さわやかな雰囲気や自然体な演技が好評を博す俳優・松下洸平さん。


昨年は3クール連続でドラマ出演を果たしており、現在の日本ドラマ界に欠かせない存在となっています。


松下さんは2008年、21歳のときにシンガーソングライターとしてデビュー。翌年、ミュージカルグローリーデイズ』で舞台俳優としてのキャリアをスタートさせ、その後ドラマや映画にも出演。2019年のNHK連続テレビ小説スカーレット』にてヒロインのお相手役を演じ、一躍人気になりました。さらに言うなれば、大活躍だった昨年に引き続き、4月20日からスタートする『9ボーダー』が注目されています。


そこで今回は、有名脚本家に師事している“脚本家の卵”の筆者が、松下さん出演作のなかから厳選し、松下さんの魅力がたっぷりと堪能できるドラマを5作品ご紹介します。


※本記事にはネタバレがあります。


◆出世作『スカーレット



連続テレビ小説 スカーレット Part2 (NHKドラマ・ガイド)」NHK出版



●『スカーレット』2019年、NHK「連続テレビ小説」/U-NEXTNHKオンデマンドで配信中


戦後まもなく、一家総出で信楽(滋賀県)にやってきた主人公・川原喜美子(戸田恵梨香)。信楽焼で知られる信楽の地で、陶芸への情熱を胸に陶芸の世界に飛び込んだ喜美子の、さまざまな試練を乗り越えながら強く生きる半生を描いた作品です。


本作は松下さんの出世作。松下さんは喜美子の夫となる十代田八郎を演じ、信楽の地になじむ八郎の素朴なキャラクターと、松下さんの自然な演技が注目され一躍大人気に。「#八郎沼」がTwitter(現X)のトレンドランキングに入るなど大きな話題となりました。


第46話で初めて出会う喜美子と八郎。信楽焼の特徴で話が弾む様子は、これからの二人の関係の発展を予感させるシーンとなっており、全話のなかでも胸が高鳴る重要回で必見っです。


◆誠実なキャラクターがぴったりな『最愛』



画像:TBSテレビ 金曜ドラマ『最愛』公式サイトより



●『最愛』2021年、TBS「金曜ドラマ」/U-NEXTHuluNETFLIXプライム・ビデオで配信中


新進気鋭の実業家・真田梨央(吉高由里子)は、ある殺人事件の重要参考人となってしまいます。その事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)は、梨央が15年前に想いを寄せていた初恋相手。“最愛”の人を守るために展開するラブストーリーと、殺人事件の真相を追うサスペンスストーリーが見事に絡み合う良質な一作です。


本作で演じた大輝は頼りがいがあり、愛する人を真っ直ぐに想う誠実なキャラクターで、松下さんのイメージにぴったり。15年前のシーンでも、少し年上の憧れの先輩という初恋の人物像を見事さわやかに演じています。


本作の見どころは、相容れないことが多い立場同士の禁じられた恋愛模様。特に第6話は禁断感が最も高まる回でした。刑事という大輝の立場を考慮し、「もう会わない」と告げる殺人事件の重要参考人・梨央。そんな梨央想いを理解しながらも、大輝は彼女を抱きしめます。しかし梨央の決意は固く、大輝の手を振り払い……。二人の間に立ちはだかる“壁”を飛び越えて行動に出る、大輝の切ない想いが溢れ出る名場面でした。


◆冷静沈着で合理的なバディを演じた『アトムの童』



アトムの童』公式サイトより



●『アトムの童』2022年、TBS「日曜劇場」/ディズニープラスで配信中


才能あふれるゲーム開発者の安積那由他(山﨑賢人)が、経営難の老舗玩具メーカー「アトム玩具」の仲間とともに、ゲーム業界に君臨する巨大IT企業の因縁の相手である興津(オダギリジョー)に立ち向かっていく下克上物語です。


松下さんは主人公のバディ役。冷静沈着で常に合理的な判断をする、那由他と対照的な性格の菅生隼人を演じました。隼人は一見、打算的な人物のように見えますが、回を増すごとに強い意志を持つ人物であることがわかってくるのです。


本作での松下さんの演技の特徴は、相手との関係性によって表情をガラリと変えていること。注意深く理性的に判断するという隼人の人柄を、表情や振る舞いで演じ分けていました。相手役を引き立たせつつ、松下さんが演じるキャラクターの背負ってきた人生を感じさせるという、彼の演技の強みがより引き立った一作と言えるでしょう。


◆本人役に挑んだサスペンスコメディ『潜入捜査官 松下洸平』



●『潜入捜査官 松下洸平』2023年、「TVer」オリジナル作品/TVerで配信中


松下さんが警視庁特殊潜入捜査官・松下洸平役(本人役)として主演を務める、TVer初のオリジナルドラマ。とある犯罪組織の幹部と噂される大物俳優を捜査するために、警察官の“松下洸平”が、俳優として芸能界に潜入しているという設定のサスペンスコメディーです。


アドリブもありコント感のある本作は、松下さん本人役ということもあり、他のドラマではなかなか観られない松下さんの“素”が垣間見えるのも見どころのひとつ。特に第2話、フジテレビのバラエティ番組『全力!脱力タイムズ』の収録反省会に松下さんが参加した場面は必見です。


くりぃむしちゅー有田哲平さんにアドリブを振られ、松下さんが何度も笑いを堪えているシーンは、まさに『全力!脱力タイムズ』を観ているかのよう。豪華キャストとの松下さんのお芝居や、1話約20分×全5話と、手軽に鑑賞できる点もおすすめポイントです。


◆控えめで謙虚で包容力のあるキャラクターを好演『いちばん好きな花』



木曜劇場『いちばんすきな花』© フジテレビ



●『いちばん好きな花』2023年、フジテレビ「木曜劇場」/FODで配信中


境遇や考え方がまったく異なる男女4人が、とあるきっかけで巡り会い「友情」と「愛情」というテーマに向き合っていくストーリーです。


松下さんは出版社で働く会社員・春木椿役を演じました。椿は控えめで謙虚で包容力のあるキャラクターですが、結婚直前で婚約者に振られ「誰かの一番になることができない」と劣等感を抱える人物。“いい人”の裏に抱える葛藤や独特な価値観が、椿のセリフやテンポに滲み出ていて、登場人物だけでなく視聴者の心までをも魅了します。


本作は4人の会話劇が見どころのひとつなのですが、相手の目をじっと見つめ、相手の言葉を咀嚼して、自分の気持ちを懸命に伝える、そんな松下さんの“受けの演技”が光る作品です。


<文/逢ヶ瀬十吾・A4studio>


【逢ヶ瀬十吾/A4studio】(あいがせじゅうご/エーヨンスタジオ)編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。有名脚本家に師事している脚本家の卵。映画・ドラマ・舞台などエンタメ全般に興味を持つ。『エンターテイメントって何?』を追求していきたい。



松下洸平写真集「体温」(マガジンハウス)