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BMWを象徴するデザイン要素

「わたしがBMWを好きなのは、細部にも物語やちょっとしたロマンがあるからです」と語るのは、自動車設計エンジニアから作家に転身したスティーブサクスティ氏だ。

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BMWは、一般の人が想像するような典型的な冷たいドイツ企業とは違います」

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どのようなデザインがBMWBMWたらしめているのだろうか。

サクスティ氏は、BMWのPSD(プロポーション、サーフェシング、ディテーリングの略)について話してくれた。

「自動車デザインには、特徴的なディテールを施せば “そのブランドになる” という誤解があります。まず、クルマのプロポーション(P)を考えなければなりません。プロポーションはクルマのタイプだけでなく、国の文化などさまざまな要因によって決まります」

「例えばイタリア車は、ドイツ車の四角い顎のようなスタンスよりも、矢のような形のフロントを持つ傾向があります」

続いてサーフェシング(S)とは、クルマが個々のブランド・キャラクターや独自性を獲得し始めることだという。

BMWはこれに対して実に革新的なアプローチをとってきました。Z4で話題となった “炎” のような表面処理もそうですが、ツェッペリン飛行船に影響を受けたE60型5シリーズの処理も興味深いですね。スキンがフレームに吸い着くようなデザインです」

「残念なことに、このアイデアを担当した若いイタリア人デザイナーはまもなく白血病で亡くなりました。E60は彼のビジョンへのオマージュと言っても過言ではありません」

そしてディテール(D)へ。サクスティ氏は、BMWはデザインの特徴を必要なときに控えめに使い、適応させていると指摘する。

「もしグリルが進化しなかったら、どれも同じ鼻孔を持つことになるでしょう。グリルBMWをスタイリッシュで前衛的なものにしている要素の1つなのです」

ここでは、サクスティ氏が特に魅力的だと評する、BMWのデザイン・ディテールを8つ紹介する。

キドニー・グリル

「最近はBMWの巨大なグリルについて話題になっていますが、1930年代初期のBMWでも同様に巨大な縦型グリルがついていました」

グリルは縦でも横でも構わないのですが、ヘッドライトとの関係がサイズと全体のスタイルを決定するカギとなります」

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ドニーグリルBMWの最も象徴的なデザインだろう。

グリルやライトの内部、周辺のディテールもまた、個性を決める要素です」

「しかし、グリルの部品点数が250点にもなることから、BMWはよりシンプルなデジタル・ライト・グリルに移行しています。夜間の特徴的なシグネチャーになることも移行理由の1つですね」

ズィッケ・ライン

「ドアと窓が接するベルトラインの下にあり、フロントライト上部からリアライトまで続くズィッケ・ライン(Sicke line)は、特に曲面に強度を与える折り目です」

「このラインが初めて登場したのは1950年代半ばのことで、当時のBMWの特徴であった張りのあるボディ表面に精密な印象を加えていました」

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サイドのキャラクターラインは「ズィッケ」と呼ばれる。

1970年代に入り、デザイン責任者のポール・ブラックと彼の後継者であるクラウス・ルーテが、ズィッケ・ラインをBMWデザインの統一的な特徴として定着させたのです」

1980年代から1990年代にかけて、BMWの主力製品にはすべてズィッケ・ラインが採用されました。BMWがいろいろと試し始めたのは2000年代に入ってからで、ズィッケ・ラインのないクルマも増えています」

ホフマイスター・キンク

「一部モデルのリアピラーの上向きに曲がった形状は、おそらくBMWで最も有名なディテールでしょう。当時のBMWのデザイン・マネージャーにちなんで名付けられたものです」

「ホフマイスター・キンクは1960年代初頭に3200 CSクーペとノイエ・クラッセの4ドア・セダンでデビューしました。しかし、BMWは強くこだわってはいません。例えば、現行の4シリーズ・クーペにはホフマイスター・キンクは採用されていません」

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ホフマイスター・キンクはダイナミックな印象を与えるアイコンである。

BMWチーフデザイナーであるエイドリアン・ファン・ホーイドンクはかつてわたしにこう言いました。『BMWは喜んで過去を再燃させるが、炎を崇拝することはない』とね」

BMWのラウンデル

BMWの人々にとって、バッジとその装着についての会話は何時間にも及ぶかもしれません」

「ラウンデルは常にボンネットの中央に付けられていますが、初代CSL、昨年の限定モデルである3.0 CSL、そして生産終了したばかりのX2の3車種ではリアピラーにも付けられています」

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デザイナーは、ラウンデルがなくても「BMW」だとわかるよう求められているという。

「デザイナーは、バッジがなくてもBMWとわかるようにするべきだと言われているんです」

「あるデザイナーは昨年、自分のコンセプトカーにラウンデルを付ける寸前まで行きましたが、かなり後の段階で『ダメだ!』と言われました」

L字型リアライト

「この古典的なデバイスは、1980年代半ばに登場しました。当時新米エンジニアだったヴォルフガング・ライツレが開発中のE32型7シリーズを見て、そのナローボディに愕然とし、幅を広げるべきだと主張したことから生まれました」

「そこでデザイナーは、4灯式ヘッドライトでワイド感を強調し、リアには一体型のトランク・スポイラーと、端が上向きになったL字型のライトを追加しました」

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L字型リアライトはボディのワイド感を強調するものだ。

BMWリアライトのスタイルは進化を続けています。昨年のビジョン・ノイエ・クラッセ(コンセプトカー)では、E32型7シリーズの斬新な一体型トランク・スポイラーを表現する方法として、リア・スポイラーを形成しています」

レガシー・カラー

BMWが時折使用する鮮やかなオレンジは、ガルウィングを持つ1972年のショーカー、E25ターボで初めて登場しました。1970年代BMWチーフデザイナー、ポール・ブラックのアイデアでした」

「当時BMWの販売担当副社長だったボブ・ルッツは、BMWのスタイルを世間に認知させるショーカーを求めていました。彼は、鮮やかなセーフティ・カラーを持つセーフティ・カーというスタイルを提案したのです」

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BMWに時折見られるオレンジカラーは「セーフティ・カラー」だという。

「ブラックはルビーレッドのポルシェ356を所有しており、BMWのボディをその色に、フロントとリアを鮮やかなボルカニック・オレンジに塗装していました。これは、彼のオフィスの近くにあるフランス空軍基地の練習機の翼端が蛍光オレンジだったことにインスパイアされた “セーフティ” カラーだそうです」

iDriveコントローラー

「iDriveコントローラーは導入当初、多くの人に批判されましたが、すぐに高く評価されるようになりました。そのルーツはBMWが人間工学へのこだわりを強めていた1970年代に遡ることができます」

「ドライバーの集中力が鍵であり、この時期に登場した特徴の1つが、目に優しく非常にクリアなオレンジ色の計器類でした」

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iDriveコントローラーは現在、第8世代まで進化した。

「昨年のビジョン・ノイエ・クラッセ・コンセプトは、iDriveの抜本的な改革を特徴としています。BMWの『手はハンドルに、目は道路に』という哲学に沿って、ステアリングホイール付属のコントローラーで操作するフルワイドのヘッドアップ・ディスプレイをフロントガラス底部に組み込むことで、大きな飛躍を遂げました」

ダブル・テーマ

BMWのMモデルには、2本アームのドアミラーやダブルスポークのホイールがよく採用されています。このアイデアは、BMW Mデザイン・スタジオの元責任者でデザイナーのマーカス・シリングが発祥です」

「Mデザインの特徴を考案しようとしていた彼は、Mモデルがダブルのエグゾーストパイプによって差別化されていることに気づきました。これをきっかけに、他の車種でも “ダブル” テーマを採用することになったんです」

サクスティ氏の書籍案内

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多くのMモデルには「ダブル」のデザインテーマが採り入れられている。

スティーブサクスティ氏の新著『BMW by Design』と『BMW Behind the Scenes』は、過去、現在、未来のBMWがどのように作られたかを検証するものだ。本書に掲載されている未公開画像の多くは、BMWデザインのアーカイブの奥深くで2年間かけて収集された、サクスティ氏のリサーチによるものである。詳しくは stevesaxty.com/bmw をご覧ください(英文)。


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