フラット35」という住宅ローンはご存知でしょうか? CMや広告で「聞いたことがある」という人もいるでしょう。フラット35の種類やメリットについて、田方みき氏・関尾英隆氏による共著『Q&Aで簡単!家づくりのお金の話がぜんぶわかる本 2024』(エクスナレッジ)より一部抜粋して、ご紹介します。

Q1. 【フラット35】って何?どこで借りても同じ?

⇒A. 全期間固定金利型が特徴のローン。借入先で手数料や金利が違います

フラット35は全期間固定金利型の住宅ローン。住宅金融支援機構が債権を買い取ったり(買取型)、保証したり(保証型)することで民間の金融機関をバックアップし、各金融機関から提供されているものです。保証料や繰り上げ返済手数料が無料などのメリットがあります。また、持病があるなどの理由で団体信用生命保険に入れない場合、フラット35では団信に加入せずに融資を受ける選択肢もあります。ただし、持病があっても入れる保険に別途加入しておくなど万が一に備える対策も必要でしょう。

フラット35は多くの金融機関で取り扱っていますが、どこで借りても条件が同じというわけではありません。窓口になる金融機関によって金利や事務手数料が違っています。毎月の返済額や総支払額に関わってくることなので、いくつかの金融機関を比較したうえで窓口を決めるといいでしょう。

フラット35の「省エネ基準」への適合義務化

2023年4月以降の設計検査申請分から、新築住宅は「省エネ基準」への適合が義務化。「断熱性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上」「建築物エネルギー消費性能基準(別途、結露防止措置の基準あり)」のいずれかへの該当が必要だ。

---------------------------------

【ここが大切】

フラット35から借りるために必要な条件や、借りられる金額の上限は、どの金融機関でも同じ。そのため、A銀行では融資を断られたけれど、B銀行ではOKだった、ということは原則ない。

●購入・新築する物件が一定の基準を満たしていることが融資条件。基準をクリアしていることを示す「適合証明書」が必要になり、証明書交付のための物件審査手数料がかかる。

フラット35の「買取型」はどの金融機関でも融資が受けられるかどうかの条件は同じ。しかし、「保証型」は金融機関によって異なるので注意。なお、現在、保証型を扱う金融機関はわずかだ。 ---------------------------------

Q2. 【フラット35】Sって何?どんな家が対象になるの?

⇒A. 耐震性などの性能をクリアすると一定期間、フラット35よりも低金利です

フラット35よりも低い金利が一定期間適用になるので、毎月返済額や総返済額をより少なくできるのが【フラット35】S。利用するにはフラット35の基準に加えて、高い水準の断熱を実現した「省エネルギー性」、地震に強い「耐震性」、高齢者等にやさしい「バリアフリー性」、長く暮らせて間取り変更などが用意な「耐久性・可変性」のうちの1つ以上を満たす必要があります。

2022年10月以降の設計検査申請分からは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速するために、省エネルギー性の基準が見直されたほか、ZEH等住宅も【フラット35】Sの対象に。一部、基準が緩和され、免震建築物は【フラット35】Sの金利Bプランから、金利Aプランの対象に見直されました。【フラット35】Sの基準はとても細かいので、これから建てる家が対象になるかは住宅会社に尋ねるといいでしょう。

ZEH(ゼッチ)

ZEHとはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略。断熱性能や省エネ性能が高く、太陽光発電システムなどでエネルギーをつくることで、「使うエネルギー≦創るエネルギー」になる住宅のことを指す。

--------------------------------- 【ここが大切】 ●金利Aプランは、断熱性能等級5&一次エネルギー消費量等級6/耐震等級3or免震建築物/高齢者等配慮対策等級4以上/長期優良住宅のなかから1つ以上を満たすことが条件。 ●金利Bは、断熱等性能等級4&一次エネルギー消費量等級6、もしくは断熱等性能等級5以上&一時エネルギー消費量等級4または等級5/耐震等級2以上/高齢者等配慮対策等級3以上/劣化対策等級3&維持管理対策等級2以上から1つ以上を満たすこと。 ●2022年10月からZEH等の基準に適合する住宅も【フラット35】Sの対象になった。金利の引き下げ期間は5年間。2022年9月以前の設計検査申請分も、再度、申請を行うことで適用される。 ---------------------------------

Q3. 【フラット35】地域連携型ってどんな人が利用できるの?

⇒A. 家を建てる地域の住宅施策によっては【フラット35】の金利が一定期間引き下げられます。

フラット35はさまざまな借り入れニーズに応える商品ラインナップが用意されています。「子育て世帯または若年夫婦世帯が利用できる【フラット35】子育てプラスや、中古を買ってリフォームをする場合の【フラット35】リノベ、長期優良住宅を取得する場合の【フラット50】、そして、家を建てる地域によっては【フラット35】地域連携型が利用できます。 これは子育て世帯や地方移住などに対する積極的な取り組みを行う地方公共団体と、住宅金融支援機構が連携することで、【フラット35】の借入金利から引き下げられた金利が一定期間適用になるもの。地方公共団体からもらえる住宅取得に対する補助金などのサポートも併せて、住宅取得の際の経済的な負担を軽くする効果があります。 【フラット35】地域連携型には子育て支援、空き家対策、地域活性化の3種類があり、【フラット35】S や【フラット35】リノベ、【フラット35】維持保全型との併用も可能です。

 

フラット35】地方移住支援型

東京23区に在住または通勤する人が東京県外へ移住する際、地方公共団 体による移住支援金交付と併せて利用できる【フラット35】地方移住支援型。当初5年間、【フラット35】の借入金利から0.6%(※)引き下げられる。

※2025年3月31日までの申込受付分に適用

---------------------------------

【ここが大切】

●家を建てる市区町村で【フラット35】地域連携型を利用できるかは、住宅金融支援機構のホームページで確認することができる。 https://www.flat35.com/loan/flat35kosodate/index.html  

●【フラット35】地域連携型を利用する際には、地方公共団体に対して、利用対象証明書の申請を行い、証明書の交付を受け、融資を申し込む金融機関に、フラット35の適合証明書と併せて提出する必要がある。  

●【フラット35】地域連携型には予算金額がある。予算金額に達する見込みになると、受付が終了となる。受付終了日は終了の3週間前までにフラット35のホームページで告知されるので、確認しておこう。 ---------------------------------

(※写真はイメージです/PIXTA)