【写真・画像】赤字と乗務員不足で「桜島フェリー」値上げ&減便、反対派も「致し方ない」 架橋案も… 桜島に住み続ける? 1枚目

 近年、全国的に深刻化している路線バスの運転手不足。鹿児島市内を走る南国交通では3月から断続的に平日ダイヤの減便を行い、鹿児島交通も今月から複数の路線廃止を含む減便ダイヤで運行している。

【映像】“桜島大橋”ができた時のイメージ図

 もう1つ、市民と観光客の重要な足になっているのが「桜島フェリー」だ。鹿児島港と桜島を結ぶ海の路線だが、赤字経営と乗務員不足の中、昨年度から5隻から4隻に削減。しかし、収益は改善せず、7月から運賃の値上げを決定した。

 噴火というリスクも抱える鹿児島で、市民の足を確保するには何が必要なのか。公共交通機関は赤字でも維持するべきなのか。『ABEMA Prime』で議論した。

■値上げ反対派も「致し方ない」 架橋案も?

 桜島フェリーの値上げは片道料金で、小学生以下が100円→130円、中学生以上が200円→250円、普通乗用車が1950円→2350円など。鹿児島市議会議員で産業観光企業委員会の委員長を務めるのぐち英一郎氏は「やむを得ない値上げだ」と話す。「“市役所のそばに住んでいれば取れる書類が、桜島に住んでいると数百円余計にかかる”とよく言われる。日常的なインフラとして、必要不可欠な方々のための負担は可能な限り抑えた上で、今回の値上げに踏み切ったものだ」。

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 値上げに反対している、桜島出身で社会福祉士の岡山隆二氏も「赤字の規模からみると致し方ない」という見方だ。「全国的に見れば、小学生以下が片道100円、中学生以上でも200円は安いと言われていた。ただ、島民としては少しでも増えると負担になる。特に支障が出るのは車の料金だ。(桜島の)右側の大隅半島の方が鹿児島市に出る、フェリーに15分乗ればすぐ中心地に行けるというメリットも大きい」と述べる。

 そんな中、橋を架ける案もあるという。桜島架橋建設推進協議会の磯部氏は、値上げは島民に死活問題であるほか、フェリーの夜間減便が防災の観点で問題になると指摘。橋を架ければ5分程度で渡れ、アクセスが良くなれば観光客が増えるとしている。ただ、問題は費用だ。2012年の調査では、約2kmの大橋が建設された場合の概算工事費は約1200億円。年間維持管理費は3.8億円と、桜島フェリーの年間赤字3.5億円(2022年度)を上回る。一方、開通で見込まれる効果・利益は年23.1億円となっている。

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 のぐち氏は「高規格の道路の整備もあり、桜島フェリーの貨物やお客さんが減っている状況がある。災害についても、100年前の大噴火の再来を考えた時、避難計画はかなりのクオリティのものが作りきれている認識だ。フェリーの運行体制などの見直しは随時必要だと思うが、錦江湾があり、大噴火で片方は繋がっているという観光資源を楽しみに来る方々が相当数いることを考えると、今の景観も維持したい」と説明。「架橋を望む方々からの陳状が市長や議会に来ることはあるが、自治体として進める段階にはない」とした。

 では、フェリーをコンパクト化するような構想はないのか。「今のフェリーは一定規模のトラックや観光バスも乗る。車両も人もというところで、耐用年数がきたら新しい船に作り変えてやってきた。ただ海上交通の足としては、もう少し小型化したものでフレキシブルなダイヤを組むということは検討に値すると思う」との見方を示した。

■フェリー以外も経営厳しい交通インフラ、桜島に住み続ける?

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 噴火活動が続く桜島に住み続けることをどう考えるか。岡山氏は「そこに住むこと自体がリスクだという視点はある。ただ、生まれた時から住んでいる側からすると故郷だし、大きな噴火が起きても当たり前のように生活している。“やっぱり桜島がいい”と言う住民の方は多い」と述べる。

 鹿児島市営の交通インフラはフェリー以外も厳しい状況にある。2022年度の決算は、路面電車は約2000万円の黒字の一方、路線バスは約1億4000万円の赤字、公共交通不便地用のあいばすは約1億7000万円の赤字だ。

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 のぐち氏は、「市内交通は万年赤字だが、地形的に車以外での移動が不便なため廃線にはできない。桜島島民には年金暮らしの高齢者も多く、フェリー値上げもギリギリのラインだ」「廃止すれば市民生活がなりゆかず、市は血を流しながらも続けざるを得ない」と説明。

 一方、岡山氏は市場原理に基づいた廃線や効率化、移住、コンパクトシティ化を訴える。「今後どんどん人口が減っていく中で、赤字が助長されるのは明らかだ。それを住民と話し合う場面や機会が少ないのだと思う。社会福祉士として、介護が必要になった時のことを考えると、住み慣れた家でギリギリまで頑張るよりも、自分で動けるうちに移り住む選択をしたほうがいいこともある。良い意味でのコンパクトシティ化、そういう合意形成はますます必要になってくる」。

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 のぐち氏は「子どもたちが少なくなり、小中学校が7つ統廃合して2年後に一貫校を完全新築で作る。これは島民の方々やさまざまな地域団体の合意を持って進むものだ。桜島の大爆発の映像などを見て“本当に住み続けるの?”と思われるかもしれないが、住民は自然の恵みも含めて考えている。また、新年度から島内全体でライドシェアの実証実験も始めている状況もある。不便さが増すというよりは、桜島の状況を生かして楽しく元気になるような、そういう方向性が見えてきている」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

赤字と乗務員不足で「桜島フェリー」値上げ&減便、反対派も「致し方ない」 架橋案も… 桜島に住み続ける?