僕は昔、「ファントーシュ」というアニメ雑誌にコラムを寄稿したことがあります。ペンネームを使って、サンリオ・アニメーションのルーツ、パイロット版の「ユニコ」について書きました。

「ファントーシュ」は廣瀬和好さんという方が編集していた季刊のアニメ専門誌です。僕がサンリオで仕事をしていたとき( https://anime.eiga.com/news/column/aketagawa_oto/106696/)、廣瀬さんはよく遊びにきてくれて、「アケさんの視点でサンリオのアニメについての文章を書きませんか」と声をかけてもらって書いたのが掲載された2本のコラムだったと思います。誌面に載ったのは、僕が雑多に書いたものに編集部のほうで図などを足してくれたもので、今見ると懐かしいですね。

そのときに僕が使ったペンネームは「新開進(しんかい・すすむ)」というものでした。大学時代の先輩に新開さんという人が実際にいて、外国に行きたいと話していた僕に、外国に行ったときの話を一生懸命いろいろ聞かせてくれて、素敵な人だなと思っていたんです。そこから苗字を借りて、「新しい道を切り開いて進む」って良いなと思い、格好つけてつくっちゃったんです(笑)

「ファントーシュ」は作り手と編集部の距離がとても近い誌面づくりで、アニメ制作会社の広告が掲載されているような雑誌でした。そうした編集方針がいいなと思い、僕もできるだけ応援したいと思ったんです。廣瀬さんはたしか高橋良輔監督が立ちあげた事務所「あかばんてん」に出入りしていて、そのなかで雑誌に協力していた人も多かったのではないかと思います。

新開進というペンネ―ムを初めて使ったのは、「刑事(デカ)」という貸本漫画雑誌のときでした。いろいろな漫画家の短編を掲載して何巻もでている雑誌です。ご存じの方も多いと思いますが、貸本漫画の雑誌には、出崎統監督、りんたろう監督、杉井ギサブロー監督など、アニメ業界に入る前に漫画家を目指していた人たちが多く投稿していました。

僕は、虫プロ時代の同僚で仲がよかった森ちゃん(※森柾氏/漫画家としての名前は真崎守)との付き合いのなかで、「フーテン」などで知られる漫画家の永島慎二さんと知りあいました。そのときに永島さんから、さいとう・たかをさんが劇画というジャンルを確立させようと頑張っているという話を聞いた記憶があります。そうした劇画のはしりの頃にでていた雑誌が「刑事」でした。「刑事」で永島さんの特集が組まれたときに親交のあった僕に「書いてみない?」と誘われ、ダンさん(永島慎二氏の愛称)は素敵な作家ですよという意味あいの記事を書きました。くわしい内容は覚えていませんが、あとで読んだらめちゃめちゃな文章になっているなと恥ずかしく思った記憶があって、こちらは今でもお話したくないぐらいですが……(笑)。

OVA「銀河英雄伝説」のときには、本名でいろいろ書かせてもらいました。内容は主に音楽に関してで、このコラムでもお話したことですが、クラシックの大作曲家たちがつくった素晴らしい楽曲の数々が、宇宙を舞台にした「銀英伝」の世界をいろどってくれたというようなことなどを書いたはずです。