ニューウェイ氏がアストンマーティン移籍となれば、またF1は盛り上がりそうだ(C)Getty Images

 「空力の鬼才」の異名を取るレッドブルレーシングのエイドリアン・ニューウェイ最高技術責任者(CTO)が今季限りでチームを離脱する旨をチーム側に伝えたと独誌『アウト・モートゥル・ウントシュポルト』などが報じた。開幕前にチームのクリスチャン・ホーナー代表の女性従業員に対する不適切行為疑惑が発覚し、最終的に不問に付されたとされるが、それらのスキャンダルに不快感を示したことが要因の一つといわれている。チーム側も「エイドリアンとは、2025年末まで契約を交わしている。他チーム移籍に関して我々は把握していない」との短い声明を出し、火消しに必死だ。

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 レッドブルには2006年に加入したが、それまでは他チームで数々のチャンピオンマシンを開発した。マーチで本格的にF1マシンのデザインを手掛けて頭角を現し、1990~96年に在籍したウィリアムズで通算51勝、97~2005年のマクラーレン時代に43勝をマークした。

 レッドブルではアストンマーティンと提携してハイパーカーの開発を行うなどF1プロジェクトに直接的に携わらない期間もあったが、ホンダパワーユニット供給で提携を開始した19年からF1の業務に復帰するようになり、チームに再び黄金時代を呼び込んだ。

 チームを離れた後は2026年からホンダパワーユニットを供給するアストンマーティンに加入するのでは、との噂が持ち上がっている。欧州メディアでは同チームから総額1億ドル(約158億円)でオファーを受けたと報じられ、フェラーリからも熱烈に声をかけられたともいわれている。

 ニューウェイ氏はホンダに強い興味を示しているといわれ、栃木県ホンダの研究施設を訪れた際には常にメモ帳にペンを走らせ、インスピレーションを働かせていたといわれている。2015年にホンダがF1に再参入した際の初期型パワーユニットはライバルと比べて性能が極端に劣っていたが、現在ではかつての常勝チームだったメルセデスをしのぐ存在となり、ホンダとのタッグ技術者の血が騒ぐようだ。

 キーマンが離脱すれば、チーム内にどうような影響を及ぼすか。現在のF1の車体開発は完全分業制で、シミュレーション技術も発達していることから今後の開発への影響は少ないともいわれているが、2028年までチームと選手契約を結んでいる王者マックス・フェルスタッペンのモチベーションが下がる恐れもあり、契約問題で騒動になりかねない。

 ニューウェイ氏は12月で66歳。一つの組織に長居しすぎたのであれば、新たな環境で再挑戦する最後のチャンスかもしれない。F1では新天地に移るまでの1年間はガーデニング休暇を取って業務にタッチできない紳士協定があり、今年が離脱宣言する絶好のタイミングではある。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]


レッドブルの技術キーマン 「空力の鬼才」ニューウェイ氏が今季で離脱との報道 アストンマーティン移籍ならホンダと再タッグも