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 記者が広報・PR会社を練り歩く記者キャラバンを久しぶりに再開した。久しぶりに対面でのミーティングを再開することで、果たして対面での価値を再認識できるのだろうか?原宿から渋谷、目黒を渡り歩いた4月前半の記者キャラバンの模様をレポートしていきたい。

オンライン全盛のコロナ禍を経て、記者キャラバンが改めて必要な理由

 記者キャラバンは記者である私が都内にある広報・PR会社を練り歩くという企画(関連記事:記者が広報・PR会社のもとに出向くキャラバンやってみた)。広報・PR会社がメディアを訪問する「広報キャラバン」の逆のコンセプトでコロナ禍以前から実施している。(おじさんらしく)Facebookで情報提供したい広報・PR会社の担当者を募り、日時を決めて訪問。1訪問で最低でも1時間を確保し、都内の会社を1日5~6件程度回る。数回のキャラバンでは、情報交換にとどまらず、そのまま記事にしたことも数件ある。

 ご多分に漏れず、この記者キャラバンもコロナ禍で中断していた。コロナ禍でオンラインミーティングは簡単にできるようになったが、トピックも、出会いも、あらゆる印象が薄かった。ただですら人の顔と名前が覚えられなくなっているのに、ミーティングに同席しているだけのPR会社の担当者なんぞ、ほぼ忘れている。やはり対面で会って、お互いきちんと爪痕を残しておくのはきわめて重要だなと感じ、記者キャラバンを再開することにした。

 もう1つのテーマは、ASCIIというメディアを広報・PR会社の方々に改めて認識してもらうという点だ。最近、危機感を感じているのは、ASCIIをよく知らない業界関係者が少なからずいるということ。この数年でASCIIで扱うトピックが広がりすぎたこともあり、媒体説明が全然間に合ってないというのが肌感覚である。なので、業界関係者やその先の読者に向けて、改めてメディアについて説明しなければというのが、個人的なタスク感覚だ。

 では、誰から説明すべきか。メディアの読者はそのエンゲージメントの強さによって、複数の階層を構成しているが、業界にも詳しく、メディアリレーションを重視する広報・PR会社の人たちは、私たちから見てもっとも近い読者であり、ファンだと思っている。まずはこの方々にASCIIという媒体を知ってもらい、記事を読んでもらったり、イベントに来てもらうのがすごく重要だと考えた。実際、広報やPR会社の方々に、「この媒体に記事を載せてもらいたい」と思ってもらなければ、読者を惹きつける企画やトピックも得られない。ということで、まずは真摯に名刺交換とメディア紹介である。

 こうした経緯で、先日記者キャラバンを久しぶりに復活させたところ、30人近くの広報・PR会社の担当者から「うちに来て欲しい」「ぜひお会いしたい」というありがたい声をいただいた。もちろん1日では回れないので、複数の日に分散し、近い場所と路線でスケジュールを組んだ。今回はそのうち4月前半に渋谷近辺で行なった「春の記者キャラバン~渋谷事変編~」の模様を見ていただこう。

午前中はLINE WORKSで面談、RevComm広報とランチ そのまま発表会へ

 その日の記者キャラバンは、全部で4件。渋谷ヒカリエで昼過ぎから開催される発表会を挟んで、午前中に2件、午後に2件のアポを入れてみた。10時から原宿のLINE WORKSで一件目のアポ。

 LINE WORKSASCIIで特設マイクロサイトを運営している関係で定期的にミーティングを持っているのだが、今日は社長の増田さんと広報青木さんとラフに情報交換させてもらった。たとえば、LINE WORKSが3月に開催した事業戦略説明会の背景、当日発表されたセキュリティホワイトペーパーのプロジェクト、そして5月に開催されるLINE WORKS DAYの情報など。LINEのAIカンパニーと統合されて以降はじめてとなるLINE WORKS DAYだけに、LINE WORKS以外のAIプロダクトもアピールされるという。原宿で開催されるイベント本番が楽しみだ。

 さて、11時半からは渋谷でRevComm広報の真壁さんとインドカレーランチ。同社は音声解析AIを搭載したクラウド型の電話「MiiTel」を提供し、営業や顧客対応の品質向上を実現している。他社と違うポイントは、いわゆる電話部分も自社開発しているところ。エンジニアも基盤技術に強いメンバーが多いという。

 以前は、Salesforceとの連携を前提としたSaaSのインサイドセールスで用いられていたが、最近は金融会社やエンタープライズなどでも需要が増しているという。東京都が条例化を目指すことで話題のカスハラ対応で導入を進めている事例もあるということで、今後はES(従業員満足度)向上の分野での導入も増えていきそうだと思えた。

 逆に聞かれたのは、やはりオフラインでの発表会について。個人的にはニュースの印象が違うので、オフラインでやったほうがよいとは思うのだが、タイパ的にオンラインを好む記者やライターがいるのも事実。スタートアップの場合、発表会の開催自体はそれほど多くないので、どうせなら新発表にプレスだけじゃなく、ユーザーを呼び込んだり、事例登壇を仕掛けたり、いろいろやりようはあるという意見をさせてもらった。

 続く13時からはLegalOn Technologiesの発表会に参加。約179億円という大型資金調達を実現し、グローバルを目指すAI法務プラットフォームを発表するということで、すごく気合いの入った発表会だった(関連記事:LegalOn Cloud発表 法務を包括的にカバーするプラットフォームへ)。

空飛ぶクルマの業界動向話、データサービス会社の働き方

 翌日にアップするLegalOnの記事をまとめたあと、シュークリームを手土産に、スクランブルスクエアのSHIBUYA QWSに向かう。空飛ぶクルマを手がけるテトラ・アビエーションや電動キックボードのFiidoをビジネスを支援するSWALLOW新井さんに会うためだ。

 Tetraは、SkyDrive、GMOとともに日本で数少ない空飛ぶクルマのメーカー。Fiidoは電動キックボードのメーカーで、国内ではライドシェアではなく、販売モデルで製品を展開している。両者とも特徴的なのは、業界が未成熟な点だ。行政書士の資格を持ちつつ、コミュニティやスタートアップにも明るい新井さんは、広報やマーケティングの役割をはるかに超え、こうした業界のルールメイキングに取り組んでおり、現場の話も面白かった。ドローンもモビリティも業界的に女性が少ないので、絶賛募集中とのこと。そのうち空飛ぶクルマ乗ってみたい。

 最後は目黒に移動して、駅前のビルにあるprimeNumberの村島さんを訪問する。データ分析基盤のtroccoやデータ活用基盤のコンサルティングやエンジニアリングを手がける同社だが、最近はグローバル進出にも注力。昨年11月に発表した韓国に続き、2月にはインドへの進出を発表しているという。また、SaaS型のtroccoに関しては、3月にスタータープランの提供を開始。4月にはデータ活用を容易にする「trocco action」を発表しており、第一弾としてGoogle CloudのLookerからLINEへの連携を実現するという。

 こうしたプロダクトや会社の話題とともに伺ったのは、コロナ禍明けの働き方について。コロナ禍でテレワークが加速したIT業界だが、出社を戻している会社は意外と多く、週2回程度の出社というのがわりとスタンダードなイメイージ。ちなみに、同社は以前から月・金出社がルールとなっており、緊急事態宣言後は元に戻ったため、あまり変わらずとのこと。テレカン用のブースも20近く用意されており、オフィスも広くて快適そうだった。

 ということで、同日の記者キャラバンもなんとか終了。1日に多くのインプットを得る記者キャラバンは頭も足もどっぷり疲れるが、情報は交換することで価値が生まれ、対面はその解像度をさらにアップしてくれるものだと改めて認識した。われわれの記事自体もコミュニケーションの潤滑油になるものなので、こうしたインプットはやっぱり重要なのだ。

 実は4月後半も同様の広報・PR訪問をこなしており、GW前までに当初の2/3くらいのリクエストにはお応えできたかと思う。とはいえ、まだ1/3+αの方々のリクエストには応えてないし、関西に来いという声もある(笑)。もろもろ5・6月にはきちんと訪問していきたいと考えているので、しばしお待ちを。

記者キャラバン復活! 広報・PRとの対面ミーティングは記者のガソリンだ