一体、いつからでしょう。「美髪」と聞いて、サラサラのストレートヘアを思い浮かべるようになったのは。



カーリーガールリンさん



そんな刷り込みに悩み、苦しんでいる女性はきっと多いはず。カーリーガールリンさんも、そんな女性のうちの1人でした。しかし、彼女の人生はクセ毛を活かす「カーリーガールメソッド」に出会ったことで一変。


現在は0歳から23歳までを過ごしたカナダを離れ、主に日本に向けてクセ活に関する発信や製品の製造・販売を行っています。2024年4月15日にNHKの「あさイチ」で彼女を知った方も多いのでは?



『もう天パで悩まない! あなたのクセ毛を 魅力に変える方法』(青春出版社)カーリーガール リン (著)



今回は、そんなカーリーガールリンさんが執筆した「もう天パで悩まない! あなたのクセ毛を魅力に変える方法」の一部を紹介すると同時に、彼女のクセ活との出会いについてお届けします。










◆クセ毛がコンプレックスだったことも
――クセ活について教えてください。



BEFORE




AFTER



SNSのフォロワーさんによる造語で、いわゆる天然パーマも含め、クセ毛を活かしたカールヘアを楽しむことをクセ活と呼んでいます。


これまでは私も含め「クセ毛=ストレートに直すべきもの」という概念がありましたが、クセ活はその反対を行くスタイル。ボサボサになってしまうのは、ケアの方法を知らないだけなんです。そこで、きれいなカール作り、そのお手入れ・アレンジ方法などを楽しみながら共有しています。


――今はクセ活を楽しんでいるリンさんですが、クセ毛がコンプレックスに感じた時もあったそうですね。



縮毛矯正をかけていた頃の写真



自分と他人の違いを意識するようになった小学校高学年くらいから、クセ毛が気になるようになり始めました。


ブロッコリー」「アインシュタイン」といったあだ名が付けられるようになったときに「自分のクセ毛はあまりいいものじゃないのかな」と感じたことを覚えています。クセ毛の扱いが分からなかったので、常に頭が爆発している感じで「だらしない」「もっと努力して髪を整えなよ!」とも言われましたね。


「髪をたくさんブラッシングするとストレートになるんだよ」って教えられて実践したけど、ますますボリュームが出てしまったということもありました(笑)中学校1、2年生の頃には「みんなと同じになりたい」という気持ちが強くなり、その時に縮毛矯正を始め、以来約15年間かけ続けてきました。


◆クセ活を始めたきっかけ
――クセ活を始めようと思ったきっかけは?



縮毛矯正をすれば、コンプレックスは抑えられるけど、お金も時間もかかるし、毎朝のヘアアイロンも必須です。27歳くらいでふと「一生縮毛矯正を続けるのか」と思ったんですね。


そもそもなぜ縮毛矯正をかけているのかと自問したときに「いじめられたくない」「好きな人に振り向いてほしい」などの動機がありましたが、27歳頃にはそんなことはどうでもよくなっていました。


99人の人に好かれたいか、それとも自分が本当に好きだと思う1人に好かれたいかと考えたときに、縮毛矯正で自分をごまかす今の生活は続けられないなと。そこでクセを活かしたスタイリングを調べ、やってみようと思ったときに、呪縛から解き放たれました。


◆初めてのクセ活



――初めてクセを活かしたスタイリングを実践した時は、どのようなお気持ちでしたか?


本当に自分のクセでもうまくセットできるのか、半信半疑でした。まずは縮毛矯正をやめて、髪を伸ばさなければいけなかったので、実際にクセ活に臨むまでには1年半ほどかかりました。


その間は、縮毛矯正をかけたい気持ちをなんとか抑えていました。髪がだいぶ伸びで、地毛の部分が長くなった時に、クセを活かしたスタイリングを試してみて「これはイケるかも」って思えました。


初めてしっかりとスタイングをして鏡を見た時は、同じ自分の髪とは信じられないくらいで、「これが自分なんだ」と涙しました。


◆生活にも変化が
――クセ活以降、生活にどのような変化がありましたか?


今までの人生と180度違う感じです。それまではコンプレックスが強く、縮毛矯正をしてようやく自分の容姿をマイナスからゼロにできていると感じていました。


ところが、初めてプラスに持っていく体験ができ、自分の容姿を肯定的にとらえることができました。髪型が変わっただけですが、おしゃれを楽しめるようになりましたね。


縮毛矯正をしていると、ダメージが気になってカラーはできないし、カットも制限されやすい。でも、今は髪型に遊び心が入るようになりました。周囲からも「かわいい」とか「すごくうらやましい」と褒めてもらえました。


◆クセ毛をネガティブからポジティブへ



――インフルエンサーになった理由を教えてください。


そうですね。私が知る限りですが、私がクセ活を始めたときは英語の情報しかなくて、日本語の情報や日本で本格的に発信している人はいなかったんです。


クセ活の情報が増えれば、ひょっとして私だけじゃなくて、もっと多くの人が変わる機会につながるかもと思いました。私は英語と日本語の両方を話せるので、そのスキルを活かしつつ、皆さんにクセ活の情報を届けたいと思って2020年に始めたのがYouTubeでした。


続いてInstagramを始めたのですが、当初はフォロワーさんが数人しかいませんでした。「自分には無理」「本当にできるんですか?」といった声もありましたね。クセ活をしている母数が少なかったので、再現性が見えづらかったんだと思います。一方で、試した人からは爆発的な反応がありました。


活動を始めてから4年経った今も、ほぼ毎日感謝のDMが送られてきます。2024年2月から3月にかけて、私が開発した製品のポップアップストアイベントを実施した時は、泣き崩れながら感謝の言葉を口にする方や、感謝の思いを10枚近くの手紙にしてくださった方もいました。


それくらい、クセ毛をネガティブなものから、ポジティブなものへと変えられる体験は衝撃が大きいのだと思います。私は広く知られたインフルエンサーではありませんが、深さはなかなかだと思います。


◆クセ活を通して得られた仲間



――クセ活をする皆さんと交流を通じて得られたものも大きかったのでは。


クセ活は単なる髪型の変化ではなく、美髪=ストレートという既存の概念に対する挑戦だと思っています。縮毛矯正をやめて、クセ毛を活かした髪型で職場やデートに行くことって、すごく勇気がいることなんです。


その時に、自分1人ではなく、仲間がいるというのは心強いですよね。そして、私はクセ毛をマイノリティの1つだと思っています。だから他のマイノリティの「馬鹿にされてくやしい」「つらい」といった気持ちもとてもよくわかる。クセ活をしている仲間は気持ちをいたわって寄り添うことができるので、とても温かいコミュニティだと感じています。


――クセ毛に悩んでいる方へ、ぜひアドバイスを!


私は活かせないクセはないと思います。ものは考えようで、クセ毛をネガティブに捉えるか、個性として活かすかはその人次第。


「どうせ私にはできない」と思う気持ちもすごくわかります。私もそうだったから。でも、だまされたと思って挑戦してみてほしいです。もしかすると、本当に人生を一変させられるかもしれません。


髪はまた伸びてくるものなので、だめだと思ったら、また元に戻せばいいんです。今の時代、個性を尊重する流れがあり、チャンスだと思っているので、とにかく一度試しみてください。


◆校則を変えたい



――今後のやりたいことはありますか?


日本の学校を軸に変えたいことが2つあります。1つは美容専門学校です。美容専門学校ですら、クセを活かすための勉強があまりないんですね。髪のクセはさまざまで、単にそれをストレートにするだけでなく、活かす方法も学ぶ環境があれば、クセ毛に悩むもっと多くの人が楽しく生きられると思います。


もう1つは、学校の校則です。実は、私の母親は元々、日本の学校で教員をしていました。日本の学校の息苦しさを知っているから、日本を離れて育児をしたという事情もあったそうです。


天然パーマはダメで、反対に縮毛矯正でストレートにしているのは問題ないというのは、違和感がありますよね。今は日本の学校でも、日本以外のルーツのある子どもがいるのということは珍しくありません。そういった子どもにまで黒髪とストレートを求めるのはおかしいと思うので、校則も柔軟なものに変わってほしいですね。


私は自分のことを起爆剤だと思っています。クセ毛とか、海外育ちとか異なる背景を持つ私が膠着状態にあるコミュニティ同調圧力が強い日本のコミュニティに入ることとで、異なる考えを受容する気持ちや、自分らしさについて考える人が増えると考えています。


今の日本は、マイノリティであるかどうかにかかわらず、息苦しさを感じている人が多いように見えます。そんな空気を変えるきっかけになるのが私の日本でのミッションです。


――ありがとうございました!


<漫画/シバタヒカリ 文/増田洋子>


【増田洋子】2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora