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 月の表面は不均衡な状態になっている。実はこれには理由があるという。今から約42億2200万年前、月が誕生した数百万年後に裏返しになったという。

 月の内部の地中奥深くに沈み込んだ高密度の物質が、マントルと混ざり合って再び月面へと浮上したというのだ。

 月が裏返ったなど荒唐無稽にも思える仮説だが、このほどアリゾナ大学の研究チームによって、それを裏付ける新たな証拠が発見されたそうだ。

 『Nature Geoscience』(2024年4月8日付)に掲載された研究では、月の重力場の微妙な変化から、その地下にたっぷりと鉱物を含んだ層が沈んでいるだろうと報告されている。

【画像】 月の重力異常の謎

 2011年、NASAが打ち上げた2機の探査機が月を回り始めた。目的は月の重力の分布を探り、その地図を作成することだ。

 Gravity Recovery and Interior Laboratory(”重力回収・内部研究所”の意)の頭文字をとって「GRAIL」(”聖杯”という意味だ)と名付けられたこのミッションでは、ある地域を飛行すると探査機が加速することから、月面に重力異常があることが明らかになった。

 ドイツ航空宇宙センターのアドリアンブロクエ氏は、「こうした重力異常は、月の40km奥深くに高密度の岩石があることを示しています。これらの岩石は、月の初期のダイナミックな進化の名残でしょう」と説明する。

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現在の月の表面 / image credit: NASA/JPL

地下にあった重い鉱物がマントルと混ざり合い月面へ浮上

 形成されたばかりの月は、マグマの海におおわれていた。やがてこの海が冷えて固まると、上部にあったあまり密度が高くない層が結晶化し、マントルと地殻が形成された。

 ところがもっと地下奥深くにあったより密度の高い層は、結晶化するのに時間がかかった。この層は鉄やイルメナイト(チタン鉄鉱)を含んでいるために重く、しかも上の層よりも密度が高かった。

 そのため、やがて月の奥深くへと沈み込み、月のマントルと混ざり合った。これによって溶けて、チタンが豊富な溶岩流となってまたも月面へと浮上してきた。これは現在でも見られることだ。

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(左)月、(右)マントル逆転による堆積性降下物を示す断面の模式図 / image credit:

 この月の裏返り説は、アポロ計画で持ち帰られた月の石から高濃度のチタンが検出された時代からすでに提唱されていた。だが、今回の研究は、月の微妙な重力異常がそのことを裏付けている。

 今後のアルテミス計画で人類が再び月に降りたったとき、このダイナミックな月誕生の物語を伝える証拠がさらに見つかるかもしれない。

References:What happened when the moon 'turned itself inside out' billions of years ago? | Space / The Moon Turned Inside Out Billions of Years Ago, Scientists Reveal : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

[もっと知りたい!→]月の巨大クレーターの裏側に異常な重力を作り出すほど大質量の金属塊が眠っているという調査結果(米研究)

 
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42億年前、月は内側からひっくり返って現在の月面が形成されたという証拠を発見