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 グリーンランドの約37億年前に形成された岩石の層を調査したところ、地球には当時から現代に匹敵するような磁場があったことが証明されたという。

 磁場(地磁気)は、宇宙から降り注ぐ放射線や太陽風を防ぐバリアとして機能するため、地球上のあらゆる生命にとって絶対に欠かせないものだ。だが、地磁気がいつ頃発生したのか、はっきりしたことはわからない。

 『Journal of Geophysical Research』(2024年4月24日付)に掲載された研究では、37億年前には地磁気がすでに存在し、それが今日の地球を包んでいるものとよく似ていることを明らかにしている。

【画像】 岩石に残された地磁気の指紋

 オックスフォード大学とマサチューセッツ工科大学の共同チームによる今回の研究では、グリーンランド、イスアグリーンストーン帯から採取した岩石に含まれる鉄が調査された。

 鉄の粒子は、結晶化によってそこに閉じ込められるときに磁石のように働き、地磁気の強さや向きをそのまま残してくれる。それはいわば、地磁気の”指紋”のようなものだ。

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岩石の中には古代の地磁気の”指紋”が残されている/Credit: Claire Nichols

 そして37億年前に形成された岩石についた指紋が示していたのは、その当時の地磁気は15マイクロテスラで、現代の30マイクロテスラに匹敵するものだったということだ。

[もっと知りたい!→]地球の磁場異変。大西洋上空の巨大な地磁気異常の謎をNASAが追跡

 これは岩石全体から得られたものとしては、もっとも古い地磁気の強さの痕跡で、個々の結晶を調べた過去の研究よりも正確かつ信頼性の高い証拠である。

これほど古い岩石から信頼性の高い記録を得るのは大変なことです。地球に生命が誕生した大昔に、地磁気がどのような役割を果たしたのか解明するうえで、重要な一歩です(オックスフォード大学 クレアニコルズ教授)
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37億年前の岩石は、35億年前の火成岩と比較するため、その横断面に沿って採取された/Credit: Claire Nichols

地球の進化や生命の歴史を紐解くヒントに

 過去、地磁気がどのように変化してきたのか知ることは、私たち生命や地球の歴史を紐解くうえで貴重なヒントとなる。

 地磁気とは地球から生じる磁場のことで、太陽風や宇宙線から地球を守ってくれるバリアのようなものだ。詳しく知りたい人はこの漫画(PDF)がおすすめだ。

 たとえば、地磁気の強さは一定しているように見える一方(とはいえ、場所によっては異常に弱い部分があり、それが広がっているという)、過去の太陽風はかなり強かったことが知られている。

 このことから言えるのは、太陽風に対する地球の守りは、時代とともに強化されたということだ。生命が海から陸上へと進出できたのは、もしかしたらこれが関係しているのかもしれない。

・合わせて読みたい→地球にはなぜか磁場の弱い領域があり、それがどんどん広がっている

 また地磁気の変化は、地球の内部で固い核がいつ頃できたのかも教えてくれる。これは地球をおおうプレートの動きや地球内部から熱が逃げるスピードを理解する重要な手がかりである。

 そもそも地磁気は地球の内部で発生する。内核が固まるときの浮力によって、流動的な外核の中で溶けた鉄が混ざり合い、ダイナモのように働くことが原因だ。

 しかし初期の地球では、内核がまだ固まっていなかったので、どのような仕組みで地磁気が作られていたのか定かではない。

 だが今回の研究によるなら、地球初期のダイナモ作用は、今日の地磁気を発生させている凝固プロセスと同じくらい効果的だったということになる。

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過去の地磁気を明らかにするために掘削された岩石サンプルのコレクション / image credit:Claire Nichols

謎めいた大気現象の解明にも

 大昔の地磁気を調べるのが難しいのは、岩石の中に残されたせっかくの痕跡が、熱されることで変化してしまうからだ。

 地殻の岩石は、長い歴史のうちに紆余曲折を経ているので、過去について教えてくれる手がかりはなかなか現代にまで残らない。

 ところがイスアグリーンストーン帯は、ぶ厚い地殻の上にあるおかげで、大規模な地殻変動や変形から守られてきた。今回37億年前の地磁気の存在を裏付ける証拠が得られたのはそのおかげだ。

 そして明らかになったことは、地球の大気の発達、とりわけ大気からのガス放出に地磁気が果たした役割を知る新たなヒントにもなるかもしれない。

 25億年以上前、大気からキセノンという希ガスが消えた。

 キセノンは比較的重いため、ただ単に大気から流れ出たとは考えにくい。そのため、キセノンが消えた理由は、今のところ未解明の謎だ。

 だが1つの仮説としては、帯電したキセノン粒子が地磁気によって大気から取り除かれた可能性がある。

 研究チームは今後、カナダオーストラリア南アフリカにある古代の岩石を分析し、大気に酸素が増加した25億年前より以前の地磁気を調べたいと考えているそうだ。

References:Possible Eoarchean Records of the Geomagnetic Field Preserved in the Isua Supracrustal Belt, Southern West Greenland - Nichols - 2024 - Journal of Geophysical Research: Solid Earth - Wiley Online Library / 3.7 Billion Years Old: Oldest Undisputed Evidence of Earth’s Magnetic Field Uncovered in Greenland / Ancient Rocks Reveal Earth's Magnetic Field Existed 3.7 Billion Years Ago : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

 
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地球の磁場は少なくとも37億年前から存在していたことが判明