新入社員が今年もやってきました。そこで「すぐ辞めた新入社員」の記事の中から、反響の大きかったトップ10を発表。第9位の記事はこちら!(初公開2023年4月3日 集計期間は2018年4月~2023年12月まで 記事は取材時の状況)
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 多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、業務内容や職場環境など、人により理由はさまざまだが、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職してしまう人もいる。

 実際、自分が職場環境に合うのかどうかは入社してみなければわからないものだ。今回は、1か月以内に辞めてしまった2人のエピソードを紹介する。

◆最初から要求レベルが高すぎる

 専門学校卒業後、エステサロンに就職した青木ナラさん(仮名・20代)。彼女は「すぐに辞めてしまった」という。そこでの苦労を赤裸々に話してくれた。

「就職先は、提携の専門学校があり8割がそこの学校出身者でした。私は一般応募のため、技術の面では一からのスタートで、研修では足を引っ張らないように必死でした」

 なんとか研修も終わり、青木さんは銀座店のスタッフとして配属された。

「敷居の高い土地柄で、そのぶん接客や施術に求められているものが大きい。当然、先輩スタッフも厳しかったのを覚えています。和気あいあいとした雰囲気は皆無、当たり前なのかもしれませんが、仕事だけの関係性が築かれていました」

 朝から夜遅くまで先輩に言われたことをこなす毎日……。昼休憩も気が休まることはなかったそうだ。

◆トラブルが起きても誰も助けてくれない

 所属店舗には同期もおらず、誰にも相談ができなかったという。そのまま2ヵ月が経ったとき、トラブルが発生する。

「担当したお客様はとてもおしとやかで、問いかけに対しても返事はしてくれるものの、静かに過ごしたいという方でした。そんななか、エステに使用する機器の不具合が起こったんです。電流が流れないというトラブルでした」

 初めてのことで慌ててしまった青木さん。しかし、先輩スタッフは様子を見にきてくれなかったという。

「そんな状況で、突然電流が流れてしまいお客様がかなり動揺してしまいました。そのときになって、やっと先輩スタッフが見にきてくれたんです」

◆接客することが怖い…

 その後、青木さんは上司にひどく怒られた。トラブルの原因を追究すると、オープン前の電流チェックが甘かったそうだ。

「私は、その一件から精神的に参ってしまい、思い出すたびに過呼吸を起すようになってしまいました。翌日も出勤したのですが、お客様の対応が怖くなり、常に緊張状態だったんです」

 その1週間後くらいから出勤すること自体が難しくなったと話す。その状況を見かねた上司が何度か話をしてくれたのだが、精神状態を元に戻すことは難しく、青木さんは退職した。

◆敬語を使えない新入社員

 新川達郎さん(仮名・20代)は、建築・土木関係の企業に勤めて5年目になる。

「建築・土木業界がブラックな環境だと世の中に騒がれていた頃で、毎年かなりの人数が退職していました。新入社員Aもそのうちの一人ですね。

 私が事務担当者として常駐していた現場に、研修を終えたAが配属されてきました。初対面の印象はハキハキしているけど、ちょっとチャラいというか。“最近の子”だなぁという感じでしたけど、そこまで悪いとは思わなかったのですが……」

 しかし、新川さんの予想をはるかに超える、Aの問題点が浮き彫りになってきたそうだ。

「Aは敬語を使えませんでした。本人は一応、敬語を使おうとしているのですが、会話をしていて5分もすると、“タメ口”になるんです」

◆新入社員の主張「友達はみんな土日休みなのに」

 建築・土木業界では、礼儀やマナーがとても重要視されるという。比較的年齢が近かった新川さんは「まだ許せる」としても、「目上の人にもほぼタメ口」だったAの評判はどん底だった。

「ある日、Aが話しかけてきました。『土曜って休みになんないっすか?』。工事現場の休みは基本的に日・祝のみで、土曜日は働いています。働き方改革の影響で土曜休みの現場も増えていますが、当時うちでは出勤が必要でしたね。

 私は『普通に無理かな。ここ来る前に休日の説明聞いたでしょ?』と言ったのですが、彼からは『友達はみんな土日休みなのに、僕らだけ仕事っておかしいでしょ』と返されたんです。『そういう業種って分かって入社したんじゃないの?』と聞くと、今度はタメ口で『いや、とにかく頼むって!』と言われました。まるで友達感覚というか……ちょっと嫌な予感がしていました」

◆「土曜日を休みにしてほしい」と上司に直談判

 そして、1ヵ月が経とうとしたとき、大事件が起こる。

 確かに、新川さん自身も土曜出勤があることに違和感を覚えていたという。休みになればどれほどいいかと思っていたのだが、それを納得したうえで入社したのは自分だと割り切っていたのだ。

「Aは、私に言ってもラチが明かないと思ったのか、キレ気味に上司に直談判することにしたようです。そして、約10分後、上司の怒鳴り声が響くのと同時に、号泣するAが上司の部屋から飛び出してきました」

 新川さんは、この状況から「あ、もうAは無理だな」と確信した。そして、予想通り、翌日から姿を現すことはなかったそうだ。その後、Aがどうなったのかは知る由もない。

 ただし、彼が今頃は完全週休2日制のホワイト企業で元気にしてくれていることを新川さんは陰ながら祈っている。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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