過酷な自然界に生きる動植物や昆虫らの擬態は見事なもの。その再現度には、ある種の美しさすら感じられるほどである。

なお以前Xでは、我われ人間が日常的に使用している「硬貨」にまつわる擬態が大きな話題となっていたのをご存知だろうか。

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■この十円玉、何かがおかしい…

今回注目したいのは、地元である石川県金沢市を中心に、北陸のストリートフォトグラファーとして活動するフォトクリエイター・ぽこたろうさんが投稿した1件のポスト。

「貴様十円玉じゃないんか!」と綴られた投稿には、2枚の十円玉の写った画像が添えられている…と思いきや、なんと左の硬貨は全体が錆びついた百円玉だったのだ。

百円玉

色味は完全に十円玉で、本物の十円玉と並んでも遜色ないレベルである。

 

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■「どうしたらこんな色に…」

長時間見ていると脳がバグりそうな光景は人々に衝撃を与えており、件のポストは投稿から数日で2,000件以上ものリポストを記録するほど大きな話題に。

他のXユーザーからは「昭和発行の十円玉より、平成の百円玉の方が古そうに見えるの笑う」「どうしたらこんな色になるんだ…」「この錆び方は異常すぎる」「過酷な環境で苦労してきた百円玉」など、驚きの声が多数寄せられていた。

ポスト投稿主・ぽこたうさんは、発見の経緯について「職場での会計時、お客さんからお金を貰ったときのことでした」「『3,010円のお預かりですね~』と確認したところ、お客さんから『それ100円!』と言われ、とても驚きました。お客さんも『おれも10円かと思った』と、笑っていました」と振り返っている。

百円玉

疑惑の百円玉の詳細については「パッと見、完全に十円玉でした。横から見ても昔のギザ十のような感じで、ご丁寧に良い具合の青錆までついて『百円玉が十円玉にコスプレする世界線に迷い込んじまったー』と思いました」「『十円玉に擬態した百円玉だ!』など、多くの方にも共感頂いて、驚き半分、納得半分です」とのコメントが。

とはいえ通常の使用法で、百円玉がこれほど錆びる事態など起こり得るのか、非常に疑問である。そこで今回は、百円玉を構成する「ニッケル」に精通した某協会に、詳しい話を聞いてみることに…。

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■ニッケルのプロも思わずドン引き

造幣局公式サイトの情報によると、百円玉の素材は「白銅」で、銅(75%)とニッケル(25%)で構成されていると判明。十円玉は95%の銅と数%の亜鉛、すずでできており、両硬貨の大きな違いは「ニッケルを含むか」という点である。

ニッケルは天然に存在し、光沢のある銀白色をした金属元素。地球上で5番目に豊富な元素で、多くの地域で地殻から産出するが、その殆どは地球の中心部の、我われ人間の手が届かない場所にあるという。そして、腐食と酸化に対する耐性を持っていたり、合金化が容易といった様々な特徴を持つ。

本取材に協力してくれた協会の担当者は「主に合金やめっき、化学製品などで幅広く使われています。身近な所ではステンレスですが、最近ではリチウムイオン電池の正極材の材料としても多く使われています」「なお、現在世界で生産されているニッケル約300万トン(年間)のうち、約7割がステンレス合金向けに使用されています」と、説明する。

身近な例で言うと、流し場のシンクや鉄道の車両、構造材や屋根材などに使用されており、現代人の生活範囲で「ステンレスが存在しない場所」を探す方が難しいだろう。

ステンレスStainless=錆びない、錆びにくい)という名が示すように、非常に錆びにくい合金としてのアイデンティティは、ニッケルに依るところが大きい。

百円玉

そのため協会担当者も、件の百円玉を見て「通常の用途では、ここまで銅色に錆びることは考えにくいと思います」と、ドン引きした様子を見せていたのだ。

 

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■「意図的に変色された」可能性が大

前出のように、百円玉の組成は75%が銅の白銅で、錆びにくい合金である。

こちらを踏まえ、担当者は「そのため、何らかの形(酸化性の気体が多い環境など)で銅を含む硬貨の成分が腐食を起こし、その後に乾燥し、腐食して表面に付着した銅成分が酸化され、酸化銅として銅色を呈した…というケースが考えられるかもしれません」と分析。

「銅を含む液体の状態で表面に付着した腐食物が硬貨のニッケル成分で還元され、表面に沈着した状態となる現象が起きた可能性もあります(セメンテーション反応と呼ばれ、イオン化傾向の差によって発生)。その後、乾燥してこうした状態になったのかもしれません」とも推測している。

また、十円玉と百円玉を同じ酸に入れて洗浄しようとした際に、十円玉から溶けた銅が百円玉の表面に沈着(前出のセメンテーション反応)して変色した可能性もあるそうだ。

百円玉

様々なケースが考えられるため原因の特定はできかねるが、「自然に置いてある状態でこうした反応が起きるかというと、なかなか難しいかもしれません」とのこと。やはり件の百円玉の状態は、以前の持ち主が意図的に化学反応を起こした結果、と考えるのが妥当だろう。

キャッシュレスが主流となりつつある昨今だが、今回のような「硬貨の擬態」にはくれぐれも気をつけたい。また、貨幣の損傷は「貨幣損傷等取締法」に違反する行為であることを明記しておく。

 

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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力と機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

記事内で錆びていた百円玉とは同い年である。

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