4月、新入社員が今年もやってきました。そこで「すぐ辞めた新入社員」の記事の中から、反響の大きかったトップ10を発表。第4位の記事はこちら!(初公開2022年4月1日 集計期間は2018年4月~2023年12月まで 記事は取材時の状況)
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 多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、なかにはすぐに辞めてしまう新入社員もいるのだ。その理由は、いったい何なのか——。

 会社の人事部は、優秀な人材を確保するために必死になって、履歴書を確認したり面接をしたりして採用を決めている。労務部もまた、社員などが働きやすいような職場環境に配慮し、健康に関しての管理も担う。会社にとっては、非常に重要なポジションといえるだろう。

 しかし、その努力を知ってか知らずか、入社して早々に辞められてしまってはかなわない。今回は、新入社員の“真面目さ”が仇となってしまった2つのエピソードを紹介する。

◆面接では好印象だった新入社員A、熱意に惹かれて採用も……

 新入社員Aは、公共職業訓練校からの紹介で入社した。面接官を担当した篠原剛さん(仮名・40代)は、当時のAのおかしな様子について話してくれた。

「前職はとある中小企業の経理業務。数年働いた後に退職し、新たなスキルを身につけるために建設業である当社に面接に来たそうです」

 履歴書は丁寧に記載されている。面接では、篠原さんたちの目をしっかり見て淀みなく受け応えていた。

「妻や子どものために一生懸命働きたいことを真剣に話す熱意、社内見学をしたいと依頼があり、案内した際にも熱心に質問していた姿勢に好感をもちました」

履歴書にウソ!? 本人からの報告に唖然

 面接を担当した篠原さんを含む3人全員が採用を決定し、Aに通知した。

 しかし、公共職業訓練校から思いもよらない事実を聞くことになる……。

「入社数日前、『御社へ入社予定のAの履歴書に虚偽の記載があったため、本人からの説明を聞いていただきたい』という連絡がありました。来社したAからは、公共職業訓練校への入校前にある会社に入社し、数ヵ月で退職した事実を隠していたことを告げられました」

 確かに履歴書の経歴詐称は重大な違反行為ではあるが、会社の人員不足を早期に解消したい意向やAが自ら報告し謝罪したこと、人材としては魅力的に感じていたことを理由に、改めて採用を決定したという。ところが……。

「いざ入社すると様子がおかしいんです。面接時とはうって変わって終始うつむき加減で元気がなく、活力も感じられません」

 入社したばかりで緊張しているのでは?と様子をうかがっていた篠原さん。しかし、入社翌日、A本人から突然の報告を受ける。

◆入社翌日に「お話があります」最短“退職”記録を更新

「Aから『お話があります』と切り出されました。履歴書に虚偽の記載をしたことへの罪悪感が拭えないと言います。ですが、その事実を踏まえたうえで採用し、それをAも了承した結果入社に至った旨を説明したのですが……」

 篠原さんが説得を試みるも、「それでも罪の意識が頭から離れない」と訴えたそうだ。ひとまず帰宅させ、「考えを整理してみたらどうか」と提案した。そして翌日。

「彼は『妻と話し合った結果』と前置きし、退職の意向を伝えてきました。あまりに早すぎるタイミングでしたが、結果的に承諾し、後日退職となりました」

 篠原さんの会社では、これまで最短1年での退職者はいたそうだが、4営業日という最短記録を更新したと残念そうに振り返った。

◆泣きながら「辞めたい」研修が長すぎて退職した新入社員B

 森達也さん(仮名・40代)は、異動で会社の労務担当になってから、初めて接した新入社員のBについて教えてくれた。最初の印象は、清潔感があり好青年だなと思ったそうだ。

「挨拶もハキハキとしていて、研修でのグループワークではリーダーシップをとって、コミュニケーション能力が高いという印象でした」

 森さんの勤める会社では、新入社員に対して約半年間の研修を行い、そこで礼儀作法や会社の特徴、一般常識を教えるという。そして、そこからまた半年間、各部署をまわり部署ごとの仕事内容を叩き込む仕組みだ。

◆焦る気持ち“早く業績を上げたい”

「入社して1年経って、各々希望する部署をいくつか提出してもらい、そこに配属するということになっています。Bは、大学時代にじゅうぶん学んできたことを、また1からやることが納得いかなかったらしく、早く現場に出て業績を上げたいと言っていました」

 下積みが長いことにBは悩んでいたようなのだが、そんなときに、Bのもう一つの顔が明らかになる……。

◆副業はインフルエンサー

 現在は副業を認める会社も増えてきたが、森さんの勤める会社は良くも悪くも大企業のため、ほんの少しの情報でも漏洩させないように副業が禁止されている。そのぶん、給料は高く残業もない、有給休暇もしっかり取ることができる。だが、Bにはそれよりも優先したい夢があった。

「どうやら、SNSでは少し知られたインフルエンサーらしく、そこそこのお金を稼いでいるみたいでした。真面目な性格もあり、会社に黙って副業を続けることが後ろめたく、怖かったようです。本業の仕事と夢の一つであるSNSを天秤にかけたとき、BにとってはSNSの方が勝ってしまったんです」

 この話をBは森さんに相談してきたという。泣きながら何度も謝られて「辞めたい」と言われたときは、すごく心が痛んだと話す森さん。

「会社としても一人の意見では、研修方法や社員就業規則を変えてあげることはできなかったんです。Bは‎退職願を出して辞めていきました。

 今は、Bのような将来有望な人材をなくさないためにも、手を打てることは早めに対策できるように検討しています」

◆「コロナ禍の対応が至らなかった」

 また、Bが辞めた理由について「新型コロナウイルス感染拡大」の影響、会社としての対応の至らなさもあったと話す。

「彼は、自宅から約30分電車に乗って通勤していました。毎日満員電車に乗ることが辛く、それに加えて、研修では名刺交換の練習、グループワークで大勢の人と至近距離で会話することが嫌みたいでした」

 会社としても対策としてリモートワークの実施や、社内に透明のパーテーションなどを導入していたが、研修はどうしても会社に集まらないと成り立たないものだったという。

 森さんは、Bの退職がきっかけで研修のあり方について考えさせられた。優秀な人材が流出してしまったことを悔やんだ。辞めていく新入社員がすべて悪いわけではない。会社が学ぶことも多いのである。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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