『60代からの見た目の壁』(株式会社エクスナレッジ)の著者で医師の和田秀樹氏は、医師であるにもかかわらず「医師の言葉よりも自分の体の声を聞くことのほうが大事」だと力説します。その背景とは……詳しくみていきましょう。

「年齢の呪縛」から自由になろう

人間は常に選択をしながら生きています。よく年をとると、「あのとき、別のほうを選んでいたら……」と後悔する人がいますが、そう思うのは過去に生きているからで、これから先のことを見ていません。そんな人は見た目も頭も、たちまち老け込みます。

老け込みたくなかったら、やりたい生き方を始めることです。自分が動かない限り、ずっと老け込んだまま。そのことに70歳で気付いたとしても、80歳までは10年あります。

10年あれば、あれこれ「実験」できます。着てみたい服を着たり、よいアクセサリーや時計を買ったり、クルマが好きならよいクルマに乗ればよい。そうやって、自分の好きなことを追求するのです。

その際、変な自己規制をするべきではありません。年をとると「年齢呪縛」と言ったらよいのか、「自分はもう70だから……」とか言う人がいますが、年齢は関係ありません。

70歳からスポーツカーに乗ってなにが悪い?

例えば、70歳でスポーツカーに乗りたいと思ったとします。それを買うお金もあるし、運転にも自信があるのに、それを年齢のせいにしてあきらめている人がいるような気がします。

状況として許されているのに、年だからと言ってやらないのは、実にもったいないことではないでしょうか。もちろん、もうそんなものに興味がなくなったというのであれば、それは仕方ありません。それもその人の生き方です。

「医者の言葉」よりも「体の声」

人の体はみんな同じではありません。一人ひとり個性がありますし、生活習慣も異なります。それを一律に同じ数値でコントロールしたら、むしろ弊害が起こるのは当然のことです。

医者の言うままにクスリを飲んで体調が悪くなったり、最悪の場合、大事故に至るような生活をみなさんは選びたいのでしょうか。私はこのやり方で元気に過ごしていますし、おしゃれを楽しみながら、仕事もバリバリこなしています。

それで、数年後に亡くなることになったとしても、現在の体調のよさをとったほうがよいと思っています。

高齢者の運転事故…じつは“クスリ”が原因だった!?

ちなみに、私は高齢者の運転事故の多くはクスリによる意識障害ではないかと思っています。

年をとると動脈硬化を起こして血管の壁が厚くなります。長年にわたって高齢者医療に携わってきましたが、実際にお年寄りを診てわかったことの1つは、動脈硬化を起こしていない高齢者は1人もいないということです。

だからといって、すべての高齢者が動脈硬化から心筋梗塞を発症するわけではありません。ただ、血管の壁が厚くなっていると、低血糖や低血圧を起こしたときに意識障害を起こしやすいのです。

高齢者から運転免許を取り上げる根拠の1つに、高齢者の重大事故がありますが、クスリを使って過剰に数値を下げていることが原因である可能性も否定できません。

私が弁護士だったら、因果関係を証明して、クスリを処方した医者に損害賠償を求めるでしょう。これもまた私が高齢者の免許返納に反対する理由の1つです。

いずれにしても、医者から言われる目標数値よりも、自分の体の声を聞くことのほうが大事だということです。体の声を聞くためにも、鏡で自分の顔を見ることが大事です。

「顔色が悪い」は的を射ている

昔は、「顔色が悪い」という言い方がありました。体調の悪化は顔に表れるのです。ところが、数値偏重の医療が一般の人たちにも浸透してしまった結果なのか、最近はあまり言われなくなりました。

前述のように人の体には個性がありますし、ライフスタイルも異なります。食べたいものを食べることをやめない、クスリはなるべく飲まないという生き方をしたほうが調子がよいのであれば、その選択をするのはその人の自由です。

そのときの体の声、自分の体からのメッセージに「見た目」があります。鏡を見るのもその1つですが、自分の体を客観的に見ることは、ファッションだけでなく、健康にとっても大事なことなのです。

和田 秀樹 医師