現代人の多くが悩む、肩こり、そして様々な原因による肩まわりの痛み。食生活や遺伝は関係するのでしょうか? 本連載は、整形外科医・歌島大輔氏の著書『肩こり・五十肩・腱板断裂 肩の痛みがよくなるすごい方法』(Gakken)より、一部抜粋して紹介します。

Q 肩が痛いときにおすすめの食べ物と   控えたほうがいい食べ物はありますか?

 A  治療効果まで期待してはいけませんが、抗炎症食品を多めに食べるといいでしょう。

抗炎症食品(こうえんしょうしょくひん)というものが注目されています※1。この場合の炎症とは主に慢性炎症のことなので、五十肩や腱板断裂(けんばんだんれつ)の炎症とは少し違うのですが、抗炎症食品と炎症を促進する可能性がある食品例を紹介します。

※1 https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/healthy-weight/diet-reviews/anti-inflammatory-diet/

ただ、これらの食事を徹底したとしても、消炎鎮痛剤を飲むほうがはるかに痛みは減ると思います。食事でどうこうできる問題ではないというのが現実的な話なので、治療効果をとくに期待してはいけません。

それでも、生活習慣病の予防になりそうだということはわかっていますので、抗炎症食品を多めに食べて、反対に炎症を起こしやすい食品を避けることは実践してもいいでしょう。私自身もコーヒーや玄米、豆類などをよく摂っています。

【抗炎症食品の例】 ○果物

○野菜

○高繊維質の全粒穀物

○豆類

○一価不飽和脂肪酸を含む食品(アボカド、オリーブオイルナッツなどの種子類、ナッツバター)

○多価不飽和脂肪酸オメガ3脂肪酸など)を含む食品(クルミ、亜麻仁、チアシード、サケ・ニシンイワシ・サバなどの水産物)

○紅茶

○コーヒー

カカオ分70%以上のチョコレート

ハーブスパイスターメリックジンジャーなど)

○適量のアルコール  

【制限すべき炎症性食品の例】 ●炭酸飲料、ジュース、アイスティーなどの甘味飲料

●白いパン、パスタ、白米などの精製炭水化物の過剰摂取

揚げ物

ベーコンソーセージなどの高脂肪加工肉

クリームやバターなどの全脂肪乳製品、部分水素添加油脂、脂肪分の多い肉などの飽和脂肪酸

●アルコールの過剰摂取

Q 親も私も肩こりに悩んでいます。   肩がこりやすいのは遺伝でしょうか?

 A  遺伝的な要因よりも、生活習慣やストレスの要因のほうがはるかに大きいです。

肩こりは遺伝的な病気ではありません。遺伝的な要因よりも、生活習慣やストレスなどの要因のほうがはるかに大きいというのが、多くの専門家に共通する認識です。

ただ、イギリスの研究※2によると首や肩の痛みに関連する遺伝子が、3つほど見つかっています。それでも「多少は関係があるだろう」という程度だと思います。

※2 Meng, W. et al. A genome-wide association study finds genetic variants associated with neck or shoulder pain in UK Biobank. Hum. Mol. Genet. 29, 1396–1404 (2020)

親が肩こりになりやすかったり、家系的に肩こりの人が多いからといって、「自分も肩こりになりやすいのではないか」と気にする必要はありません。

それよりも、エビデンスはありませんが、どちらかというと筋肉が少ない人に肩こりが多く、運動をして適度に鍛えている人は肩こりが少ない印象があります。書籍内で紹介した1分肩トレのような運動を習慣づけていただくことが大切です。

Q 体質や性格は肩の痛みに影響しますか?

 A  性格は影響します。細かいことは気にせずポジティブであることを心がけましょう。

体質はわかりませんが、性格は肩の痛みに影響します。恐怖や抑うつ、不安などネガティブな感情になりやすい、あるいは神経質な性格は肩痛の重要な原因になるという2022年の研究結果※3があります。くわえて、あがり症など自覚的なストレスが強い人は肩こりや首こりと関連があることも2006年の研究※4で示されています。

※3 Vogel, M. et al. The Unhappy Shoulder: A Conceptual Review of the Psychosomatics of Shoulder Pain. J. Clin. Med. Res. 11, (2022)

※4 Kimura, T., Tsuda, Y., Uchida, S. & Eboshida, A. Association of perceived stress and stiff neck/shoulder with health status: multiple regression models by gender. Hiroshima J. Med. Sci. 55, 101–107 (2006)

他人は気にしないようなことを気にしすぎてしまう人や、物事に対してネガティブになりやすい人は、肩こりになりやすい傾向があります。

逆に普段はポジティブな性格で、神経質ではない人でも、たまたま嫌なことが起こるなどネガティブな状況に置かれた場合、肩痛のリスクが高くなります。肩の痛みを避けるには、細かいことは気にせずポジティブであることを心がけましょう。

歌島 大輔 整形外科専門医 日本整形外科学会認定スポーツ医

(画像はイメージです/PIXTA)