拡張といった投資も収まってきており、利益率も改善する見通し」と佐藤氏。

 2025年度の新たな取り組みとしては、4月12日に、NTTデータと資本業務提携を締結している(参考記事:NTTデータとテラスカイが資本業務提携、Salesforce技術者で国内最大規模に)。2027年度までにテラスカイの営業利益が25億円を超過した場合には、NTTデータがテラスカイの株式取得比率を20%以上に高めて、持分法適用会社化する内容となっている。

 テラスカイ側の業務提携の狙いは4つあり、ひとつ目は、国内外のNTTデータの顧客にSalesforce導入を推進すること。2つ目は、クラウド戦略の専門チームであるCCoE(クラウドセンターオブエクセレンス)立ち上げのノウハウを両社で展開して、顧客の開発内製化や持続的な運用体制の構築をEnd to Endでサポートすること。

 3つ目は、両社のブランド力、人材育成システムをベースに、デジタル人材の獲得・拡大を加速させること。4つ目は、両社でグロ-バルマーケットの展開を加速することだ。

 生成AI分野にも積極的に取り組み、2024年4月9日には、Salesforceに格納された自社保有データを基に、自然言語で回答を返す「mitoco AI」を提供開始した(参考記事:テラスカイが「mitoco AI」提供開始、生成AIがSalesforceやERPの情報を使い回答)。「あらかじめ自社保有データを理解しているため、設定が少なくすむのが特徴」と佐藤氏。

 最後に佐藤氏は、「グループ会社もそれぞれ成長し、2024年度は24%成長を遂げ、2025年度も25%成長を目指す。そして、まだまだ先は長いが、2030年には連結売上高700億円を目指していきたい」と締めくくった。

BeeXの2024年度決算と今後の成長戦略

 当日は、SAPやAWSを中核にクラウドインテグレーションやクラウドラインセンス事業手掛けるテラスカイの子会社、BeeXの決算説明会も開催された。

 同社の2024年度(2023年3月~2024年2月期)決算は、SAP S/4HANA移行を始めとしたクラウドインテグレーション事業の好調が寄与して、売上高が前年比33.7%増の77億円、営業利益は前年比48.6%増の5億9900万円と大幅な増収増益となった。2025年度も、売上高は23%増の94億7000万円、営業利益は8.5%増の6億5000万円を予想する。

 BeeXの代表取締役社長である広木太氏は今後の成長戦略を3つ挙げる。

 ひとつ目は、「基幹システムのクラウド化/モダナイズ化」だ。SAP ERP 6.0の標準サポートが2027年に、延長サポートが2030年に終了とする中で、ユーザーのステージに合わせたSAPシステムのクラウド化、S/4HANA化(モダナイズ化)の支援に注力していく。

 2つ目は、「デジタルトランスフォーメーション」だ。「これまでDXは働き方改革にフォーカスする企業が多かったが、データドリブンやデジタルビジネス創出といった本質的な取り組みに舵を切り始めている」と広木氏。このような状況の中で、データプラットフォーム活用やモダンアプリケーション開発のための環境構築や内製化を支援していく。

 また、同社が目指すべきDXの姿として、現実(フィジカル)の情報をサイバー空間に取り込み分析して、現実世界の問題解決などを図る「サイバーフィジカルシステム(CPS)」を挙げ、その実現のために、2024年度に導入支援サービスを開始したOktaやNew Relicのような、セキュリティやオブザーバビリティのサービスにも力を入れる。

 3つ目は、「マルチクラウドリセール/MSP」だ。BeeXでは元々運用・監視サポートを展開してきたが、進化するテクノロジーに追随すべく、新たにセキュリティ、オブザーバビリティ、さらには、サービス自動化やFinOps(クラウドコストを最適化する考え)、伴走型サービスの領域にまでマネージドサービスを拡大していく。

テラスカイ「2030年までに連結売上700億円目指す」事業戦略を説明