現在のVTuberシーンにおいて、タレントの活躍する分野は日々拡がっている。そのなかで年々支持を強めているのがBrave groupが手がけるVirtual eSports Project「ぶいすぽっ!」である。

【画像】ぶいすぽっ!の「あざとい担当」胡桃のあ 金髪のショートカット、黄緑の瞳、チラっと見える八重歯や両耳のピアスが特徴的

 業界においてさまざまな趣向のプロジェクトが存在するなかで、「ぶいすぽっ!」が特色としているのは、eスポーツに特化した事務所であること。とくにFPSジャンルを得意とするメンバーが多く、なかには各タイトルにおける認定ランクで上位に食い込む者もいるほどだ。

 現在所属するメンバー20人は昼夜問わずゲーム配信をおこない、プロジェクト内外で催される大型大会や企画へ参加するなど、ここ数年ですこしずつ存在感を示してきた。配信を通じて印象的なシーンを生み出してきたことで、コラボ商品や商品広告にも起用されるようになっており、持ちうるタレントをフルに活かして活躍する場面が増えてきている。

 現在の運営体制となってから約4年ほど、シーンをリードする「ホロライブ」「にじさんじ」にも劣らない「ぶいすぽっ!」の魅力が、広く知られつつあるのだ。

 そんななか、2024年4月29日にはぴあアリーナMMにて『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』の開催が決定している。ぶいすぽっ!の所属メンバーから6人が選抜され、ストリーマーチーム、VALORANTキャスターチーム、元プロチームの3チームへと挑む内容となっている。

 当イベントに合わせ、本コラムでは出場するメンバー6人にフォーカスし、彼女らの経歴や活動内容について紹介していこうと思う。今回は『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』に出演するメンバーのなかでも攻めっ気の強い2人、胡桃のあと猫汰つなの2人についてだ。

ぶいすぽっ!の「あざとい担当」胡桃のあ お酒を飲むと変貌する?

 胡桃のあは2020年2月上旬にSNSに初投稿、2020年3月14日に初配信した。花芽すみれなずな姉妹にくわえ、小雀とと、一ノ瀬うるはにつづく5人目のメンバーであり、先んじてデビューしていた4人が組む「Lupinus Virtual Games」のライバル「Iris Black Games」の一員としてデビューした。

 ライバルと記したが、実際のところ彼女は先輩4人を強くリスペクトしていたようだ。デビュー前にメンバーやスタッフに配信設定を教えてもらっていた際、YouTubeのおすすめ欄に一ノ瀬うるはの動画が多数並んでいるのを見られ、のちに本人にもバレてしまったというエピソードがある。

 じつは以前からデビューオファーをもらっていたそうだが、オファーを一旦断り、その後再び誘われたことをキッカケにしてデビュー・現在に至ったのだ。

 金髪のショートカット、黄緑の瞳、チラっと見える八重歯や両耳のピアス、たまに見せるかわいらしいふるまいで、これまでに多くのファンを生み出してきたぶいすぽっ!の自称「あざとい担当」である胡桃のあ。しかし、そんな自称とは裏腹に関西弁混じりの言葉遣いと時折見せる口汚さが混ざり合い、激しいツッコミを入れる姿がよく見られる。

 くわえて胡桃のあといえば、活動初期からたまにおこなわれる飲酒配信が印象的だ。お酒を飲むと気が緩むのか、フニャフニャとろれつが怪しくなったり、気が大きくなることがあったりと、普段の配信で見せる振る舞いからは離れた一面を見せてきた。

 そんな彼女について、プライベートの時間に一緒にお酒を飲んだことがあるという同僚・空澄セナが、その変貌ぶりを伝えている。

「のあ先輩がめっちゃくちゃベロベロに酔っ払った日があって、わたしの膝に乗って、顔をガシッと掴みながら『大好き』って言ってきたんだよ。そのあと担ぎ上げて家まで連れて帰ったの、あたし」

 昨年12月10日に開催された『VCR GTA2』では救護隊として参加した際には、他ゲームのイベントと被ってしまいあまり参加できず、加えて初対面の人ばかりでコミュニケーションに困ってしまい、「うまく話せるように」と飲酒配信を敢行。

 結果、本人の想定以上にベロベロに酔っ払ってしまい、普段は言わないような感情がこもった言葉やきわどい発言をしながら周囲の人に絡んでいくことになった。

 胡桃のあのファンであれば、酒を飲んだ彼女がどうなるかはご存じだろう。しかし、シラフの彼女しか知らない、あるいは初対面のストリーマーたちは「本当にあの“胡桃のあ”なのか?」と衝撃を受けていた。驚いていたのはストリーマーたちの視聴者も同様で、SNSのトレンドに入るほどのインパクトを誇った。

 じつはその翌日にも飲酒しながらゲームをプレイしており、救護隊の他メンバーたちも彼女に合わせて「今日は忘年会だよ!」などと言いながら、お酒やお菓子を飲み食いしながらプレイすることができた。

 こうして二度目の際にはほどよく酔いを楽しみながらプレイしていた彼女、イベント終了後の配信では「あの日のことはトラウマなんだよ…」と振り返ることを拒んでいた。だが、のちにおこなわれた2024年3月14日のデビュー4周年を記念した配信で『VCR GTA2』切り抜き動画を視聴し、懺悔・反省する様子を見せている。

■理知的ながら“ぶいすぽっ!の狂犬”としての側面も併せ持つ胡桃のあ

 胡桃のあの人となりに触れる関係で、過去に起こした失態を先に書いてしまったが、もちろんそれだけを紹介したいわけではない。胡桃のあが4年間の活動のなかで見せ続けてきたのは、アグレッシブなプレイングで勝利をもぎ取っていく生粋のFPSプレイヤーとしての姿であり、ぶいすぽっ!のメンバーやシーンの同業者、そしてファンにも広く知られている。

 タイトル別のランクを例に見ていくと、『Apex Legends』ではマスタープレデターランクを数年にわたって継続して維持しており、『VALORANT』ではイモータルランクまであと少しのアセンダント3まで実力を伸ばしてきた。

 多くのVTuber/ストリーマーらが参加する大型コミュニティ大会『Crazy Racoon Cup(CRカップ)』『VTuber最協決定戦』のどちらにも出場しており、両大会とも『Apex Legends』での優勝を果たしている。くわえて『CRカップ VALORANT』でも優勝しており、今後『VTuber最協決定戦 Ver.VALORANT』において彼女が優勝した場合、『CRカップ』『VTuber最協決定戦』両大会の『Apex Legends』『VALORANT』両部門を優勝した唯一のタレントになる。

 この他にもざまざまな大会企画に参加・好成績を収め続けた結果、ぶいすぽっ!内外にも彼女の高い実力が知れ渡っている。経験・実力を買われて多くのゲームでIGL(イン・ゲーム・リーダー)を担うことが多く、ゲーム中の作戦立てや指示出しといった勝利へのプランニングをひねり出す。それでいて、持ち前のエイムの良さで敵をバッタバッタと撃ち倒していくことも多い。

 時として攻めっ気に満ちたプレイングで我を忘れることがあり、チームを組んだメンバーに声をかけられなければずっと敵陣に突撃してしまうこともあるほど。そんなプレイングからついたあだ名が、「ぶいすぽっ!の狂犬」だ。

 それでいて、自身よりも上手なプレイヤーと相対する際には、サポート役や求められたロールをしっかりとこなせる高い理解力・実行力をも持ち合わせており、前線役・サポート役どちらもこなせるセンスの良さが多くの勝利を勝ち取ってきた要因ともいえるだろう。

 FPSプレイヤーとしての成長も強く意識しており、カジュアル大会中にも個人コーチを招くなど自己研鑽に余念がない彼女は、ぶいすぽっ!のなかでも指折りの負けず嫌いだ。

 『Apex Legends』においては2021年12月から同僚の神成きゅぴ、紫宮るなとともに「ぶいすぽっ!フルパでマスターを目指す!」企画を、『VALORANT』では2024年1月からは猫汰つな、白波らむねとともに「ぶいすぽ芋チャレ」企画を、それぞれ進めたことがある。

 また、『VTuber最協決定戦』での優勝をきっかけにしてプレデターランクへ挑戦し、さまざまな友達やプレイヤーとともにプレイをして見事に達成した。そして『VALORANT』でも、始めた当初は下から数えた方が早いシルバーランクにいた彼女は、前述したようにイモータルに手が届きそうなところまで成長している。飽くなき高い向上心が、彼女の強さを生み出したのだ。

「いまぼくの配信をみているリスナーさんの中に、VTuberに偏見を持っていましたってひともいるし、のあちゃんのおかげでVTuberに興味を持ったり、好きになったっていう人もいる。今している活動は、きっと価値のあるものだって思う」

「ぼくは『女がゲームをするな!』と直接言われる時代にゲームを始めて、そういう環境がすっごく嫌だった。VTuberとして活動していないときに、ただゲームを楽しんでいると性別が女というだけで叩かれることがあった」

ぶいすぽっ!に入って、僕はそういうイメージを変えたいと思っていた。そうやって言われることが減っただけで、ぶいすぽっ!に入ってよかったと思うし、これからもぶいすぽっ!で頑張りたいと思っている。これからもそういうマイナスイメージを僕らが変えていけるように、活動を頑張っていきたい」

 全ての人がそうではないが、オンラインゲームでは悪意をもって他人を罵倒したり、卑屈ないじわるを繰り返すプレイヤーが後を絶たない。胡桃が語るように「女性というだけで罵声を浴びせられる」という悲しい状況はたしかに存在する。

 そんななか、彼女は自身の活動・振る舞いを通して、女性ゲームプレイヤーへの偏見・差別に対するアクションをかけ続けているといってもいいだろう。

 彼女の高い熱量・想いは、さまざまなゲーム系大会でのアンバサダーやeスポーツをテーマにした映画への出演などを通して少しづつ世の中に反映されているととらえることができるだろう。強い意志・高い志を心にして自身の道を選んだ胡桃のあ、その足跡は固く残っていくだろう。

■明るくユーモラスなムードメーカー・猫汰つな

 続いて紹介するのは、ポジティブな性格と高いモチベーションで配信をつづけ、ぶいすぽっ!メンバーを大きくフォローするメンバー猫汰(ねこた)つなだ。

 2022年6月21日にSNSにて初投稿し、24日に初配信。このときの配信は同時視聴者数5万人を超え、大きな注目を集めていた。

 赤い長髪に橙色の瞳、猫耳フードつき黒パーカーや戦闘系メイド服など、特徴的なファッションで多くのファンを掴んでいる猫汰だが、そのルックスから生まれるイメージ通り、情熱的かつアクティブな一面を持ち合わせている。

 明るく活気ある性格で誰とでもコミュニケーションを取ろうとする心の広さを持っており、多人数が参加するコラボ配信などでは、周囲を巻き込んで盛り上げるユーモアもしっかり持ち合わせている。

 ストリーマーやVTuberの配信では、状況が有利・好転している状況で甘えたプレイ・油断することを、「歯茎を見せるくらい笑ってプレイしている」という意味で「歯茎」「歯茎プレイ」と称されることが多いが、猫汰つなも配信中にそういった言葉を使うことが多い。

 彼女の場合、得意ゲームである『Apex Legends』『VALORANT』でメンバーと集まって配信しているときにそういった状況になることが多く、自分の口から言い出したり、コラボ相手とのあいだで言い合うことが多い。

 そういった言葉が頻繁によく出てくるということは、猫汰本人が「明るく楽しくゲームをする」というポジティブな感性が配信のなかで表現されていることを意味している。

 あえて調子づくことによって小さなことにクヨクヨしなくなり、普段よりも明るく楽観的にゲームや配信を楽しむことができる。周囲のストリーマーやファンにも「これが猫汰つなのムード」だと認知されており、ムードメーカーとしての振る舞いには一目置くべきだろう。

 また、猫汰はぶいすぽっ!のなかでも比較的お酒が好きなメンバーであり、お酒を片手に雑談をすることも多い。チューハイ、ビールなどを好んで飲むことが多いというが、友人らと飲む際はアルコールがより強い酒を飲むこともあるようだ。

 ある年の忘年会では、かなり酔っ払った結果女性スタッフと手を繋いで一緒に座り楽しんでいたり、空澄セナと会った際には「セナちゃんはめちゃくちゃ頑張ってて偉いよぉ!」と泣きながら本人に訴え、空澄と2人で大泣きしていたという。

 FPS大会・企画のなかで長期間にわたって練習をこなした後に本番を迎え、結果が振るわなければ悲しみの涙を流し、逆に高順位の結果を残せば嬉しさの涙を流すこともある。こうした振る舞い、そして明るくゲームをプレイする普段の姿からも分かる通り、猫汰には自然と湧き上がるエモーショナルさを外へと表現する感情家な一面があるのだ。

 では、ゲーム中のプレイスタイルについてはどうだろう。猫汰つなは、先述した胡桃のあとに匹敵するほどのアグレッシブなプレイングが持ち味であり、さまざまな大会でその勇敢かつ大胆なプレイングを披露し、多くのファンを惹きつけてきた。

 特に彼女が『Apex Legends』でみせてきたプレイングは非常に攻撃的。最高はマスターランクなのだが、多くのVTuber~ストリーマーらが「あそこでああいう動きができるのはヤバイ/おかしい」「自分にはできないプレイ」と言わしめるプレーを連発してきた。

 敵プレイヤーと相対したときにはフロントを張り続けてダメージを稼ぎ、あげく相手をキルしてしまうことすらあるため、ここぞの場面で窮地を救い、勝負を決めるなどして名シーンをいくつも生み出してきた。

 「ぶいすぽっ!のクラッチクイーン」というほまれ高い二つ名をあえて捧げるならば、今回フォーカスを当てている猫汰つなか胡桃のあのどちらかになるだろう。

 2人とも「前線を張ってダメージを稼ぎ、キルを取る」「IGLとしてチームを動かし、勝利へ導く」という2点を長所にしており、前者は猫汰に、後者は胡桃にそれぞれ分があるように見える。

 もう一方の人気ゲーム『VALORANT』では、デビュー後徐々に実力を高めていき、韓国からの訪日直前であった2024年1月に胡桃・白波とともに「ぶいすぽ芋チャレ」企画に参加。結果、自身最高のアセンダント3に到達。さらに日本在住となった3月後半以降もモチベーション高くプレイを続け、4月7日には自身初のイモータル1へと到達した。

 しかもこのときは前日の6日夜23時半から配信をスタートし、フルパでワイワイと楽しみながらプレイし、その後ソロで数戦プレイしているうちに達成という、「まさかここで達成するとは思っていなかった」と本人もビックリする流れであった。

 約14時間以上に渡った2つの配信では、緊張感やシリアスなムードではなく、和気あいあいと友人と楽しみながらプレイする猫汰の姿が収められている。彼女も「まさか」といった表情をみせていたが、こうしてみると楽しくプレイすることが好調につながる、なんとも彼女らしい達成の仕方ではないかと思う。

■日本語を使いこなす猫汰 いよいよ日本移住で活動がさらに活発に?

 そんな猫汰つなだが、じつは生まれつきの韓国育ちであり、韓国語・日本語を使い分け、他の言語も多少しゃべることができるマルチリンガルでもある。

 とあるカジュアル大会に出場した際に、チームメイトとなったプロゲーマー・1TAPPYとReyzyGGから「つなさんも韓国に住んでいるんですか? 生まれつきですか?」と質問を受けた際に、猫田本人がハッキリと答えている。

 思わぬ告白に2人とも「えっ!? 日本語うっま!」「全然わからなかった…!」と驚きを隠せなかった様子。

「いまじゃ日本語に慣れすぎてて韓国語のほうがヘタクソ」

おじいちゃんおばあちゃん韓国人じゃなくて、クオーター系です」

 このように次々と話す猫汰つな。漢字を不自由なく読めるだけではなく、日本のポップカルチャーにも詳しい。彼女の配信を覗いてみると、数年で覚えたとは到底思えないレベルで日本語を使いこなしている。

 最近行われている『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』の練習中、先輩・八雲べにから「どうやって日本語を覚えたか?」「どれくらい勉強したか?」と問われ、こう答えている。

「みんなと遊びながらじゃないかな。意識が高かったときはYahoo!ニュースを毎日読んでた。配信者の人と遊んでもゲーム以外の話題にならないけど、Yahoo!ニュースだと日常の話題が多いから、知らない言葉がいっぱいあった。4年ぐらいは勉強したかな……?」

 ぶいすぽっ!の同僚・友人のストリーマーの多くは日本語話者が大半であり、彼女の配信でも主に日本語が使われている。普段から数時間以上にわたって日本語で会話をし、日本語のコメントを拾って配信をするのだから、「韓国語で話すよりも日本語で話すほうが楽」となってしまうのも頷ける。ちなみに、ぶいすぽっ!内で催された学力テストでは、国語の点数が他メンバーよりも上回ったこともある。

 彼女が韓国から日本への移住を報告したのは2024年3月9日のこと。ビザの取得や引っ越しにはぶいすぽっ!運営が大きく尽力し、念願かなっての日本移住となった。

 3月19日には同僚の英リサ・橘ひなの両名が新居を訪問し、3月24日以降は日本の新居からの配信活動を本格スタートした。

「初めての一人暮らしを海外でするってなって、母親が反対してた。でも言語の壁ってもうほとんどないし、一人暮らしをして親がどんだけ偉大な存在かをわかってもらえると思うって親が言ってて、許してもらえた」

「活動する(国内外で)内容はそこまで変わらないのになんで日本に来るかっていうと、今まで(日本での)仕事で何度か数日お休みをもらってたことがあると思うけど、忙しい時は月1回か2回くらいのペースで配信を休んでて、それがまず嫌だった。あとは3Dも手に入れてスタジオもあって、(日本に来れば)活動の幅が全然広がっていきそうだなと思って引っ越すことを決めた」

 このように語っているとおり、彼女には明るい未来が待っている。さらに配信の頻度も増えていくであろう猫汰つな、今後の活躍に注目だ。

(文=草野虹)

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