日本版ライドシェアが今春、4月8日から東京を皮切りに運行を開始した。最初に断っておくと、ここでいうライドシェアは都市部のタクシー不足を補うためのものであり、一般ドライバーが普通免許(普通自動車第一種免許)のまま自家用車を使い、タクシーが不足している地域で曜日や時間帯を限り、有償で人を運ぶことができる仕組みを指している。

 安全管理や万が一の事故の補償は既存のタクシー会社が管理運営すること。街中で挙手した不特定多数を乗せるのではなく、配車アプリオンリー。料金は既存のタクシーと同じ。支払いはキャッシュレスになり、ドライバーの報酬は原則時給制になっている。

 まだ始まったばかりのため、今後さらに内容の変更があると思われるが、興味がある人にとっての一番の関心事は「それでいくら稼げるの?」だろう。そこで、現役タクシードライバーである筆者が、ライドシェアドライバーの募集をしている業界最大手の日本交通に募集要項の確認と共に、細かな条件について聞いてみた。

◆ライドシェアに使える車両は限られている

 まず最低限必要な資格として「普通自動車一種免許取得後1年以上経過している方」と明記されている。意外とハードルは低そうだ。

 使用可能な自家用車は「定員5~10名、4ドア、衝突軽減自動ブレーキ搭載車、ETC車載」との条件が付き、営業に必要なドライブレコーダや配車アプリなどは無償で貸与。また、会社指定の任意保険(日本交通が負担)にも加入することが求められている。

 もちろん、これだけで即営業できるはずもなく、担当者による10~15時間の研修を受ける必要があるそうだ。

◆営業エリアはあらかじめ決まっている

 ライドシェアはタクシーが不足している地域・曜日・時間帯の範囲内での営業となるため東京23区では「港区、目黒区新宿区渋谷区世田谷区」の5区が指定されている。曜日や時間帯は①平日7:00~11:00、②金曜16:00~20:00、③金曜24:00~28:00、④土日10:00~14:00に区切られ、この中から選ぶことになる(※最大週20時間未満)。

 配車は専用アプリから行われる。迎車ポイントは区域内になるが、目的地は区域外に出ることもあるそうだ。ただし、区域外は迎車地に設定しておらず、遠方に出ると戻ってくる必要性があるとのこと。

◆報酬は時給と歩合+手当

 気になる報酬は、時給1400円+手当+歩合で構成されている。細かく説明すると、手当とは燃料費やアプリ通信費にあたるもので、1時間あたり400円。つまり、経費込みで時給1800円という考え方をすればよい。

 残る歩合というのは、1時間あたりの売上(税別)が3000円を超えた場合に発生するもので、(月間税別売上-(3000円×勤務時間))×60%になる。

 これらを総合すると、最大限(週20時間未満)働いたとして、基本的な報酬は月(4週間)で最大約14万4000円。仮に平均売上が3500円だとすると、歩合が約2万4000円プラスされ約16万8000円という計算になる。

 とはいえ、売上が3000円を超すことはなかなか難しく、時間帯の制約が大きいため週に10時間程度の働き方が妥当な線かもしれない。すると、報酬は月に約9万円というのが現実的かもしれない

◆もっと稼ぎたいなら定時制

 タクシー業界の働き方の主流は隔日勤務というものだ。読んで字のごとく、1日働いたら翌日は休みというスタイルで、月に11~13回の乗務が基本。回数的には少なく思えるが、1回の勤務はおよそ20時間(休憩3時間含む)。他に月に22~24回ほどの乗務を行う昼日勤と夜日勤があり、いずれも本業(正社員)として働くことになる。

 一方、定時制という職種を募集している会社があり、こちらはパート的な雇用で、隔日勤務なら月に8回、日勤なら16回という範囲内で働くことができる。定年退職したベテランドライバーを採用することが多かったが、最近は本業を持つ若者に門戸を開く会社も増えている。

 ちなみに、定時制といえども免許は普通自動車第二種が必要なので、会社負担で取らせてくれるところがほとんどだ。ただし、2~3年以内に辞めると、取得費用の返還を求められることも業界の常識だ。

定時制の稼ぎは本業とどう違う

 その定時制タクシードライバーがどれだけ稼げるか。会社により細かな数値に違いはあるものの、ドライバーの給料は原則、売上×歩率であり、正社員ならば歩率は60%前後になる。つまり、月に100万円の売上があれば、給料は60万円社会保険料など引かれれば、最終的な手取り額は50万円弱になる。

 では定時制はどうだろう。実は同じように稼いでも歩率が50%前後のところが多い。そして月8回の隔日勤務で1回あたり6万円の売上だとすれば48万円。これに歩率を掛ければ半分の24万円(※週20時間以上の勤務なので、ここから社会保険や雇用保険などが引かれる)。

◆歩率のない時給制という働き方の場合

 同じ非専業ドライバーでも、働く時間を自由に選ぶことのできる分野も昨年3月から始まっている。その代表格がタクシーアプリGOが行っている「GO Reserve」だ。タクシー会社の定時制と違うのは、その働き方をより柔軟に選ぶことができる点だ。

 原則週40時間以内の勤務で乗務時間を相談することができ、月曜日に5時間だけ乗りたい。週末は8時間乗りたいなどの細かな時間指定ができる。注目の報酬は募集要項に時給制1500円と明記されている。つまり、週に40時間働けば月額24万円強。半分の20時間なら12万円

 こちらも雇用形態は原則週20時間以上のパートタイムで、定時制と同様に社会保険や雇用保険も加入になる。フリーランスの本業を持っている人たちにはありがたい制度だ。

 なお、GO Rserveがライドシェアと大きく違うのは、定時制と同様普通二種自動車免許が必要なこと。燃料費などの経費は会社負担。都心を中心に営業するものの、東京武三地域内なら、どのエリアでも配車がかかる点などがあげられる。

<TEXT/真坂野万吉>

【真坂野万吉】
フリーライター。定時制で東京を走り回っている現役の中年タクシードライバー

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