共働き家庭が多い現在は、家事や育児の負担も男女平等という考えが浸透しつつあるが、あくまでそれは昔に比べればの話。実際には昔の価値観のままという家庭も珍しくなく、あまりに前時代的な様子にドン引きしたなんて人も多いようだ。

 外資系IT企業に勤める大賀光彦さん(仮名・34歳)は、早くに父親を亡くした母子家庭育ち。それでもキャリアウーマンだった母親のおかけで子供のころは不自由しなかったが、父方の親族はほとんどが九州だったこともあり、亡くなってからは最低限の付き合いしかなかった。

 だが、結婚2年目の19年のお盆休み、祖父母の墓参り夫婦で九州へ。その際に叔父の家に顔を出したが、絵に描いたような男尊女卑の家だったそうだ。

◆初対面の妻に対し、休む間も与えない伯父

「父親は3人兄弟の次男。長男の伯父宅には同じ町内に住んでる三男の叔父夫婦、さらに帰省中の従兄弟夫婦もいましたが、居間で酒盛りしていたのは男衆だけ。伯母たちは台所でつまみを作ったり、食事の準備をしていました。私たち夫婦は両家とごく親しい友人だけを招いての海外ウェディングだったため、父方の親族とまともに話をするのはこれがほぼ初めて。それなのに伯父は到着早々、妻に対し『○○さんも手伝ってきなさい』ってさも当たり前のように言ったんです

 大賀さん夫婦の家事は分担制。友人をはじめ、職場の上司や同僚もそういう家庭がほとんどだったため、女性が家事をして男性が何もない伯父宅の状況にカルチャーショックを受けてしまう。

「はるばる東京から来た自分の妻に休むヒマも与えず、台所行って手伝えっていくら伯父でもあまりに失礼じゃないですか。だから、さすがにこれは言わなきゃと思ったのですが、妻は私がすでにイラッと来てるのがわかったんでしょうね。『私は大丈夫だから』ってすぐに手伝いに行ったんです。まさか着いて10分も経たないうちに来たことを後悔するとは思いませんでした(苦笑)

◆苦言を呈したらビールをかけられた

 その後は伯父たちに付き合って飲みながら近況を報告したそうだが、共働きの妻が母親同様にキャリアウーマンだったことが気に入らなかった様子。「早く子供を産まんと」「女性はやっぱり家のことをしっかりしなきゃ」と時代錯誤な発言を繰り返し、つまみをひと通り作って居間に戻ってきた妻に対し、無言でグラスを出してお酌を強要してきたとか。

 しかも、一瞬キョトンとする妻に「気が利かんなぁ。大賀家の嫁になったんだからそのくらいやってもらわんと」とついに妻本人に直接ダメ出し。これには彼もさすがに頭に来て、妻に「帰ろう」と言って帰り支度を始めたそうだ。

 伯父たちは当然騒いだが、大賀さんが「初対面の妻にこんなことをさせること自体が失礼だし、いくら身内だろうと論外。そもそもそんな上から目線で命令される関係でもないですよね。何様のつもりですか?」と言ったらビールをぶっかけられたため、同じようにビールを伯父の頭にかけたそうだ。

◆再び疎遠になったが後悔はしていない

「ずいぶん大人気ないことをしたと思いますが、もう二度と会うつもりはなかったし、別にいいかなって。伯父も叔父もゆでだこみたいに顔を真っ赤にして怒ってましたが、『いくら身内だからって調子に乗んなよ。今日のお前の言動、スマホで録音してるからネットで公開してやろうか? あんたらが勤めてる役場宛に音声ファイルを送るのもありだな』って言ったら今度は顔を青くしていました。でも、それって自分たちの言動・態度に問題があると認めているのと同じじゃないですか。だったら最初からそういうことをしなければいいんですよ」

 結局、最後まで謝罪の言葉はなく、それどころか「こ、こんなことをしてタダで済むとは思うなよ」と捨て台詞まで飛び出す始末。この衝撃の出来事から5年近く経つが、伯父たちとはお互い一切連絡は取り合っていない。

「一応、母には報告しましたが、『お母さんが付き合いをやめた理由がわかったでしょ』って。その辺の話って詳しく聞いたことはなかったですけど、この一言で理解できました。ちなみに妻からはお礼を言われましたが、同時に『あの程度のことでキレんな! お前は子供か!』ってメチャクチャ怒られましたけどね(苦笑)」

 しかし、普通は相手がいくら男尊女卑的な考えの持ち主でも親戚付き合いをやめることは難しい。大賀さんのやり方は褒められたものではないが、ああやって妻を守ろうとする姿勢は学ぶべきものがあるかもしれない。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

―[話の通じないおっさんの末路]―


画像はイメージです