高速で動物なんて見かけない……と思っていたらなんと年間5万件も起こっている! 高速での「ロードキル」の実態とは?

この記事をまとめると

高速道路上で発生する動物の死亡事故件数は昔よりも増加傾向にある

■一般道だとネコだけで年間約29万匹も命を落としている

■動物注意の標識を見て速度を落としたり夜間の際にはハイビームをすることで自衛すべきだ

動物との接触事故件数は年間で増加傾向にある!

 運転していると、黄色い菱形に黒い縁取りがあり、動物の絵が描かれている標識が出てくることがありますね。それは「動物が飛び出すおそれがある」ことを意味する、いわゆる動物注意の標識です。

 描かれている動物で多いのは、シカやタヌキ、サルではないかと思いますが、じつはそのほかにもウサギやイノシシ、ウシやキツネなど、全国では約35種類もあるといわれています。とくにレアなところでは、神奈川県川崎市の中原街道に設置されている「カルガモ」が親子で歩いている様子を描いた、なんとも可愛らしい標識や、小笠原諸島の父島、母島のみにあるという、アカガシラカラスバト。こちらは黒一色ではなく、カラーで描かれているのが特徴です。

ネコだけで年間約29万匹も亡くなっている! ロードキルの実情と遭遇しないようにする対策

 高速道路もこうした動物注意の標識が立てられていますが、実際に高速道路で動物と遭遇した、ぶつかった、という話はあまりニュースにもならず、身近な人でも聞くことが少ないような気がします。道路上で起こってしまう動物の死亡事故は「ロードキル」と呼ばれていますが、実際にはどれくらい起こっているものなのでしょうか。

 じつは、高速道路各社の発表では、2002年には約3万6000件だったロードキルは、2021年には約5万1000件に増えているといいます。その分類はシカやクマ、イノシシといった大型動物が西日本高速道路中日本高速道路、東日本高速道路といった、比較的自然の多い地域で多くなっており、タヌキやネコ、イヌといった中型動物は首都高速道路でも起こっています。

ネコだけで年間約29万匹も亡くなっている! ロードキルの実情と遭遇しないようにする対策

 ちなみに一般道では、全国でネコだけでも年間約29万匹が命を落としていると推測されているので、比べようのない数ではありますが、決して高速道路でも油断してはいけないということになります。

動物たちの生活環境がなくなって道路上に出没している

 高速道路でのロードキルが増えている背景として、インフラ整備が進んでいることが大きいとされています。国土の約7割が森林となる日本では、どうしても山間部を切り開いて道路を作ることになってしまうので、その地域に生息している野生動物とどう共存していくのか、十分に検討し対策することが求められます。

 また、人間の身勝手な行為による環境破壊が生態系を崩し、シカやタヌキが急増していることもロードキル増加の原因といわれています。

ネコだけで年間約29万匹も亡くなっている! ロードキルの実情と遭遇しないようにする対策

 2021年度には野生のシカ捕獲数が過去最高の72万5000頭にまで増えており、そのシカがエサとして好む植物が激減することによってミミズが増え、そのミミズを餌とするタヌキが増えるという図式。タヌキは近年、東京都心部でも目撃情報が増えており、ロードキルのもっとも多い被害者となっています。

 高速道路を走る際には、自然の多い地域だけでなく都心部でも、もしかしたら動物が飛び出してくるかもしれないという心づもりで、つねに用心しながら運転することが大切です。

 なお、ロードキルを起こさないための対策としては、事前に道路各社や自治体がホームページなどで注意喚起を行っていることがあるため、目的地までの情報を確認したり、動物注意の標識の付近では速度を落とし、いつでも対処できる構えで運転すること。また、タヌキをはじめ夜行性の動物は、夜間に道路に飛び出してくる可能性も高いので、ハイビームを積極的に使うと遠方でも動物の目が光って発見しやすくなります。

ネコだけで年間約29万匹も亡くなっている! ロードキルの実情と遭遇しないようにする対策

 シカなどの大型動物と衝突してしまうと、車両の損害が大きくなったり、人間が死亡する事例も上がっています。慢心せず、「いつ出てくるかわからない」という心構えで運転したいですね。

ネコだけで年間約29万匹も亡くなっている! ロードキルの実情と遭遇しないようにする対策

高速で動物なんて見かけない……と思っていたらなんと年間5万件も起こっている! 高速での「ロードキル」の実態とは?