新入社員もそろそろ会社に慣れてきたころかもしれない。研修期間も終え、いよいよ社会人としての第一歩を踏み出す。

 そんななかで、すぐに辞めてしまう新入社員がいる。今回は、思わず“そんな理由で辞めるの?”と耳を疑うような2人のエピソードを紹介する。

入社式で一際目立つ“キラキラ女子”な新入社員

 入社式で一際目立つ存在だった新入社員のT。販売スタッフは店頭に立つ必要があることから、彼女は「いかにもうちの会社が好みそうな容姿と振る舞いだった」そうだ。

 採用面接も担当している佐藤陽子さん(仮名・50代)は、俗にいう“キラキラ女子”を要注意人物としてチェックしていたという。

「Tは、まさしくキラキラ女子そのものでした。入社式の後にグループワークが実施されるのですが、私はオブザーバーとして30名弱の新卒社員を俯瞰して見ていたんです」

 そんななか、Tが突然泣き出すという衝撃的な出来事があった。

「私、いろいろと不安で不安で。皆さんが素晴らしすぎて、こんな私ができるかなって……」

 Tの姿を見て「みんな一緒だよ」「大丈夫、できてるよ」とほかの新入社員が励ましはじめたのだが、佐藤さんは「Tが承認欲求を満たしている状況に見えて、“嫌な予感”が一気に膨れ上がった」と話す。

 3日間の研修後は店舗配属の初日なのだが、佐藤さんの“嫌な予感”が的中する。

◆「本社でデスクワークがしたいんです!」と主張

「配属先の店長から『Tさんは、お腹が痛いとずっと休憩していたので早退してもらいました』と報告がありました」

 初日の緊張からくるものだろうと佐藤さんは思ったのだが、翌日も同様のことが起こったという。

「3日目には、Tの母親から『体調不良で休みます』と電話があり、この時点で“仕事したくない病”だと直感しましたよ」

 そして、再びTが店頭で泣き出すという事件が……。

「同期の子はいろいろ仕事をしているのに、私はまだ何もできていないのがツラい」という理由だった。困り果てた店長が、現状ではTに仕事を任せられないと、佐藤さんにTと面談してほしいと懇願してきたそうだ。

「面談でも『私は、本社でデスクワークがしたいんです』と泣き出したんです。ただ、店舗勤務の経験無くして本社勤務はできないので、『まずは一歩ずつ進んでいくことが大事』と言っても『そうですよね〜』としか答えません。何かアドバイスをしても『でも〜、私は〜』とダラダラ返す。2時間ぐらい続けたのですが、時間のムダでしかありませんでした」

◆おしゃべりなのに「いらっしゃいませ」が言えない

 佐藤さんは、Tは“東京都内の一等地にあるオフィスで働くキラキラしたイメージのみを切り取って入社した”に違いないと確信した。

「翌日、Tから明るい声で電話がありました。『やっぱり、私はオフィスワークがしたいので辞めます! 接客したくないです。会社は名前で決めただけだし、“そこに入社した”ってイメージがよかっただけだし』と言って退職しました」

 退職時は、笑顔で意気揚々としていたT。接客時には「いらっしゃいませ」も言えないほど消極的だったので呆れてしまったと話す。「キラキラ女子は嫌な仕事には興味がないのだろう」と佐藤さんは嘆いた。

◆「ランチにいけないなら辞めてやる」とキレた新入社員

 勤めている福祉施設に入社してきた女性職員Iについて教えてくれた近藤悟さん(仮名・30代)。

「特に変わった様子はなく普通の人だったのですが、教育係だった私に初めてした質問が、『皆さんお昼ご飯はどうされているのですか?」という内容でした」

 近藤さんは、「最初にそれ聞く?」と思ったそうだが、「お弁当を買ってくるか、出社前にコンビニで買ってくるか」と説明したという。

 するとIは、驚いた顔で「外食しないんですか? 私は、お昼ご飯は外でランチ派ですね」と返されたそうだ。そのときはそれで終わったのだが、翌日にあんなことになろうとは……。

 休憩時間は45分間。近隣に飲食店はなく、いちばん近いラーメン屋でも車で10分はかかるそうだ。そのうえ、職員駐車場は施設に隣接しておらず、往復5分はかかる位置にある。

「外食するとなると、食べる時間は10分ほどなので現実的ではないんですよね」

 翌日の休憩時間、近藤さんはIがいないことに気づく。

◆休憩時間が終わっても戻ってこない

「まさか、外にランチに行ってないよなって思いつつ休憩に入りました。45分が経過し休憩時間が終わった頃、Iが戻っていないと報告を受けました。施設内を確認しましたが、どこにもいなかったんです」

 スマホに連絡をするも繋がらなかったため、Iへの連絡は上司に任せることに。そして、Iが戻っていたのは、それから30分も過ぎたころだったそうだ。

「戻ってくるなり、『さすがに食べすぎちゃいました』と笑いながら報告してくるんです。ア然としましたよ」

 Iは上司に呼ばれ、会議室に消えていったという。そして20分後、戻ってきたIは逆ギレ状態だったようだ。

「外にランチへ行くのがなぜいけないのですか!」

◆外でランチしたいから「施設車を貸してください!」

 外にランチに行くことは悪いことではない。しかし、時間を守れないのは悪いと説明するも、「駐車場まで遠すぎるから走らないと間に合わない」と返されたとのこと。さらに翌日、近藤さんは耳を疑うような相談を受けた。

「私に施設車両のカギを休憩時に貸してください」

 嫌な予感がしつつ理由を聞いたが、案の定“外にランチに行くため”だった。

「もちろん、そんな要求をのむわけにはいかないので断りました。すると、『ランチもいけない職場なんて辞めてやる!』『刑務所かここは!』と怒鳴り、自分の荷物を持って帰ってしまったんです」

 その後、上司からIが退職したことを報告された。近藤さんは、「施設車両であれば施設内にあるため、そのぶん移動時間を減らせるという考え自体が異常だ」と憤りを隠せない様子だった。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

―[すぐに辞めた新入社員]―


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