新しい発想で世界を牽引する欧米の企業に比べ、日本はイノベーションが生まれないといわれている。イノベーションを起こすには、成功例や業界の常識だけでなく、身の回りのすべての当たり前を疑う必要がある。

だとすると、欧米でイノベーションが起こりやすいのであれば、それは既成の常識を皆が疑っているからなのか?

その通り。欧米では小学校から大学に至るまで、「疑う方法」を学んでいるのである。批判的に思考すること、疑うことを積極的に教育に取り込んでいるのだ。その欧米の教育の根底にあるのが哲学である。哲学の最も重要な要素は「当たり前を疑うこと」だ。

■欧米のイノベーションを支える「疑う」教育

『「当たり前」を疑う100の方法 イノベーションが生まれる哲学思考』(小川仁志著、幻冬舎刊)では、哲学者、山口大学国際総合科学部教授の小川仁志氏が、「知っていることを知らないと思ってみる」(ソクラテス)、「答えを出さない方がいいと考えてみる」(キーツ)など、古今東西の哲学から当たり前を疑い、ものの見方が変わる100のノウハウを紹介する。

古代ギリシアの哲学者プラトンは、すべては「イデア」の影に過ぎないと言い、この世にあるすべてのものを偽物だと疑った人物だ。イデアとは、物の姿や形を意味する言葉。形といっても目に見える形ではなく、心の目によって洞察される物事の真実の姿、物事の原型のことを指す。視覚や聴覚など感覚によってとらえられるものはやがて消えていくが、イデアは永遠に不滅の存在。プラトンは、イデアによって構成される永遠不滅の世界と、感覚によってとらえているだけの現実の世界を区分した。

このイデア説によって、プラトンの世界観は理想主義的だといわれている。人は目の前の現実にとらわれがちだが、物事の本質を知りたければ、理想を追い求めないといけない。そのためには、今見ているすべては偽物かもしれないと疑うことが第一歩となる。

この世のすべては偽物かもしれないと疑ってみることで、どこか別の場所に本物があるということになる。しかも、この世ではなく、理想の世界にあると。それによって、あらゆる物事を発展させる視点が得られるのだ。

新しい発想や新しい視点を見つけるためにも、今までの常識を疑ってみる。そのためにも本書から哲学的思考を身に付けてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

イノベーションの土台 日本にはない欧米の教育とは(*画像はイメージです)