日刊SPA!で反響の大きかった2023年の記事をジャンル別に発表してきたが、今回は総合トップ10。初回とランキング発表時の反響をあわせて集計、本当にスゴかった記事を発表する。第5位はこちら!(集計期間は2023年1月~2024年3月。初公開2023年6月18日 記事は取材時の状況)
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◆愛車が勝手に暴騰した! 貧乏カーマニア、30年後の大勝利

カーマニアにもいろんなタイプがいます。最新モデルにこだわる人がいれば、一台を長く乗り続ける人もいる。そんななか、今回登場するのは乗らないクルマを大事に保管。今では眺めているだけで満足のカーマニア。辛いことがあっても、大好きなGT-Rフェラーリがあれば、それで十分なのでした

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

カーマニア、夢のゆりかご

 かつて貧乏カーマニアと言えば、「四畳半カップラーメンをすすりながら高級スポーツカーに乗るバカ」というイメージだったが、近年のスポーツカーの暴騰によって状況は一変。昔ムリして高級スポーツカーを買った貧乏カーマニアは、すべて勝ち組になりました! ここにそのお手本がいます! 茨城県水戸市在住の大野善直さん(54歳)です!

 大野さんは22歳のとき、ド根性で新車のスカイラインGT-Rを520万円(総額)で購入。600馬力にフルチューンしてゼロヨン大会に出場し、優勝したこともあるが、当時は「大野君はクルマと結婚するの~?」と、からかわれていた。

 しかし、農民的な性格により、32年後の現在もGT-Rを所有! 一時は100万円を切っていた中古車相場も、近年ぐんぐん上昇し、今では1000万円に近づいている。

 大野さんが凄いのは、もう15年間くらいGT-Rの車検を取っていないこと。つまり自動車重量税も保険料もガソリン代もタダ! 自宅車庫なので維持費ゼロ! 今はバッテリーが上がっていてエンジンすらかからないが、「車検取れば、いつでも動かせますから」と涼しい顔だ。

フェラーリを120回ローンで購入!

 それだけではない。10年前には、カーマニア究極の夢であるフェラーリ(中古)を、10年120回ローンで購入! 5月にめでたくローンを完済し、完全に自分のものにしたのである。

 10年前、総額700万円(底値!)で買ったフェラーリF355は、現在2000万円前後に高騰している。想像を絶する大勝利だ!

 しかも驚くべきことに、大野さんの年収は、フェラーリを買った10年前で276万円、現在でもたったの300万円なのである。それで住宅ローンを払いつつ、家族4人+犬1匹、シアワセに暮らしている。マジックか!?

「夜、皿洗いのバイトをしたり休日は洗車のバイトをしたり、コツコツ稼ぎました。嫁さんが私よりも稼いでくれてますし、自宅は元農地でクルマが10台くらい置けます。歩いてすぐのところに嫁さんの実家があるので、フェラーリはそっちの納屋に置かせてもらってます」

フェラーリの車検も3年前から切れたまま…

 聞けば、フェラーリの車検も3年前から切れたままだという。車検が切れれば自動車重量税も保険料もガソリン代もタダ! 究極の節約術を実践しているのだが、カーマニアとして、愛車を運転したくなることはないんだろうか?

GT-Rは昔さんざん乗りましたし、フェラーリは、毎日チラッと見て、たまに磨くだけで満足ですねえ。どっちも車検取ろうと思えば取れますから、その可能性だけで十分なんです」

 ちょっと値上がりしたからってすぐ売ったりせず、車検が切れてもじーっと持ち続けていたからこそ、今日の大勝利があるのだった!

「今も昔も仕事は我慢の連続です。でも、自分にはGT-Rフェラーリがあるから、苦しくても悲しくても耐えられるんですよ」

 うお~ん。カーマニアとして涙が出る。

◆【結論!】

人生、なにがどうなるかわからない。好きを貫いていれば、大勝利が転がり込むこともある! なら好きなクルマに乗ろうじゃないか! 乗らずに持ってるだけでもヨシ。

◆納屋に保管中のフェラーリF355は700万円→2000万円に!

フェラーリ F355







 10年前、700万円で購入。頭金200万円、残り500万円を120回ローンに。月々4万9503円を淡々と支払い続けて、この5月についに完済! 納屋の中なので保管状況は万全。車内には多数の除湿剤を置いてコンディションを保っている。

◆32年前に購入のGT-Rも、いつのまにか新車価格の2倍に高騰!

スカイラインGT-R(R32型)







 こちらは32年前、520万円で購入。頭金270万円、残り250万円を48回ローンに。600馬力にチューンしてゼロヨン大会で好成績を収めた後、娘の保育園の送迎に出動したが、15年前に車検を切り冬眠状態に。その間に相場は急上昇。無欲の勝利だ。

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

R32&F355