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 欧州宇宙機関「ESA」の火星探査機が火星の南極付近で、無数に散らばる黒いクモのようなものを捕らえた。ここは古代遺跡のように見えることから「インカ・シティ」と名付けられた場所だ。

 実際にそれはクモ(蜘蛛)のように見えるが、安心して欲しい。火星がクモに侵略されたわけではないし、そこにクモはいない。

 火星の南極に春が訪れ、二酸化炭素の氷が解け、それがガスとなって噴出した痕跡なのだという。上の画像はほんの一部だが、本文にはもっとたくさんクモに見える黒い物体が登場するので、そこんところよろしくなのだ。

【画像】 火星の南極付近に発生した大量の黒いクモのようなもの

 火星の南極付近にある、「インカ・シティ」は1972年NASA のマリナー9号探査機によって発見された。地球の古代都市のようにみえることからこの名がつけられた。

 別名「アングストゥス・ラビリンス」といい、その名の通り、谷や尾根がまるで迷宮のように複雑に交差している。

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火星の南極付近にあるインカ・シティ / image credit:ESA / DLR / FU Berlin (CC BY-SA 3.0 IGO)

 奇妙な黒い点が無数に発見されたのは、まさにそこだった。

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 欧州宇宙機関「ESA」の火星探査機「マーズ・エクスプレス」と「エクソマーズトレース・ガス・オービター」が撮影した画像のそこかしこにあるそれは、まるで黒クモが大量にうごめいているようで、少々気味が悪い。

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エクソマーズトレース・ガス・オービターが2020年に撮影した無数の黒クモ/Image credit: ESA/TGO/CaSSIS

クモのように見えるのは、発生したガスの流路

 だが安心して欲しい。火星がクモに侵略されているわけではない。実際には45m~1kmほどのガスの流路だ。

 春(火星にも季節がある)になって南半球が暖かくなると、二酸化炭素の氷の一番下の層が解けて、ガスが溜まる。

 このガスが膨張して、その上にある氷の層からまるで間欠泉のように噴出する。このとき黒っぽい地理が一緒に散りばめられることで出現するのが、画像のような黒クモのような模様だ。

 ESAによると、この間欠泉は、場所によっては厚さ1mもの氷を突き破って噴出しているという。

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火星探査機マーズ・エクスプレスのデータから再現されたインカ・シティのデジタルモデル。黒クモの正体は塵を含んだガスの間欠泉が噴出した痕跡だ/Image credit: ESA/DLR/FU Berlin

かつてのマグマが顔を覗かせたもの

 インカ・シティはかつて、石化した砂丘か、大昔の火星に存在した氷河の残骸だろうと考えられていた。

 しかし2002年、NASAの火星探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」によって、インカ・シティが幅86kmもある円形の地形の一部であることが判明した。

 このことから、ここは隕石の衝突によってできたクレーターだろうことがうかがえる。

 隕石の衝突によってできた地殻のひび割れには、マグマが流れ込み固まった。これを貫入という。

 やがてそのクレーターは堆積物で埋まったが、一部だけが侵食されて顔を覗かせた。それが今見える古代遺跡のような幾何学模様である可能性が高いそうだが、まだ完全には解明されていない。

References:Hundreds of black 'spiders' spotted in mysterious 'Inca City' on Mars in new satellite photos | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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火星に大量の黒いクモが!?安心してください、そう見えるけど違います