コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、梨さん(原作)景山五月さん(作画)の漫画「コワい話は≠くだけで。」をご紹介。

【ホラー漫画】座敷わらしが住む祖母宅、祖父の死後に変化したこととは…寄せられた583話の怪談から厳選した3話に「すごく厭な感じで良かった」と反響の声

作画担当である景山さんが3月7日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、2,900件を超える「いいね」が寄せられた。本記事では梨さんと景山五月さんに、作品のこだわりなどについてインタビューをおこなった。

座敷わらしが住む祖母宅…祖父が亡くなった翌年から変化したこととは

「コワい話は≠くだけで。」は”漫画家の景山さんのもとに寄せられた怪談を取材して漫画に描く”というフィクションホラーエンタメ漫画。実際は梨さんが怪談を作成し、景山さんが作画を担当している。本作の2巻発売時、発売記念としてX(旧Twitter)にてハッシュタグ「#コワい話をキいてくれ」とともに怪談を募集すると、583件もの怪談が集まった。本作では寄せられた怪談の中から厳選された3話を漫画化し、第19話に「結果」というタイトルで発表。冒頭のコミカルな絵柄から一転、がらりと雰囲気が変わり話が始まる。

1話目、蕎麦さんから投稿されたのは祖母宅に住む座敷わらしの話。昔から二階には座敷わらしが住んでいると言われており、たまに「トン…トン…」と小さな足音が聞こえていたそうだ。しかし、祖父が亡くなった翌年から足音は一変する…。

2話目は、榎前さんから投稿された人形供養の話だ。某神社で巫女さんをしていた榎前さんは、神社で毎年おこなわれる人形供養のために持ち込まれた人形を預かっていた。ある日、1人の老女が「家族が間違えてお雛様を預けてしまったようなので返してほしい」と神社を訪れる。事実確認をしたうえで人形の返却を了承し、老婆自身に探してもらったという。しかし人形はなかなか見つからないようす。榎前さんが老女の様子を見に行くとそこには…。

3話目は、人生まったり経営者corstFIREさんの話。1992年、当時家族が勤めていた社宅で飛び降りの自死が2件あったという。さらに同じ社宅の駐車場と近隣の別会社の社宅でも発生。その翌年には、近隣の山でも自死が起こっている。短期間のうち、近い場所で5件もの自死が発生したのだ。そして30年たった今、投稿者はこの5件の自死の位置関係から非常に恐ろしい考察をしている…。

本書には「漫画ならではの仕掛けが異様な余韻を残してコワい」「本当によくできている」「怖くて読み返せない」「すごく厭な感じで良かった」「“嫌” が煮詰まっとる」「コレはめっちゃくちゃ面白い!」などの感想が寄せられている。

■「送られてくる原作が怖いので毎話初読時は深呼吸」「オカルト板で怖い話を読み書き」景山五月さんと梨さんの怪談に対する思いとは

――「コワい話は≠くだけで。」を創作したきっかけや理由があればお教えください。

梨:「今までにないアプローチのホラー漫画を制作したい」という意味のご依頼をいただいたことをきっかけとして制作しました。梨は漫画作品に携わるのが初めてだったため、折角ならテキストとイラストレーションが混在する「漫画」という構造それ自体をうまくハックしてみたいと思ったことも理由のひとつです。

景山五月:編集さんからホラー企画の作画担当を探しているとご連絡いただいたことをきっかけに原作の梨さんの作品を読み、ものすごい衝撃を受けたのでお引き受けしたいと思いました。モキュメンタリーホラーの漫画を当時見かけたことがなかったので挑戦したいという気持ちもありました。

――本作を制作するうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

梨:いわゆる「実話(系)怪談」のフォーマットを踏襲しつつ、あまり類例のないモチーフや構成を用いることには特に拘りました。

景山五月:漫画演出としてチャレンジさせていただいた部分は色々ありますが、個人的には特に、まさに怪談を聞いているようなリズム感で読めるようこだわりました。

――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

梨:コミックス2巻所収「磁石」(12話)の、特に導入部でしょうか。当然ながら、梨はあまり「夜職」に関する話を書く機会がないため、強く印象に残っています。

景山五月:一読者目線でシンプルに好みだけで言えば3話『閑静』全体がお気に入りです!不思議な出来事と怖い出来事の中間みたいな雰囲気が好きなんだと思います。

――本作を制作するにあたり、X(旧Twitter)のハッシュタグ「#コワい話をキいてくれ」で500件を超える怪談が寄せられたそうですが、大きな反響があったことについて改めてお気持ちをお聞かせください。

梨:非常に嬉しかったのは勿論ですが、それと同じくらいに驚きました。「怖い話」というラベルで怪談を集めると基本的に(ハードルが上がるので)数は少なくなり、話のテイストも制限されるものです。しかし今回の企画で集まった話はどれも非常に興味深く、あまり例を見ない話もたくさんあったため、ひとりで慄いていました。なお、上述の理由で選定も非常に難航しました。嬉しい悲鳴です。

景山五月:うれしかったですし、読み応えがあるものがたくさんあって選考は大変悩みました。ありがとうございました。

――原作を担当された梨さんは多くの怪談を執筆されていますが、幼少期から怪談はお好きだったのでしょうか?また、怪談を文章にしようと思ったきっかけや理由があればお教えください。

幼少期、いつの間にか辿り着いていた2ちゃんねるのオカルト板で怖い話を読み書きしていたため、怪談は幼少期から好きだったと思います。また、私が人生でいちばん最初に「怪談を文章にした」のもそれらのネット掲示板でした。6歳や7歳の頃なので詳細は覚えていないのですが、恐らく当時の書き込みを見て「これなら自分でもできる」とでも考えたのでしょう。

――作画を担当された景山さんは怖い話が元々苦手だったそうですが、ホラー漫画を描くうえで大変だった・怖かったことがあればお教えください。

送られてくる原作が怖いので毎話初読時は深呼吸してから覚悟を決めて読んでいました。また、どれとは言いませんが実際に私の身の周りにあったことを(合意の上で)作品に反映したりされたことがあり、身近に本当に心霊現象があるかのようになってしまいました。今でも怖いです。

作画面でいうと時間をかけて絵を描いていると怖く描けているかわからなくなってくることがあり、そこから自分でも怖いと思えるようになるまでさらに絵をこねくり回す時間は大変でした。

――今後の展望や目標をお教えください。

梨:今回のお仕事で「イラスト+文章」で出来ることの可能性を垣間見たので、許されるなら子供向けの絵本を描いてみたいです。

景山五月:おもしろい漫画を発表できるようがんばります。

――読者へメッセージをお願いします。

梨:これまででいちばん安心安全な本作、ぜひお楽しみください。

景山五月:全3巻、何度でも読み返していただけると嬉しいです。お楽しみください。

583件の怪談の中から3話を厳選した"コワい話"が恐ろしい…/画像提供/景山五月さん