ちょうど1週間前、傷ついていた所を保護され、犬と大親友になった野生のカササギフエガラスのモリ―が、野生動物法に違反しているとして当局に引き渡されたというニュースをお伝えしたばかりだ。
モリ―を保護してから、家族の一員のように接してきたジュリエットさんは、この出来事に心を痛め、悲嘆に暮れていたのだが、なんと事態は急展開を見せた。
彼らの暮らすオーストラリア・クイーンズランド州の州首相のツルの一声で、モリ―はジュリエットさん一家のもとに戻ってくることになったんだ。
モリ―がDESI(クイーンズランド州の環境科学革新部門)によって連れ去られてから1週間。
この間ジュリエットさんたちはありとあらゆる伝手をたどり、嘆願の署名を集めたりフォロワーたちにサポートを頼んだりして、モリ―を取り戻すためにできる限りのことをしてきた。
さらにはクイーンズランド州のスティーブ・マイルズ州首相(元環境相)の官邸に直接働きかけ、メールやSNSへのコメントでモリ―の返還を訴え続けた。
下は引き渡しから43日後、DESIから送られて来たモリ―の写真。久しぶりに見るモリ―の姿に、ジュリエットさんは涙を禁じ得なかったそうだ。
州首相の尽力で返還が決定
その結果、なんと首相本人が自分のTikTokに動画を投稿し、「モリ―は家に戻ることになった」と公言したのだ。
TikTokで動画を見る
カササギフエガラスのモリ―について、その窮状を心配して連絡をくださった皆さまに、今日は素晴らしいニュースがあります。
モリーの世話をしている人たち(ジュリエットさんとパートナーのリースさん)が、モリーを家に帰すために使用できる飼育許可プロセスが適応できることを環境省が特定しました。
私は今朝、2人と話をしたところです。彼らは今日、環境省と協力して働いています。モリーをすぐに家に帰せるよう願っています。
私に連絡やコメントをくれて、モリーを家に帰したいと言ってくれたすべての人たちに感謝します。
野生には戻せないとの判断もあった
DESIが返還に同意した背景には、モリ―が人間に馴れ過ぎており、普通のカササギフエガラスのように飛び回ったり、餌もまともに捕ったりできないと結論づけたことがある。
ただし今回の返還に際し、DESIでは以下のような条件を出したという。
・ジュリエットさんとパートナーのリースさんが、野生動物を保護、飼育するために必要なトレーニングを受け、資格をとること
・モリーが適切なケアと豊かな生活を送れるよう、DESIと継続的に連絡を取ること
・モリーを使って継続的な商業的利益を得ることをやめること
DESIはまた、2人にある役割を果たすことも要求した。
・野生動物の適切なケアを促進し、そのリハビリテーションに必要な専門的なスキルを認識するための支援と公教育の役割を果たすこと
2人がこの条件に同意した結果、モリ―は迅速にジュリエットさんたちのもとに返還されたのだ。
「本当に幸せです」と語るジュリエットさん。
帰って来たモリ―と愛犬たちとパシャリ。Instagramでフォロワーに喜びの報告をするジュリエットさんの投稿。
今回の返還の行く末を危惧する声も
しかしこの決定は、すべてに喜んで受け入れられたわけではなさそうだ。特に野生動物保護に携わる人々の中には、怒りを隠せない人もいる。
ある保護活動家は「今回の決定は、顔面に蹴りを食らったようなものだ」と、多くのボランティアが危惧し、怒りを覚えていると発言した。
この発表は、オーストラリアの野生動物ボランティアの多くを激怒させています。彼らは今後、野生動物を連れてきて自分のペットに紹介し、彼らの交流をSNSやYouTubeで配信する模倣犯が現れることを危惧しているのです。
実は今回の件で、DESIのスタッフやモリ―の保護を支持した保護活動家に対し、殺害予告を含むたくさんの脅迫が送られていたんだそうだ。
最近ではジュリエットさんが自分たちのフォロワーに対し、攻撃的にならないよう呼びかける事態になっていた。
ハッピーエンドの向こうにあるもの
確かにジュリエットさんたちには、批判を受けても仕方のない、軽率とも言える対応の甘さがあった。
モリ―を保護して以来、十分な時間があったはずなのに、野生動物を保護するために必要な資格や手続きをとらなかったこと
今回の事件が起こる半年前には、DESIの訪問も受けていたが、「窓やドアは開いており、モリ―は自由に出入りしているだけ」と主張し、職員を追い返してしまっている。
野生で生きていく上では警戒の対象であるべき犬と、仲良くさせてしまったこと。
モリ―には自分を犬の仲間だと思ってしまっている節もあり、これも今回、モリ―を野生に返せない理由の一つになったようだ。
今回モリ―はとりあえず、ジュリエットさんのもとへ帰って来たが、単純にハッピーエンドだと手放しで喜べる状況ではなさそうだ。
今後愛犬たちと前のように親しく過ごせるのか、そしてSNSでその様子を引き続き紹介できるのかは、いまだに不確定なままである。
環境省やDESI、そしてジュリエットさん・リースさんたちにはぜひ良い協力関係を築いてもらい、モリ―が今後も幸せに暮らせるよう祈りたい。
今回の発表を伝えるニュース映像はこちら。
Molly The Magpie to be reunited with best friend Peggy | 7 News Australia
References:Molly the Magpie finally returns home - after the bird was suddenly taken by wildlife authorities / Molly the magpie decision labelled a ‘kick in the face’ for wildlife carers / written by ruichan/ edited by parumo
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