BTSのメンバーであるSUGA初のソロワールドツアーの、ソウルで行われたファイナル公演を映像化した『SUGA Agust D TOUR ‘D-DAY’ THE MOVIE』が現在、全国の劇場で上映中だ。シネマティック専用カメラで撮影したという貴重なアングル映像で、まるで実際に会場でライブを見ているかのような臨場感あふれる体験をすることができる。

【写真を見る】JUNG KOOKらBTSのメンバーも登場し、SUGAとのコラボステージを披露

SUGAが“3人の人格”を音楽で表現するソロツアー

世界中で人気を誇るBTSで、ラッパー兼プロデューサーを務めているSUGA。アーティストとしてだけでなく楽曲制作でも高い評価を得ており、BTSの楽曲はもちろん、IUに提供した「eight」など、ほかのアーティストの楽曲も幅広くプロデュース。そんな彼のカリスマ性に、世界中のARMY(BTSのファンネーム)が心酔している。

そんなSUGAは3つの名前を持っている。BTSとして活動する“SUGA”、ソロ活動名の“Agust D”、そして本名の“ミン・ユンギ”だ。このツアーでは、SUGAの中に存在する“3人の人格(自我)”が三者三様の魅せ方でステージを披露していった。3人それぞれの存在感は、VCRやセットリストにも色濃く放たれているが、全ての人格に共通して言えることは、音楽、そしてライブへのストイックなほどの情熱だ。本作ではライブ映像に加え、ツアーの裏側やSUGAがソロツアーに込めた想いなどもコメントで流れるので、よりその情熱をしっかりと感じることができる。

ソロ名義“Agust D”でリリースされた楽曲は、自身の過去の苦悩やトラウマや、現在の社会への怒りなどを、赤裸々に綴ったものが多い。SUGA自身も、「“Agust D”は自分が言いたいことをありのままに話すのが役割」と話している。ツアーの1曲目で披露した「Haegeum」は、SUGAがBTSとして、アイドルとして生きていくなかで感じている息苦しさからの“解禁”や“解放”を歌う一曲だ。続いて「Daechwita」。「王は誰だ?ボスは誰なんだ?全員わかってんだろ俺の名前!」という最高の煽りラップを高速でかます“Agust D”があまりにもかっこよく、正直、こちらも正気ではいられない。映画館で鑑賞しているので立ち上がったりできないのだが、思わず立ち上がって叫びたくなってしまう。

かと思えば「Trivia 轉: Seesaw」のアコースティックバージョンでは、甘くて色気たっぷりな雰囲気をまとい、しっとりと歌い上げる。さっきまで「俺が天才なことに感謝しな!」とオラオラ歌ってた男が、「お互い好きだけど離れたほうがいいかな…」と、激重なラブソングを歌うのだ。SUGAって本当に、この高低差ありすぎるギャップがたまらない。しかもSUGAが弾いているギターには、BTSメンバーからのメッセージが書かれていて、スクリーンにギターが映し出される度に感動してしまう。と同時に、「김태현」(Vの本名であるキムテヒョンのハングル文字)と大きく書かれた存在感ありすぎるサインが、Vらしくてほっこりする。

■BTSメンバーの絆を確かめられるコラボと自信の内面に深く迫るパフォーマンス

本作では、RM、JIMIN、JUNG KOOKがゲストとして登場したコラボステージも収録。メンバーと一緒にいるときのSUGAはやっぱりどこか安心しているように見えるし、一気に表情が“ミン・ユンギ”に戻ったような気がして、メンバーとの絆が感じられる。

RMはAgust Dの楽曲「Strange(feat.RM)」を熱唱。「生きるって幸せなのか、苦しいことなのか?」というSUGAの問いかけに、RMが「正解はない、それが正解だ」と答えるこの楽曲は、歌詞があまりにも深すぎて考えさせられる。改めてBTS の楽曲面を支えている2人の、知性あふれる言葉選びや思考の深さに感動する。

JIMINは「Tony Montana(with JIMIN)」を披露。この楽曲をSUGAとJIMINがステージで披露するのは、なんと2016年以来!レアなパフォーマンスを映画館で見られるだけでもありがたいが、実際に会場で見られたARMYはなんて幸運なのだろうか…。BTSでは高音の美声で魅了しているJIMINが、この曲ではSUGAと共に力強いラップをバチバチにキメていて、最高にかっこよかった。

そしてJUNG KOOKは、「Burn It(feat.MAX)」でコラボステージを。JUNG KOOKはSUGAと一緒にステージを本当に楽しんでいることがスクリーン越しにも伝わってきたし、相変わらずの声量に圧倒された。JUNG KOOKはその後に行ったWeverse Live(ライブ配信)でも、「コンサートで歌えてARMYたちに会えて本当によかった!僕もコンサートやりたい!!!」と、ライブへの意欲を示していた。

こうしてメンバー3人のコラボステージを見ると、「やはりBTSって最強だな、圧倒的王者なんだ」と、改めて思う。もちろんSUGAのソロパフォーマンスだけでも満足すぎるほど満足なのだが、さらにSUGAの魅力を引き出し、SUGAが安心して隣でラップをバチバチかますことができるのは、きっとこの世でBTSのメンバーしかいない。

ライブ後半では、ピアノの弾き語りで「Life Goes On」を披露。BTSの「Life Goes On」として制作されたが採用されなかったメロディを、再編集して作った一曲だ。会場いっぱいに光り輝くアミボム(BTSのペンライト)に囲まれながら丁寧に歌い上げ、時おり優しい表情で会場を見渡すSUGAがとても印象的だった。

そして「AMYGDALA」。これはSUGAのトラウマと過去の苦悩について赤裸々に語った楽曲。「早く私を救ってくれ」と苦しい歌詞が続くこの曲の後にパフォーマンスしたのは「D-DAY」だ。「未来は大丈夫だ」というフレーズから始まり、「過去は過ぎていった」「憎しみに覆われた世界に再び 蓮の花が咲く」と、前向きな言葉が綴られている。個人的にはこの2曲が、今回のツアーの核心に迫る楽曲なんじゃないかと感じた。SUGAは、「『D-Day』はSUGAの人生のどの辺りが表現された曲なのか?」という問いに、「今」と答えていた。過去のありのままの自分を受け入れて、“SUGA”、“Agust D”、“ミン・ユンギ”それぞれが明るい未来を受け入れていく…。2曲のパフォーマンスからは、そんなSUGAの覚悟や希望が垣間見えたような気がした。

「アーティストにとって公演は欠かせないものです」「公演をして初めてアーティストという職業が完成すると思っています」「僕は公演を愛しています」と、SUGAは語る。その言葉どおり、彼がどれだけライブに魂を込めているのか、どれだけの情熱を注いでいるのかは、本作を観れば十分すぎるほど伝わるはずだ。IMAXでの大スクリーンやアミボムの持ち込み&歓声OKの上映も実施され、ライブ会場さながらに盛り上がることができるので、ぜひ足を運んでSUGAの“生き様”を見届けてほしい。

文/紺野真利子

SUGAのソロコンサートの模様を捉えた『SUGA Agust D TOUR ‘D-DAY’ THE MOVIE』が公開中/[c]BIGHIT MUSIC & HYBE. All Rights Reserved.