今年1月のこと。アジアカップの取材のため、ドーハのカタール国立博物館近くのツイン1泊1万円近くのホテルに滞在した。海外取材にしては、いつもの倍近くの値段のホテルだった。これまでのように“貧乏旅行"もいいけど、そろそろ年齢に応じたホテルに泊まろうと思った次第である。

そしてこのホテル、宿泊している日本人はカメラマンの兄と僕の2人だけだったが、やたらとウズベキスタン人が多い。というか、1月中はウズベキスタン人しかいなかったと言っても過言ではない。そんな彼らと朝食中に会話したところ、誰もが“避暑"ならぬ“避寒"でドーハを訪れたという。

ウズベキスタンの首都タシケントの1月の平均気温は5を下回ることも珍しくない。そんな彼らにとって、ドーハは飛行機なら3時間くらいで訪れることのできる絶好の“温暖地"なのだという。彼らの誰もが「ドーハはとても近いんだよ」と教えてくれた。日本なら、さしずめ東京から沖縄といったところか。

そんなウズベキスタンはW杯予選で訪れたことがあるが、中国と同様に人種のるつぼでもある。ドーハのホテルで会った彼らは、一見するとヨーロッパ人にしか見えない夫婦もいれば、どう見ても中国人かモンゴル人のような、黒髪に日本的な顔立ちの若者たちも多かった。唯一、見分けられたのはイスラム教徒の民族衣装を着ている女性たちだけだった。

日本ウズベキスタンU-23アジアカップ決勝の話をする前に前置きが長くなったのはご容赦願いたい。日本からも熱心なサポーターが応援に駆けつけたが、それ以上にウズベキスタンのファンが多かったのは、彼らにとって中東、カタールUAEはとても身近な国だということを今年1月のアジアカップで初めて知ったことを紹介したかったからだ。

日本戦に出場したウズベキスタンの選手たちも、目鼻立ちは整っているが、髪の色も含めてどこかアジア的な雰囲気を感じずにはいられない。ドーハのホテルで会った若者たちも、髪の毛は短いもののきちっと刈り揃えたり、サイドを刈り上げたりするなど清潔感が漂っていた。

そんなウズベキスタンはグループリーグから決勝まで無失点で勝ち上がってきた。アンダー世代からの強化の賜物だろう。実に隙のない、好チームだったが、残念ながら彼らには藤田譲瑠チマや荒木遼太郎のような“ファンタジスタ"がいなかった。絶対的なストライカーも、日本にもいないしどの国も求めているが、いないのに救われた。

それでもウズベキスタンは五輪初出場である。地道な強化が実った成果と言える。3位決定戦で延長戦の末にインドネシアを下して16年リオ五輪以来6度目の出場を決めたイラクも好チームだったし、3位決定戦でイラクに敗れたインドネシアの躍進にも驚かされた今大会だった。彼らには是非ともギニアとのプレーオフに勝って68年ぶりの五輪出場を決めて欲しいし、U-23日本との対戦も実現して欲しいものである。




【文・六川亨】