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 深海には自然の遊び心満載の面白い生物たちが存在する。つるんとした半透明のブタのお尻のような、桃のような生物は2001年に発見された。

 その名もそのまんまの 「ピッグバットワーム(豚のおしり虫)」でゴカイの仲間である。

 正式な学名を「Chaetopterus pugaporcinus」(ちなみにこれもブタのお尻にちなんだもの)といい、カリフォルニア州モントレー湾や英国海峡のチャンネル諸島の深海をただよいながら、雪のような有機物を食べて生きている。

 体は10~20mmと小さな生き物だが、じつは「進化の飛躍」の真っ只中にあるすごい生物だと考えられているのだ。

【画像】 深海に浮かぶ「謎の塊」の正体は?

 米国国立自然史博物館の動物学者カレン・オズボーン氏が、このブタのお尻を連想させる生物と出会ったのは、「謎の塊」と記された小さなビンを手渡されたときだ。

ブタのお尻かミック・ジャガーの唇のように見えるこの奇妙な生物に、すぐに興味をそそられました。一般的な大きさの10倍にも成長した幼生なのか、それとも何か未知の存在なのだろうか、とね(カレン・オズボーン氏)

 2001年にモントレー湾水族館研究所(MBARI)の研究チームが発見したこの生物は、まったく分類不能。オズボーン氏はその正体の解明するというミッションを拝命することになった。

 モントレー湾の水深200~1000mの深海で採取された8匹から、謎の塊の正体がようやく判明し、2007年に正式に種の記載がされた。

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 DNAを解析した結果によるなら、その正体は「ツバサゴカイ科(chaetopterid)」の仲間で、「Chaetopterus pugaporcinus」と命名された。が、一般には「ピッグバットワーム」と呼ばれている。どちらも豚のおしり虫という意味だ。

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海底を捨て、浮遊生活を始めたこのワームは、「進化の飛躍」の真っ只中にあると考えられている/Image credit: Image courtesy of MBARI, Photo: Karen Osborn/MBARI

ブタのおしり虫は現在進化の真っ最中

 ツバサゴカイは別名を「パーチメントワーム(羊皮紙ワーム)」という。その名の由来は、海底に紙のような筒を作って、その中で暮らしていることだ。

 彼らが自由に水中を泳げるのは幼生のときだけなのだが、ピッグバットワームは大人になっても風船のように膨らんだお腹を浮袋にして海を漂っている。

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 だが、それも絶対確実な話ではない。採集されたピッグバットワームは成体だと考えられているが、はっきりとした生殖器が見当たらないなど、幼生の特徴も見られるのだ。

 一方、ツバサゴカイの一般的な幼生より5~10倍も大きいため、やはり大人だろうことがうかがえる。

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 大人になっても相変わらず浮遊生活を送るピッグバットワームは、「進化の飛躍」の真っ只中にあるだろうことを告げている。

 海底にへばりついて生きるほかの仲間を尻目に、このワームは海底を捨てその上に広がる海水の中で生きることを選んだようだ。

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 生きたサンプルの調査からは、ほかにも奇妙な特徴が確認されている。例えば、ピッグバットワームの体は青く光り、ついでに緑色に生物発光する粘液を分泌(おそらく捕食動物を怯ませるため)する。

 一方、ピッグバットワームが普段食べているのは、「マリンスノー」と呼ばれる動物の死骸や糞の粒子だ。その食べ方もユニークで、”雪”が降ってくると”鼻水の網”を広げてキャッチするのだそう。

 それにしても生き物にブタのお尻と名付けるとは、生物学者もずいぶん遊び心があると思わないだろうか?

 なんでも、そう呼んだのはこれを最初に発見した水中ドローンを操作していた人物であるそう。オズボーン氏によると、深海を長時間探検していると「バカ話に花が咲く」のだとか。

References:Pigbutt worm • MBARI / Pigbutt worm: The deep-sea 'mystery blob' with the rump of a pig and a ballooned belly | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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