日本で働く人々の給料事情と暮らしぶりは、上向いているでしょうか? それとも……。厚生労働省令和4年 賃金引上げ等の実態に関する調査』より、現状を見ていきましょう。

「賃金引上げ実態調査」金融業・保険業の辛い現実

今月、各都道府県最低賃金が更新されました。東京は41円アップの「1,113円」、神奈川も41円アップで「1,112円」となっており、働き手にとっては嬉しい改定です。

……とはいえ、「自分のお給料事情は何も変わらない」という声はこの物価高の昨今も聞かれます。賃金の現状、世間の実情はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省令和4年 賃金引上げ等の実態に関する調査』によると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と答えた企業の割合は85.7%(前年80.7%)。一方、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」は0.9%(同1.0%)、「賃金の改定を実施しない」は6.2%(同10.1%)となりました。

業種別に見ていきましょう。「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と答えた割合が最も多かったのは、「学術研究、専門・技術サービス業」で95.7%。「建設業」95.4%、「医療・福祉」が95.2%と続きます。

一方、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」と答えた割合が最も多かったのは、「学術研究、専門・技術サービス業」が2.7%。全体として低くなっています。

「賃金の改定を実施しない」では「生活関連サービス業、娯楽業」が16.8%と最も高くなっており、「鉱業、採石業、砂利採取業」13.4%、「教育、学習支援業」10.9%と続きます。

1ヵ月あたりの改定額はいくらなのでしょうか。賃金を引き上げた企業について見てみると、平均賃金の改定額は「5,828円」。賃金を引き下げた企業については、「△4,022円」となっています。全体としては「5,534円」上昇しました。

業種別にみると、最も改定額が高かったのは「建設業」の8,101円。「情報通信業」7,919円、「学術研究、専門・技術サービス業」7,588円と続きます。最も改定額が低かったのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の3,670円でした。

「政府主導の底上げ」に期待できるか?

賃金の改定を実施、もしくは予定している企業について、最も重視した要素をみると、「企業の業績」が40.0%と最も多く、「労働力の確保・定着」が11.9%、「雇用の維持」が10.7%と続きます。

ちなみに東京都に限って見ると、令和4年7月の全常用労働者の平均賃金は、所定時間内賃金が「36万3,904円」、所定時間外賃金が「3万2,453円」、合計で「39万6,357円」でした(平均年齢42.9歳、平均勤続年数11.1年)。労働組合がある企業は、ない企業と比べて所定時間内賃金が「1万8,386円」高くなっています。

各国の平均賃金が右肩上がりで上昇するなか、ほぼ「横ばい」を30年間も続けてきた日本社会。政府主導の底上げにも期待は難しく、支持率の低下に反映されています。業種を問わず、賃金上昇を求める声はいたるところからあがっています。

(※写真はイメージです/PIXTA)