DeNAへの入団会見で笑顔を見せる筒香。写真:萩原孝弘

DeNA復帰は揺るぎない信念によって下された決断

「プレイヤーとして、1つのポジションを全力で取りに行きます」

 4月18日横浜スタジアムを開放し、9600人のファンの前で行われた筒香嘉智の再入団会見。再び「背番号25」のユニフォームに袖を通した男がとりわけ強調した言葉が、それだった。

【動画】さっそく快音連発! DeNAが公開した筒香嘉智の打撃練習シーン

 渡米から5年。マイナーも、独立リーグも経験し、MLBでの活躍の道を模索し続けた“球道者”は、複数のNPB球団からのオファーを受けながらも、古巣DeNAベイスターズへの帰還を決意した。ポジション的にフィットしやすい思われる球団も手を挙げていたとされているが、敢えて激しいレギュラー争いが待つDeNAへの復帰は、「常に野球が上手くなる方を選んできたつもり」という本人の揺るぎない信念に基づいている。

 ファンからの熱い歓迎を受けた筒香だが、ここからは「ポジションをどうぞというような勝負の世界は、僕はないと思ってます」と自身も承知しているように、激しい定位置争いに身を置くことになる。

 まず、守備位置だが、ベイスターズ時代に頭角を現してから彼はレフト定位置。プロ入り当初は、横浜高校時代から守っていたサードやファーストにも就いていたが、宮﨑敏郎ホセ・ロペスがガッチリとレギュラーを張っていたこともあり、よっぽどのアクシデントが起きない限りはレフトで出場していた。

 一方で、アメリカで試行錯誤を続けていた昨シーズンの筒香は、ファーストでの出場が最多200イニング弱、次にサードが100イニング強。ライトとレフトでも合わせて150イニング強と主に内野手としての起用が多かった。

 では、チームの現状はどうか。今シーズンの開幕時のDeNAは、サードは宮﨑が健在で、レフト佐野恵太、ファーストには怪我から復帰のタイラー・オースティンがレギュラーとして抜擢されていた。

 しかし、4月10日の中日戦でアグレッシブな走塁を敢行したオースティンが右足太ももの肉離れで早々と戦線を離脱。それ以降は佐野がファーストを守っている。そのことで外野は、ライトこそドラ1ルーキー度会隆輝が固定されているが、センターとレフトには関根大気桑原将志、梶原昂希、さらにはルーキーの井上絢斗らがフレキシブルに起用されている。

キャプテンシーを持つ男の“見えない力”こそ――

 もし、ここに筒香が割って入るとすれば、最適解として考えられるのはファーストだ。というのも、2020年から打率3割を切ったことのなかった佐野が、昨年は.264と低調だったのだが、これは先頭打者を任されたことに加えて、慣れないファーストの守備に挑戦した影響もあるとみられるのだ。

 それだけに佐野をレフトで固定し、その穴をアメリカで内野も卒なくこなしていたアドバンテージもある筒香が埋める形がベターと見る。無論、宮﨑や佐野に休養日を与える際にも、内外野をこなせる器用さは貴重となる。

 次に打順だ。DeNAは開幕こそオースティンが2番に入る“攻撃型オーダー“でスタートしたが、頼みの助っ人砲が離脱してからはルーキー石上泰輝関根大気、1試合だが山本祐大が入るなど固定できていないのが現状である。

 そこに強打とNPB時代出塁率.382を誇る筒香が上位打線に入れば、昨年の打点王牧秀悟を、佐野と宮﨑のリーディングヒッター経験者が挟む強力クリーンアップに繋がる理想的な流れが可能になるだけに、現状は「2番」に収まることが最善と見る。

 また、筒香が2016年の.393、17年の.326のような得点圏での勝負強さを発揮するとなれば、強力クリーンアップの一角にはめ込むことも可能。中軸の形を崩したくないのであれば、後ろを構える“恐怖の6番”を任せるオプションも他球団にとって脅威となるはずだ。

 そして、なにより弱小球団を引っ張り上げたキャプテンシーを持つ男の“見えない力”こそが、チームにとって最大の補強と言えよう。「ファンの皆様と勝利、優勝というものを強く思って、毎日ハードにプレーしていきたいと思います」と、いまだ果たしていない頂に到着するため、背番号25の挑戦は続いていく。

[取材・文/萩原孝弘]

DeNA電撃復帰の筒香嘉智は“恐怖の6番”起用も?「ハマの至宝」を活かす最適解を考える