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 自作PCパーツのなかで注目度が上がり続けているのが、メモリークロック(メモリーのデータ転送速度)が高速なDDR5メモリーだ。価格が下落傾向にあることから、従来のDDR4メモリーにとってかわる主流になりつつある。しかも8200MHz駆動に対応するオーバークロック(OC)仕様の製品や、1枚で24GBのモジュールを採用した製品も登場しており、なかでもDDR5-6000に対応したOCメモリーはさまざまなメーカーやブランドが取り組んでいる。

 その代表格といえるのが、マイクロンが展開するコンシューマー向けブランド「Crucial」(クルーシャル)だ。NANDチップからSSDまで、またDRAMからモジュールまで自社で開発・生産している高い技術力と信頼性を背景に、PCパーツの定番ブランドとして認知されているため、すでに知っている読者も多いだろう。今回はそのCrucialのDRAMについてスポットライトをあてていく。CrucialはJEDEC準拠のDDR5-4800/DDR5-5600/DDR5-6000をラインアップしており、DDR5-6000対応のOCメモリーも発売している。

インテル「XMP 3.0」とAMDAMD EXPO」両対応で使いやすい「Crucial Pro」シリーズ

 CrucialのDDR5-6000対応OCメモリーと聞いて思い浮かぶのは、アルミニウムヒートシンクを装備した「Crucial Pro」シリーズだろう。Crucial Proのポイントは、インテルAMD環境のどちらでも使いやすい点にある。これは、OCメモリーの動作を手軽に設定できるインテルメモリー規格「XMP 3.0」と、AMDの同様の規格「AMD EXPO」というOCメモリープロファイルがサポートされているおかげだ。

DDR5-6000対応OCメモリーを使うなら超注目の「Crucial Pro Overclocking」シリーズ

 実は、DDR5-6000対応OCメモリーを検討している人にさらに注目してほしい製品が「Crucial Pro Overclocking」シリーズで、メモリータイミング(メモリーの応答速度)を低レイテンシー(低遅延)にカスタマイズしたスペシャルなモデルとなっている。例えば、Crucial Pro Overclockingではメモリータイミングを“36-38-38”としており、Crucial Pro DDR5-6000(48-48-48)よりもレイテンシーを25%低減しているのだ。

 Crucial Pro Overclockingのヒートシンクは、Crucial Proを継承しアルミ製としている一方、折り紙をモチーフにしたエッジのあるデザインを採用している。また基板をしっかりと覆う体裁となっているが、高さ厚さはCrucial Proと大きく異なることはないため、空冷CPUクーラーと干渉する心配は無用だろう。

メモリークロックが超重要なRyzen APUで、Crucial Pro Overclockingの実力チェック

 Crucial Pro Overclockingの性能やメリットについて、文章を読んだだけではピンと来ないという人は当然いるはずだ。そこでここでは、「Crucial Pro Overclocking 32GB Kit (2×16GB) DDR5-6000 UDIMM Black」(CP2K16G60C36U5B)とAMDの最新APU「Ryzen 7 8700G」を使ってその効果を検証したい。なお、比較用には同じくCrucialのDDR5-4800対応メモリーを用いている。

 検証にRyzen 7 8700Gを選んだ理由は、まずAPUが内蔵するGPUメインメモリーの関係にある。これらAPUは高性能なGPUを内蔵する一方で、ゲームのテクスチャーなどを展開するビデオメモリーとしてメインメモリーの一部を利用する仕組みを採用しているため、メインメモリーの仕様がゲームのパフォーマンスに影響する。自作PCを組む場合に限らずメインメモリーの容量を気にする人は多いはずだが、実は“APU(GPU内蔵CPU)+ビデオカードなし”という環境ではメモリークロックも見過ごせない要素になっているのだ。

 これはローエンGPUに迫る性能を備える最新APUのRyzen 8000Gシリーズでも同様で、よりシビアなものとなっている。Ryzen 8000Gシリーズのメモリークロックのスイートスポットは、DDR5-6000よりも高クロックなDDR5-6400であるものの、AMD EXPO対応のDDR5-6400モデルはまだまだ少ない。高クロックでの運用はユーザーの自己責任というやっかいな側面もある。

 そこで使ってほしい製品が、Crucialの高い信頼性・安定性はそのままに、DDR5-6000&低レイテンシー動作を実現したCrucial Pro Overclockingなのだ。とりわけ、検証に使うメモリー容量32GB(16GB×2)のCP2K16G60C36U5Bは、Ryzen 8000Gシリーズを使った自作PCに狙い目といえるだろう。

OCメモリープロファイルを使って、ワンクリックでDDR5-6000駆動に設定

 OCメモリーを使う際に必ず実行してほしいのがOCメモリープロファイルの設定で、メモリークロックやメモリー電圧などすべてが自動で適用される。マザーボードのUEFIを起動して操作する必要はあるものの、難しいことはない。今回のようなAMD環境であればメモリー設定でAMD EXPOを選び、画面に表示されたプロファイルのなかからDDR5-6000(通常は1番目)を選択するだけだ。

まずはメモリー帯域とレイテンシーを確認だ

 まずは、DDR5-4800対応メモリーと、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bメモリー帯域およびレイテンシーの差を確認した。システム情報の表示やストレステストやベンチマーク機能を備える『AIDA64』と『SiSoftware Sandra Lite』を使用した。

 AIDA64でメモリー帯域を確認したところ、Readは3%程度のアップという結果を得られた。一方Writeでは、DDR5-4800とDDR5-6000というクロック差がそのまま出た結果で、Copyもクロックとともにしっかりと伸びている。また、レイテンシーは93.5nsから79.6nsに低減したことが分かる。

 SiSoftware Sandra Liteも同様だ。総合的なメモリーのパフォーマンスなど、各テストにおいてDDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bが10%強スコアを伸ばしており、レイテンシーも同様に低減している結果となった。

3Dパフォーマンスが大幅アップ!定番ベンチマークでチェック

 ここでは3Dベンチマークを使って、Ryzen 7 8700Gの内蔵GPURadeon 780M)のパフォーマンスを確認してみよう。DDR5-4800とDDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bメモリークロックの差が具体的にどう影響しているのか調査した。

 まずは、定番3Dベンチマーク3DMark』の「Fire Strike」「Night Raid」「Solar Bay」を使ったテストだ。Fire StrikeDirectX 11向けテストで、画面解像度はフルHD(1920×1080ドット)となっている。Night RaidDirectX 12対応の軽量テストで、グラフィックス性能の高くないノートPCタブレットPCなどが対象のもの。Solar Bayは、APIにVulkanハードウェアレイトレーシング機能を使用したテストだ。

 テスト結果を見ると、メモリークロックによってスコアとテスト中の平均フレームレートが大幅に伸びたことが分かる。特にFire StrikeとNight Raidではフレームレートが20%近くも向上し、同じ内蔵GPUで検証したとは思えないほどの差となった。軽量なNight Raidでは30fps以上の向上だ。

ファイナルファンタジーXIV:暁月の暁月のフィナーレ ベンチマーク

 続いてのテストは、同じく定番ベンチマークソフトの『ファイナルファンタジーXIV:暁月の暁月のフィナーレ ベンチマーク』。画面解像度はフルHDで、画質は「標準品質(デスクトップPC)」だ。

 スコアに加え、レポートに表示される平均フレームレートと最小フレームレートを確認すると、DDR5-4800では「やや快適」だった指標が、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bでは「快適」にアップ。フレームレートも20%弱向上し、平均の数値はゲームをプレイするボーダーラインの「60fps」を超えた。

5本のゲームを使ったチェック!ライトなタイトルではフレームレートが向上した

 ベンチマークソフトに続いて、次は実際にゲームタイトルを用いてチェックしていこう。その1本目のタイトルは『VALORANT』だ。画面解像度はフルHD、また“低”設定と“中”設定それぞれでフレームレートを計測した。「CapFrameX」を使って、ゲーム内の「射撃場」で一定ルートを移動(オーメンを選び、スキルも使用)した様子を元にしている。

 なお“低”設定の詳細は、画質のアンチエイリアス「MSAA 4×」、異方性フィルタリング「4×」、そのほかは「低」や「オフ」だ。“中”設定では、「中」と「オン」、異方性フィルタリングを「16×」に設定した。

 VALORANTは、ローエンGPUで楽しめるゲームだけあってRadeon 780Mでも快適だ。さらにDDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bを組み合わせることでフレームレートが向上しており、実際のプレイに影響するMin(1% Low)も改善。このフレームレートなら、144Hz駆動のゲーミングディスプレーを組み合わせたヌルヌル描画でのプレイを狙えるだろう。

Tom Clancy's Rainbow Six Siege

 2本目も負荷の軽いタイトルの『Tom Clancy's Rainbow Six Siege』だ。APIはVulkanで、画質は「総合品質」で「低」と「中」を選んで比較できるようにして、ゲーム内ベンチマークを実行した。

 その結果はというと、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bの効果が大きく、フレームレートは爆上がり。CP2K16G60C36U5B搭載時は、DDR5-4800と比べて50~60fpsもアップしている。こちらも、144Hz駆動のゲーミングディスプレーを組み合わせたプレイを狙いたいところ。

Dead by Daylight

 3本目は、あまり画質にこだわる必要がないライトゲームの『Dead by Daylight』(DBDデッドバイデイライト)。画質設定では「クオリティ」を「MEDIUM」に固定し、「画面の解像度」設定は「80%」(デフォルト)と「100%」を用いて比較できるようにした。フレームレートは、チュートリアルで一定ルートを移動した際を計測している。

 DBDでもメモリークロックの影響が顕著に現れた。画質がMEDIUM、画面解像度が100%の場合、DDR5-4800ではフレームレートが60fpsを切っていたが、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bでは快適にプレイできる60fps超えにまで向上した。Min(1% Low)もしっかりと伸びているので、実際のプレイでもスムーズに感じられるだろう。

『原神』(PC版)

 4本目は、60fpsが上限になっている『原神』(PC版)だ。画面解像度はフルHDで、画質の設定はプリセットの「中」と「高」を利用して比較できるようにした。フレームレートは序盤第1幕の草原マップを一定ルートで移動して計測した。

 ほかのゲームと異なりフレームレートの向上幅は大きくないものの、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bの場合は画質「高」設定でも平均フレームレートが上限の60fpsに届いた。一方、DDR5-4800では「中」設定に軽減することで60fpsとなった。

エーペックスレジェンズ

 最後となる5本目は、ミドルクラスの負荷となる『エーペックスレジェンズ』。画面解像度はフルHDで、画質設定は各項目を「低」または「無効」に設定した状態でチェックした。また、いくつかの設定を「中」にした“低+カスタマイズ”でも確認している。フレームレートの計測では「射撃訓練場」を利用し、射撃やテルミットを使用しながら一定ルートを移動した様子を元にした。

 原神以外のゲームほどではないものの、エーペックスレジェンズの場合もDDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bによってフレームレートがしっかりと伸びたことが分かる。体感できるか微妙なところだが、60fpsを切ってしまうシーンでもCP2K16G60C36U5Bを搭載するだけで60fps台を維持できるのは高ポイントだろう。

画像の編集や動画のエンコードに影響アリ!

 DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bがゲームのパフォーマンスで明確に優位であることが分かった。そこで、メモリークロックが普段使いや画像の編集にどのように影響するのか、ゲーム以外での実力を確認しておこう。まずはPCパフォーマンスを調査する『PCMark 10』のスコアをチェックだ。

 ゲームのフレームレートのような差はないものの、Webブラウジングから、ビデオ会議、表計算や文書作成、画像編集まで、テストセッションごとのスコアが数%伸びたという結果だ。

 次は、実際にアプリケーションを使用して性能を計測するベンチマーク『UL Procyon』だ。日常使いからビジネス、学業に欠かせないオフィススソフトのさまざまな処理を元に計測するUL Procyonの「Office Productivity」で試した。

 スコアの傾向はPCMark 10と同じで、劇的な向上は見受けられないものの、「Word」でDDR5-6000のスコアが約5%アップするなどメモリークロックの影響を確認できた。

 続いては、Adobeの『Photoshop』と『Lightroom Classic』を使用して性能を評価する「Photo Editing」と、『Premiere Pro』で動画エンコードを行う「Video Editing」だ。

 Photo Editing Benchmarkでは、総合スコアをはじめ「Image Retouching」「Batch Processing」でスコアが4%程度向上した。Image Retouchingは、Photoshopによる画像編集を意識した内容で、Batch ProcessingはLightroom ClassicRAW画像を読み込み、各種プリセットを適用するという内容だ。スコアの差は大きくないものの、画像編集の機会があるならDDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bを組み合わせるメリットはあるだろう。

 Video Editingの場合、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bでは総合スコアは17%伸びた。なおこちらは、複数の動画ファイルの編集とともにエフェクトを適用し、複数種類の形式に変換する時間を計測するという内容だ。DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bの場合、動画ファイルそれぞれのエンコードに要した処理時間が短縮していることが分かる。適用するエフェクトの種類やエンコード対象の動画の再生時間次第では、無視できない差だといえるだろう。

AI画像生成の性能を測定するAIベンチマークでは、画像生成速度が短縮

 最後に試したのは、UL Procyonに新たに追加された、AI画像生成の性能を測定するベンチマーク「AI Image Generation」。『Stable Diffusion』のAIモデルを採用したベンチマークで、一般には外付けGPU(ディスクリートGPU)の検証を想定している。ただ今回は、DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bの影響を見るため、Ryzen 7 8700Gの内蔵GPURadeon 780M)を使った処理を測定した。

 内蔵GPUのためスコア自体はかなり控えめなのだが、今回の検証における注目点は画像生成速度(Image generation speed)だ。DDR5-6000対応のCP2K16G60C36U5Bを搭載することで、しっかり短縮されている。

メモリー買うならPro Overclockingがベストバイ
Crucialならではの技術力・安心感が決定打!

 Ryzen 8000Gシリーズをはじめ、AMDの最新APUとOCメモリーを組み合わせるなら、“DDR5-6000対応”と“低レイテンシー”という特徴を備えるPro OverclockingのCP2K16G60C36U5Bは、そのパフォーマンス面において間違いなくお勧めの製品だ。

 また高い技術力による信頼性や安心感を誇るCrucialブランドだけあって、検証を通じて動作に不安を覚えるシーンに遭遇することがなく、安定して動作したことも高評価だ。その点では、Ryzen APUに限らず、DDR5メモリーを検討している人やその性能アップを目指している人にCrucial Pro Overclockingをお勧めできる。

ゲームのフレームレート爆上げが狙える! CrucialのDDR5-6000メモリー「Pro Overclocking」を使わぬ手はなし!