渋谷駅のなかで、ひときわ遠い位置にあった「新南改札」が28年の歴史に幕を閉じます。遠いとはいえ利用者も多く、ここならではの利便性もあったことから、惜しむ声も寄せられていますが、今後はどうなるのでしょうか。

“南渋谷駅”との異名もあった渋谷駅「新南改札」移転

渋谷駅でひときわ遠い位置にあった「新南改札」が、2024年7月21日に閉鎖されます。同日の初電から、山手線ホームに近い位置に新設された新しい改札に移転します。4月23日JR東日本からこのことが発表されると、ネット上では、「すごく残念」「不便になるなぁ」といった惜しむ声も相次ぎました。

中央改札から南へ約400mの位置にある新南改札は1996年埼京線の運行区間が新宿から恵比寿まで延伸した際に開業。山手線ホームから南へズレた位置に設置された埼京線ホームの、さらに端に位置しており、“南渋谷駅”との異名もあったほどです。

外へ出ればハチ公口などの喧騒から離れた世界が広がっていますが、オフィスや学校のほか、JRAの場外馬券場なども近く、改札を通過する人の流れはいまも絶えません。

2020年6月、埼京線ホームは山手線ホームと並列の場所に移設されましたが、その後も新南改札は存続し、旧埼京線ホームを「通路」としながら渋谷駅の中心エリアとつながっています。

新南改札の移転が決まり、ネット上では新南口について、「人混みを避けられるから便利だった」「埼京線湘南新宿ライン渋谷駅に着いて、そこからタクシーで移動する場合には、新南口は結構使えた」といった声も。確かに明治通りも近く、ホーム移転前までは、電車を降りてすぐタクシーを拾うこともできたでしょう。

では今後、これまで新南改札・新南口を利用していた人はどうなるのでしょうか。

改札なくなっても新南口は存続?

新しい新南改札は山手線ホームの南端、国道246号の南側で線路を横断するデッキに直結する形で設けられます。

このデッキは線路東側の「渋谷ストリーム」(2018年開業)、西側の「渋谷サクラステージ」(2023年12月開業)を結んでいて、後者から歩行者デッキがさらに南側へ延び、再び線路を横断して新南改札へと直結しています。すでに完成しているこのルートを利用して、線路の西側から従来の新南口へ向かうようになります。

新南改札からは、JRのホテルメッツ渋谷が入る複合施設を経て外へ出るようになっていますが、このアプローチは変わらず、単に既存の改札部分が閉鎖される形です。

ただ同時に、新南口への「通路」として利用されている旧埼京線ホームも閉鎖されます。JR東日本首都圏本部によると、この旧埼京線ホームが閉鎖後どうなるかは、まだ検討中だということです。

かつて山手線ホーム上の中央改札口側と旧埼京線ホームを連絡した高架通路は、ホーム移設に際して撤去され、高架通路とホームをつないでいた階段の跡などを確認することができます。そうした“遺構”を残しながら通路として使われている旧埼京線ホームですが、閉鎖以降も、その全容は渋谷サクラステージから続く線路西側の新たな歩道デッキから見ることができます。

ちなみに、旧埼京線ホームはもともと1885(明治18)年に開業した当時の初代渋谷駅があり、その旧駅の施設が貨物用に転用されたのち、100年以上を経て埼京線の延伸とともに旅客化されたものです。大正時代に初代の渋谷駅が現在の大山街道に近い位置へ移設されたのも、渋谷に延びてきた路面電車などとの乗り換えの利便性が考慮されたためでした。初代渋谷駅の開設から139年、周辺はいよいよ鉄道施設としての役割を終えることになります。

渋谷駅の新南改札に通じる旧埼京線ホームを通過する埼京線の電車(乗りものニュース編集部撮影)。