その夫婦に子供はいなかった。それでも、女の子の赤ちゃんが欲しかった…ペットでもあるまいに。今はネット社会。ネットに「産んでも育てられない女性の相談にのります」と2020年1月から掲示した。そして、「私たちが養子縁組します」とか「中絶は体に良くないから、秘密出産して私たちに預ければいい」と言葉巧みに4人の妊婦たちの信用を勝ち取った。信用させるために、約11万円から100万円を渡して、新生児売買を行った。

 だが。信用させるためには、女の子だったら引き取るけど、男の子はいらないとか非人道的なことは口にはできない。中には双子もいたのだろう、5人の新生児のうち、2人を赤ちゃんポストに遺棄した。

 理由は、女の子ではないという性別問題もあるが、生まれた日が悪いという運勢の問題もあった。でもこの2人は遺棄してもらって逆に助かった。

 残りの3人は、新生児だからのべつまくなし泣く。ミルクおむつ、眠い。子育てをしたことのない「この夫婦」には負担過ぎて、暴力をふるったり、赤ちゃんポスト以外のいわゆる捨て子をしようともした。

 これらすべての児童福祉法上の児童売買、児童虐待、児童遺棄、放任などの罪で捕まった。

 「この夫婦」は再婚同士で、どちらかに(おそらく子育てをしていない男性)実子がいるが、引き取るという選択肢はなかった。

 世の中には、お姉ちゃんの赤ちゃんがかわいいから私もほしいと20歳そこそこで不妊治療をする夫婦もいる。不妊治療をするための規定は存在するのだが、それを無視する医療関係者もいないことはない。

 赤ちゃんは、人形でもペットでもない。寝ないでも、たくさん働いても、育て上げなければならない命ということを忘れている世の中になって、少子高齢化はなおさら進む。

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