前編にあたる「本当に役立つ災害グッズ」(5月1日10時公開記事)に続いて、災害時の食料問題を取り上げる。

 南海トラフ地震を想起させた、4月17日の愛媛、高知で震度6を記録した地震。国は南海トラフが起きた場合、「家族人数×1週間分」の備蓄が必要だと広報しているが、そんな莫大な量の非常食をストックしておくスペースもなければ、非常食は1袋だけでも500円以上する。まとめ買いすると数千円もかかるため、買うのを躊躇してしまう。

 さらに非常食として販売されている食品は、食べるためにお湯や加熱が必要なものが多く、現実的ではない。

 そこで注目されているのが、ローリングストック。日常的に食べ慣れているものを多めに購入、買い足していく方法だ。

 例を挙げよう。ハウス食品や明治、永谷園が製造販売している、加温しなくても食べられる「レトルトカレー」は、賞味期限が1年から2年と長め。災害食用だと5年ももつ。暑くなるこれからの季節、冷飯にかけても食べられるので、ローリングストックしやすい食材の代表格と言えるだろう。

 パンの缶詰も準備しておけば、お湯や火が使えない環境でも、カレーとパンという日常生活と変わらない非常食を食べられるのが嬉しい。

 チキンラーメンも、製造元の日清食品によると、

「袋麺は製造日から8カ月、カップ麺は6カ月の賞味期間を設定しています。賞味期限とは、製品をおいしく食べることができる賞味期間の期限です。賞味期限を過ぎてすぐに劣化することはありませんが、賞味期限にかかわらず、お早めにお召し上がりください」

 0秒チキンラーメンだとお湯いらずで、賞味期限が近くなったものをオツマミやオヤツに食べて買い足せば、無駄にはならない。

 水は災害時、沸騰させてから飲むことになるが、どうしてもお湯が手に入らない場合に役立つものがある。

「味噌をよく溶かせば、水でも飲むことが可能」

 とは、即席みそ汁を製造するマルコメの話である。

 意外なところでは「羊羹」が挙げられる。元日の能登半島地震後、一時、通販サイトで商品到着まで1カ月待ちとなったのが、井村屋の「えいようかん」。5年間保存できる羊羹で、おなじみの小倉味とチョコ味がある。AEONなど一部スーパーで取り扱いがあるので、チェックしてほしい。

 さらに同社が長距離ランナーの栄養補給として発売している「スポーツ羊羹」と「片手で食べられる羊羹」は、子供や高齢者でも簡単に開封できる上に、消化もよく高カロリー。被災時の不安な気持ちを、優しい甘さが癒やしてくれる。

 井村屋だけでなく、「とらやの羊羹」も日持ちがいいことで知られる。あるインフルエンサーが、自宅から見つかったウン十年前のとらやの羊羹を試食したことで注目された。

「とらやの羊羹は、十分な加熱工程と、徹底した衛生管理のもと、製造しております。砂糖の含有量も多く、品質の変化が少ないという特性を持っています。賞味期限は製造から1年、賞味期限後さらに1年はお召しあがりいただける、常温での長期保存が可能な、保存性にすぐれた食品です」

 なるほど、とらやのこんな説明を聞くと、納得である。合計2年間の保存が可能で、紅茶味や抹茶味、はちみつ味など味のバラエティーにも富んでいるため、男性から子供まで非常時のカロリー補給に有用な伝統スイーツだ。

 羊羹のほかに、通販サイトで人気があるのは、日本ハムが販売している陸上自衛隊の「戦闘糧食」シリーズ。

 ポークソーセージステーキ、やきとり、煮込みハンバーグなどボリューミーだが、全部試食してお勧めだったのは「鶏と根菜のうま煮」。被災時は飲料水が限られる中、薄味なので喉が渇くこともなく、野菜も一緒に摂ることができる。被災のショックと疲労で食事が喉を通らなくなった高齢者にも食べやすい味付けだ。

 新型コロナの自宅待機用に配られたホテイフーズの、「やきとり」缶詰や「みかん」「黄桃」などのフルーツ缶詰は、非常食としてもキャンプ食としても、かなり有能。調味料がなくてもやきとりの缶詰をご飯と一緒にさっと炊けば、炊き込みご飯になる。

 非常食というと、大塚製薬の「カロリーメイト」をイメージする人は多いと思うが、同社の「SOYJOY」は被災時に入手困難な野菜代わりに、ドライフルーツや大豆を摂ることができる。

 他にも機能性ゼリーや野菜ジュースなど、発熱時の栄養補給や朝食代わりになる食品を多めに買い込んでローリングストックすれば、わざわざ高い非常食を買う必要もない。心が折れそうな被災時に食べ慣れないものを食べる苦痛は軽減するだろう。

(那須優子)

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