Nutanixは4月17日、企業によるクラウドの採用状況を測定した第6回目となる「Nutanix
Enterprise Cloud Index(ECI)」の調査結果を発表した。今回のレポートでは、今後1~3年間でハイブリッド・マルチクラウドモデルの使用が倍増すると予測している。

調査は、NutanixがVanson Bourneに委託し、2023年12月に世界各国のITおよびDevOps/プラットフォームエンジニアリング部門の意思決定者1500人を対象に行った。回答者の属性は南北アメリカ、欧州・中東・アフリカ(EMEA)および日本を含めたアジア太平洋(APJ)地域からさまざまな業界・規模の企業が対象とした。
○グローバルの傾向

複数の環境間のアプリケーションとデータの複雑な移行に各社が取り組む中、今回のレポートでは、ハイブリッド・マルチクラウドインフラストラクチャの重要性の高まりが強調されたという。

レポートによると、セキュリティとイノベーションが過去1年間にアプリケーションを別の環境に移行させた推進要因となり、AIが企業にとって中心的な役割を果たす中、ECIの調査への回答者はAI戦略のサポートに向けた投資の拡大を優先事項としており、これに僅差で続いたのが、ITモダナイゼーションへの投資となった。

グローバルにおいてハイブリッド・マルチクラウドインフラストラクチャの導入は、インフラストラクチャの基準になり、ECIの回答者の90%はインフラストラクチャ戦略に対してクラウドスマートなアプローチを採用しており、それぞれのアプリケーションにベストな環境(例:データセンター、パブリッククラウド、エッジ)を活用している。

さらに、企業の80%以上はハイブリッドIT環境がアプリケーションとデータの管理能力にとって最も有益だと考えています。最も重要な点として、ハイブリッドITは企業幹部の優先事項になっており、回答者の約半数はハイブリッドITの導入をCIOの最重要な優先事項に挙げている。

ランサムウェア保護は、企業幹部と実務担当者の双方にとって最重要課題だが、大半の企業は、攻撃への対応で苦戦しており、企業にとってランサムウェア/マルウェア攻撃は今後も脅威であり、悪意のある攻撃者と企業のセキュリティ担当者による戦いは、2024年も続く見通しとなっている。

一方、データの保護とリカバリは引き続き課題となっており、ランサムウェア攻撃を経験したECIの回答者の71%は、完全な復旧には数日間、場合によっては数週間を要している。この問題に対処するため、企業の78%は今年1年を通じてランサムウェア保護ソリューションへの投資の拡大を計画。

セキュリティとイノベーションによる均衡が求められる中、アプリケーションとデータの移動は未だ複雑な課題となっており、自社のアプリケーションとデータを含むエンタープライズワークロードはオンプレミスのデータセンター、パブリッククラウド、小規模なエッジロケーションと、これら3つの混合環境など、各社のニーズに最適なIT環境に移行する傾向にあるという。

アプリケーション環境の多様性などもあり、ECIの回答者の95%は過去1年間で別の環境へとアプリケーションを移行させており、セキュリティとイノベーションを移行の最大の推進要因に挙げている。

企業アプリケーションとデータの移行が今後も存続するものと想定し、これを踏まえた上で柔軟性と可視性を重視してインフラストラクチャの選択肢を計画すべきとのこと。現在、複雑なアプリケーションの移行に関して企業は大きな障害に直面し、ECIの回答者の35%は現在のITインフラストラクチャを考慮したうえで、ワークロードとアプリケーションの移行は重大な課題だと回答している。

ITチームは持続可能性のプログラムを計画しているだけでなく、ITモダナイゼーションを筆頭にプログラムの導入を積極的に進めており、ECIの回答者の88%は持続可能性が自社の優先事項であることに同意している。

しかし、前回のレポートでは、実際の行動が限定的であったことに対し、多くの企業はすでに、持続可能性イニシアチブの導入に向けて積極的な対策を講じており、最も一般的な対策としては、ITインフラストラクチャのモダナイズを挙げている。これは著しい結果であり、ITインフラストラクチャ持続可能性に及ぼす直接的な影響の裏付けでもあると指摘している。

AIモダンアプリケーション、データの成長により、インフラストラクチャのモダナイゼーションは必須になりつつあり、ECIの回答者はAI戦略への投資の拡大を最優先事項に挙げ、これに僅差で続いたのがITモダナイゼーションへの投資となった。

さらに、ECIの回答者の37%は既存のITインフラストラクチャでAIアプリケーションを実行することは、重大な課題になると回答。

この課題を軽減・克服するため、企業はデータの処理とアクセスの高速化につながる、ITモダナイゼーションとエッジインフラストラクチャーの導入を優先している。これにより、複数の環境のデータをリンクさせる能力を向上させて、無秩序に広がるエコシステム全体でデータの保存場所に対する可視性を向上できるという。

○日本の状況

一方、現在の日本ではオンプレミスのITインフラが多く導入されており、今後はハイブリッド・マルチクラウドの導入が着実に進む予定だという。日本の回答者は、オンプレミスのデータセンターとプライベートクラウドの導入は急激に減少し、今後3年間で41ポイント(52%から11%まで)減少すると予測。

日本の回答者は柔軟性を最優先事項とし、次にデータサービスとしている。日本企業の49%は導入の柔軟性がインフラ選択の最優先要因であると回答し、グローバル平均の41%を上回っている。

また、その次の選択要因として、データサービスが48%と世界平均の38%を大きく上回っている。スナップショット、レプリケーション、データリカバリバックアップなどのデータサービスに重点を置く日本は、他の地域よりも機能志向が強いと考えられるという。

さらに、日本企業の94%が過去12カ月で環境間においてアプリケーションを移行しているほか、回答者の42%は現在導入しているITインフラを考えるとワークロードとアプリケーションの移行が重要な課題であると回答している。

加えて、日本企業の91%がサステナビリティを課題とし、74%が2024年にサステナビリティへの取り組みとテクノロジーへの投資が増加すると回答。

ランサムウェアについては、日本企業の44%がランサムウェア攻撃から数日で復旧しており、グローバル平均の33%を上回っている。一方で、日本の回答者は現在のITインフラの環境を考慮すると、ランサムウェアおよびマルウェア対策は依然として重要な課題であると回答し、回答者の93%はランサムウェア対策に改善の余地があるとしている。

日本の回答者の99%がデータ管理の課題に直面していると回答し、その中でランサムウェア対策とデータセキュリティがデータ管理に関する1番の課題であると63%が回答し、次にデータの所在を可視化できないことが課題であると50%が回答している。

2024年における日本企業の経営層の最優先事項は、データセキュリティランサムウェア対策であると49%が回答し、次にAI戦略の導入であると47%が回答。AI戦略は経営層の意思決定者だけでなく、組織全体で支持されると予想されており、その裏付けとして日本企業の84%が2024年にAI戦略をサポートするための投資を増やす予定であると回答している。

そのほか、日本の組織の93%がコンテナ化されたアプリケーションを導入し、アプリケーションの完全なコンテナ化率が9%と、調査対象となった国の中で最も高く、世界的に見ても2番目に高い割合となっている。
(岩井 健太)

画像提供:マイナビニュース