首都圏から近い温泉リゾートとして有名な「熱海」。ところでなぜ「熱い海」という地名なのでしょうか。同じ地名は海がないところにもあるなど、様々なバリエーションがあります。

熱海はなんで「熱い海」

静岡県熱海市は東京からもアクセスしやすい人気の旅行エリアのひとつ。温泉街でもあり、海水浴スポットとしても有名です。ところでなぜ、「熱い海」という地名なのでしょうか。

熱海駅から降りてすぐの熱海平和通り商店街では、道路の側溝から湯けむりが出ていたり、温泉の湯気で蒸した温泉まんじゅうが売られていたりと、至る場所で“熱”という言葉を感じさせる場面に遭遇します。

熱海が熱い海と名付けられたのには、まさしく“熱さ”に由来がありました。

熱海市役所では熱海という地名の語源について、「海中から温泉が湧き上がり海がことごとく熱湯となり『あつうみが崎』と呼ばれ、変じて『あたみ』と称されるようになった」と説明されています。海から湧き上がった熱い海の存在が、現在の全国屈指の温泉街を築いたといえるでしょう。

しかし、海がないのに「熱海」という地名もあります。福島県郡山市の奥座敷ともいわれる磐梯熱海温泉、地名でいえば郡山市熱海町です。

磐梯熱海の地は12世紀末、鎌倉幕府の成立前に起きた奥州合戦の地のひとつです。奥州平泉の藤原氏を討ち滅ぼし、この地の新たな領主となった御家人の故郷が伊豆国の熱海であったことから、熱海という地名が名付けられました。

そのため熱海町内には「上伊豆島」「下伊豆島」など伊豆にちなんだ地名がつけられています。

もうひとつ、似たような地名が、山形県日本海沿いにある鶴岡市(旧温海町)の「あつみ温泉」です。「熱い」ではなく「温い」ですが、「あつみ(あつうみ)」というのは熱海との親和性を感じます。

こちらは、「温泉から溢れ出た温かな湯が、川に流れ込み、日本海を温めた」ことに由来するもの。海から温泉が湧いた「熱海」よりも、たしかに「温い」ものだったのかもしれません。

上野東京ラインの列車。熱海発着も多い(画像:写真AC)。