出版160周年記念『不思議の国のアリス展』が横浜高島屋ギャラリーにて4月17日(水) に開幕。5月6日(月・振休) まで開催されている。『不思議の国のアリス展』は、風刺挿絵画家のジョン・テニエルが挿絵を担当し、1865年に英国マクミラン社から、ルイス・キャロルペンネームで出版された児童小説『不思議の国のアリス』の原点に迫る展覧会。会場では、マクミラン社が所有する、日本初公開となるカラー原画をはじめ、印刷の原版や貴重な研究資料など約250点を展示されている。

ウサギを追いかけ、不思議の国に迷い込んだ少女・アリスの冒険を描いた『不思議の国のアリス』。ルイス・キャロルが生み出した幻想的で、奇想天外なストーリーはもちろん、その存在を強く印象付けているのが、英国人画家であるジョン・テニエルによる挿絵だ。

展示風景より
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM
タルトをぬすんだのはだれ?」
左からディズ・ウォリス彩色(ジョン・テニエル原画)、ジョン・マックファーレン画(ジョン・テニエル原画)、リトル・フォークス・エディション(ジョン・テニエル原画/彩色者不明)、ジョン・テニエル原画
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM

マクミラン社は1903年、ジョン・テニエルの挿絵に色付けしたカラー版を出版。その後、テニエルの挿絵をもとに、1911年には、水彩画家のハリーシーカーによる16点、続いて、1927年にはマクミラン社で活躍していた画家ジョン・マックファーレンによる34点の彩色画が掲載された本をそれぞれ出版している。さらに1995年には出版130周年を記念し、ハリーシーカーが描いていなかった挿絵76点が女流画家ディズ・ウォリスによって描かれ、『不思議の国のアリス』と続編『鏡の国のアリス』のすべての挿絵がカラー化された。

展示風景より
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM
展示風景より
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM

不思議の国のアリス展』では、画家4人のたくみな表現を比較展示し、その全貌を明らかにしている。ジョン・テニエルの挿絵を、ハリーシーカーが新たな彩色画として描き上げ、青いドレスに白いエプロン、金髪、髪には青いリボンという、おなじみのアリス像が確立され、その後は、ジョン・マックファーレン、ディズ・ウォリスが歳月をかけて、色彩のバトンをつないでいった。

「涙の池」
左からジョン・テニエル原画、ルイス・キャロル挿絵(「地下の国のアリス」複製)、リトル・フォークス・エディション(ジョン・テニエル原画/彩色者不明)、ディズ・ウォリス彩色(ジョン・テニエル原画)
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM

そんな歴史を目にすることができる、非常に貴重な展示は、物語の一節も添えて紹介されており、物語を知らなくても楽しめるよう工夫がされている。また、ジョン・テニエルはオレンジ色、ハリーシーカーは金色、ジョン・マックファーレンは銀色、ディズ・ウォリスはエメラルドといった具合に、額の色で彩色者がわかるようになっているのも、心憎い。

額の色にも注目
「女王陛下のクロッケー場」
左からディズ・ウォリス彩色(ジョン・テニエル原画)、リトル・フォークス・エディション(ジョン・テニエル原画/彩色者不明)、ジョン・テニエル原画(再プリント版画)
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM

なお、ルイス・キャロルの死後には、「リトル・フォークス・エディション」と銘打たれた小型の本も出版されており、初版である1903年版では、アリスが青いドレス、黄色い縞のストッキングを身につけているが、1907年版ではドレスは赤に変わっているので、要注目。こちらは額の色が、ピンクになっている。

「ブタとコショウ
左からジョン・マックファーレン画(ジョン・テニエル原画)、ハリーシーカー彩色(ジョン・テニエル原画)、リトル・フォークス・エディション(ジョン・テニエル原画/彩色者不明)、ジョン・テニエル原画(再プリント版画)
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM
アリスが着るドレスの色が、画家によって違っている
アリスの証言」
ディズ・ウォリス彩色(ジョン・テニエル原画)ジョン・マックファーレン画(ジョン・テニエル原画)、リトル・フォークス・エディション(ジョン・テニエル原画/彩色者不明)、ジョン・テニエル原画(再プリント版画)
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM

不思議の国のアリス展』の開催にあたり、マクミラン社児童書最高責任者であるベリンダ・イオニ・ラスムッセン氏が来日。「マクミラン社とルイス・キャロルは長年にわたる信頼関係を築いており、長い歴史を誇っています。『不思議の国のアリス』の成功は、母国イギリスに留まらず、現在175ヶ国の皆様に楽しんでいただいています。今、世界は混迷を極めていますが、アリスというキャラクターを通して、文化交流できることで、問題の解決に役立てられればと思っています」と挨拶した。

リンダ・イオニ・ラスムッセン氏
会場にはフォトスポットも
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM
会場にはフォトスポットも
(C) MPIL THE MACMILLAN ALICE TM

取材・文・撮影:内田涼

<開催概要>
『出版160周年記念 「不思議の国のアリス展」』

会期:2024年4月17日(水)~5月6日(月・振休)
会場:横浜高島屋ギャラリー8階
時間:10:00~18:30 (19:00閉場) ※最終日は~16:30 (17:00閉場)
料金:一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料

公式サイト:
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/alice160th/index.html