DVに関する相談が高水準で推移している。配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は令和4年(2022年)度に約12万2211件で、平成14年(2002年度)の3万5943件から3倍以上増えたことになる。背景には、DV被害に対する認識が広がったなどの事情もあるが、依然深刻な被害であることは明らかだ。

では実際にDV被害にあった場合、どのように対応するべきか。「緊急時はもちろん110番ですが、DVは弁護士に相談すべき」と指摘するのが、大阪府警で約10年間、警察官として勤務した経験をもつ平田純一弁護士だ。「110番通報者登録制度」など対処法について、平田弁護士に聞いた。

●「緊急時はもちろん110番ですが、DVは弁護士に相談すべき」

——DV被害にあった場合、まずどのような対応が必要でしょうか

DV被害については、緊急時にはもちろん警察へ助けを求めるべきですが、刑事事件化、避難などの被害防止の援助、DV保護命令発令、民事による対応、といった横断的な検討をする必要があります。それら全てに対応できるのが弁護士です。そのため緊急時はもちろん110番ですが、DVは弁護士に相談して欲しいと考えています。

特に接近禁止命令等のDV保護命令については、ご自身で裁判所へ申し立てる必要がありますが、警察が手伝ってくれるわけではありませんし、発令要件の該当性判断において、前提となる警察等への相談内容も重要となってきます。

——「110番通報者登録制度」も有効なのでしょうか

110番通報者登録制度(110番緊急通報登録システム)とは、DVやストーカーの事案で、警察の110番通報のシステムに、事前に電話番号を登録して、登録番号から110番通報がされた場合に、通報を受けた警察官に相談内容の基本的情報(氏名・住所・被害の要旨など)が共有される制度です。

これにより、通報時に一から説明しなくても基本的情報を把握した警察官が駆け付けてくれますので、緊急時に迅速かつ適切な対応が期待できます。

またDV事案では、声を出して通報ができない状況での被害もあり得ますが、スマートフォンでは実際に110番を押さなくても緊急通報できる機能がありますし、そのような場合でも状況を把握した警察官が駆け付けてくれます。警察へのDV相談では、この制度利用の申出をしてください。

今年(2024年)4月から改正DV防止法が施行され、DV被害者保護の機運が高まっています。取り返しのつかない被害に発展することもありますので、早期にDV問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。

【取材協力弁護士】
平田 純一(ひらた・じゅんいち)弁護士
1978年生まれ。大阪府立北野高校、立命館大学神戸大学法科大学院を卒業。関西圏に地縁があり、現在も関西圏で活動。大阪府警で約10年間の警察官としての勤務経験を活かし、犯罪被害者支援、刑事事件、男女問題を多数解決。近時は相続案件、労災事件にも注力。
事務所名:平田純一法律事務所
事務所URL:https://sites.google.com/view/hiratajunichihouritsujimusyo/

DV被害、知ってほしい「110番通報者登録制度」と「弁護士」の活用法 元警察官弁護士が解説