株式投資でいい成績を上げるためには、何をしたらいいのでしょうか? 人気投資ブログ「エナフンさんの梨の木」の筆者であり、会社員投資家である奥山月仁氏が推奨するのは、「評価の高い企業への投資は避け、見向きもされない企業に投資する」という意外な方法でした。奥山氏の著書『個人投資家入門byエナフン 株で勝つためのルール77』(日経BP)より、詳しく見ていきましょう。

大多数とは逆方向を見て「平均回帰」を利用する

ピーターリンチは次のように言っている。

「私が何より避けたいのは、超人気産業のなかの超人気会社である。(中略)人気産業を次々と追いかけて投資したりすれば、すぐに生活保護のお世話になるだろう」

私もピーターリンチに倣って、人気企業ではなく、不人気企業に多く投資してきた。市場ではなかなか話題にも上らない、冴えない企業を買っておくと、時間が経過し実績を積み上げるにしたがって、次第に市場から正当な評価を受けるようになる。これにより低評価から高評価への変貌による株価上昇が期待できるのである。

大多数が投資する人気企業には目もくれず、大多数が相手にしない母集団にばかり賭ける行為は、当然のことながら、市場平均からはかけ離れた結果を与える。理屈から言うと、極端に失敗するか、極端に成功するか、そのどちらかの可能性が高まる。

ただ、既に見向きもされない不人気企業がさらに不人気になる可能性は低く、しかも、実力があって業績が上向いているような状況では、市場平均以上に勝ちを手に入れられる可能性のほうが高くなる。

反対に長年業績が拡大し、人気が人気を呼び、既にとても高評価を得ている企業への投資は危険だ。人気か業績のいずれか一方、もしくはその両方が突然崩れるリスクが高い。私は、そのような株への投資を避けてきたし、もし保有株がそういう状況になったなら、早めに売却することにしている。

この戦略がうまくいく根拠は、統計学で言うところの「平均への回帰」だ。平均への回帰とは次のような傾向を指す。

ある特徴的な集団、例えば、昨年、絶好調だった野球選手や絶好調だった企業、あるいは反対に、前回のテストの成績が普段と比べて極端に振るわなかった絶不調の学生ばかりを集めて、その後の成績や業績を調べると、絶好調だった野球選手や企業は翌年以降、以前ほどの結果を残せないケースが多いのに対し、前回、結果が振るわなかった学生は次のテストで成績を回復させるケースが多い。

このように正にせよ負にせよ「一時的に極端な結果を残した集団は、その後の成果が平均値に近づいていくという現象」を、平均への回帰あるいは平均回帰という。つまり、不人気側・不運側に平均値から大きく外れた銘柄ばかりを投資対象とすることで、市場平均以上のパフォーマンスが狙えるのだ。

景気に関係なく「ひたすら保有」前提で買う

株式投資を始めると、あなたは嫌でも景気の影響を受けることになる。リーマンショックコロナショックのようなひどい停滞局面もあれば、アベノミクスやトランプノミクスのような非常に強い景気拡大を経験することもあるはずだ。

素人考えなら、景気停滞局面に株を買い、景気回復後にそれを売れば儲かると考えるだろう。しかし、成長株というのは、そういう景気の良し悪しとは別の因子、つまり新たな需要の開拓やその企業の内部課題の解決により利益を拡大させるため、長期的な観点で見れば景気にはそれほど大きな影響を受けない。

そのため、成長株投資においては、景気に関係なくひたすら保有し続けることが前提で構わない。本当に良い株なら、変に景気動向に振り回されずにずっと持ち続けることが結果的に最も高い成果につながるだろう。長期には企業の業績と株価は連動し、企業の成長という大流が株価の大上昇をもたらす主因となる。

しかし、1~2年程度の範囲では別の流れの影響を強く受けるために、急上昇期と停滞期を繰り返す。このため成長株投資は時に強い忍耐力を必要とする。5年や10年のスパンで見ればテンバガー(10倍高)になるような大化け株も、時にはマイナス20~同30%といった株価の急落に見舞われることがある。

そうすると、「この企業は成長する」と確信していたにもかかわらず、多くの個人投資家は耐えられずに売ってしまう。「早く売らないともっと下がる」と不安になるからだ。急落直後からすぐに上昇するならまだ我慢もできようが、その後に1年にも及ぶような停滞期が続くと、ほとんどの個人投資家は降参してしまう。

皮肉にも、彼らの行動こそが株価の急落や停滞の原因でもあるため、人々が降参しきった直後から株価は上昇を始める。ピーターリンチはこのような現象を「捨て去った後の繁栄」と呼んでいる。

成長株といえども、相場の停滞期には連動する。相場の下落に逆らって逆行高を続ける成長株は非常に少ない。また上昇期に急騰した分、株価の下落幅は大きくなりやすい。多くの個人投資家はここで保有株を手放すという判断に至る。その際に「次の上昇期が始まる前に買い戻せばよい。それまで別の銘柄でひと儲けしよう」という思惑が働くこともあるだろう。

しかし相場の低迷期には他の銘柄も下がるので、乗り換えても株価の下落に伴う損失を避けるのは難しい。さらに、次の上昇期が始まる前に買い戻すといっても、それがいつ来るかは誰にも分からない。

結局、買い戻し損ねて、「あの時、あの株を持ち続けておけば大儲けできたのに」と後悔することになる。リンチはこのような行為を「花を引き抜いて雑草に水をやる」と表現し、素晴らしい成長株を見つけたら簡単には手放してはならないと諭している。

奥山 月仁 会社員投資家

(※写真はイメージです/PIXTA)