人もまばらでほの暗い路地裏に、ひときわ鈍く光る看板がある。店内は見えなくとも扉の向こうで誰かが熱唱しているのがわかる。
そんな“夜の社交場”スナックが、コロナ禍で急減したかと思いきや、今、世代を拡大して賑わいを取り戻している。現場を訪ねてみた。
◆多店舗展開でイメージ改革
全国に3店舗を展開する「街中スナック」は、スナックの定義をひっくり返そうとしている。禁煙、カラオケなし、22時には閉店。色を売りにしない。そして客の3分の1はお酒が飲めないという。
これでスナックと呼んでいいのか不思議だが、「街中スナック」を手がけるイナック代表のたなかるいさんは「スナックの本質は居場所」と話す。
「カラオケが苦手という人も一定数いるのではないでしょうか? 知らない世代の曲をずっと聴いているのは辛いものです。歌っているとなかなか会話もしづらい。
世代を超えて会話を楽しむにはどうしたらいいのかを考えた結果、この形になりました」
◆隣の人と乾杯すると100円引き。会話が弾む仕組み
東京さくらトラムの小台駅(荒川区)のそばにある「街中スナック ARAKAWA LABO本店」。開店と同時に客が訪れ、自然と会話が生まれていた。
「隣の人と乾杯すると100円引きになる『乾杯ドリンク』制や、ボトルに『今日がんばった人』『長渕剛のファン』など書かれているテーマに合えば、他のお客さんが入れたボトルを飲める『シェアボトル』制など、会話が弾むような仕組みを取り入れています」
シェアボトルには、お礼のメッセージを書くのが条件になっているとのこと。
近所に住む台湾出身の20代男性は「地元の人と交流できて輪が広がる」と笑顔だった。
◆意外にも良かった「スナックとまちづくりの相性」
地域貢献型を謳う「街中スナック」は、音楽会や街歩きなどのイベントを定期的に開催している。同店のまりえママはイベント繋がりで「街中スナック」を知った。
そんなまりえママは、「宮崎から上京してきた私にとっても、ここは大切な居場所」と語る。
スナックとまちづくりは相性がいいのかもしれない。同店スタッフのあいさんは「まちづくりは人づくり。こうやってみんなで賑やかに笑って飲むのが活気ある街に繋がっていく」と言う。
「三世代が集まるから、孤独も癒やされるし、若者を応援できる居場所になる」(たなかさん)
全国800地域に「街中スナック」を広げようと画策しているたなかさん。スナックのイメージを新たに塗り替えるのは彼かもしれない。
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平 写真提供/スナック横丁
―[復活![スナック快進撃]の現場]―
コメント