ホームのすぐ真横が海、しかし改札の外に出ることができない――そんな変わった駅が、大都会・横浜に存在します。実際に行ってみました。

一般人は「駅から出られない駅」

ホームのすぐ横が海という風光明媚な駅でありながら、「改札の外に出ることができない」という変わった駅、それが鶴見線海芝浦駅横浜市鶴見区)です。どのような駅なのか確かめに行ってみました。

まずは京浜東北線鶴見駅鶴見線の海芝浦行きに乗り換えます。列車は鶴見駅を発車すると、レトロな雰囲気が漂う国道駅や、浅野財閥の創始者・浅野総一郎が駅名の由来となっている浅野駅を通っていきます。

新芝浦駅を出ると、いよいよ線路は海沿いを走り、車窓には海面が広がります。列車は工業地帯の中の運河に沿って進み、終点の海芝浦駅に到着しました。ゴールデンウィーク期間中ということもあり、この日は結構な数の下車がありました。

ただ、海芝浦駅は東芝グループの工場「東芝エネルギーシステムズ京浜事業所」に隣接しており、改札を出てもそこから先は関係者以外立ち入り禁止。工場構内の撮影も禁止という貼り紙が。

一般の利用者は駅構内から出ることはできないため、簡易suica改札機の「出場」をタッチした後、「入場」をタッチして運賃を精算する必要があります。ICカードを持っていない場合は、きっぷ入れにきっぷを入れ、帰りは乗車証明書を発券して降車駅で精算する流れとなります。

「駅直結の公園」もあった

ホームのすぐ下には京浜運河が広がり、工場群や首都高湾岸線に架かる「鶴見つばさ橋」などの眺めが楽しめます。また、目の前を貨物船や警戒船などが通ることもあり、行き交う船も見飽きません。都心から近く、ちょっとした「非日常感」を感じたり、気分転換に訪れたりするのにもいいでしょう。

目の前に広がる“海”は京浜運河ではありますが、ホームから海、つまり水面に最も近いという意味では、海芝浦駅が「日本一海に近い」といえるかもしれません。

ただ、日中は1時間に1本も列車が来ない時間帯があり、本数が少ないため注意が必要です。本数が増える夕方に訪れ、夕暮れの景色を楽しむのもおすすめです。

駅の奥に進むと、「海芝公園」がありました。この公園は、海芝浦駅の景色を求めて訪れる人が後を絶たないため、企業が所有地を一部開放し、駅に直結する形で造ったミニ公園。ここだけは一般客も出入りが可能となっています。公園内には花が植えられ、ベンチも設置されるなど、綺麗に管理されていました。

大都市にあるにも関わらず、上記のような特殊性から秘境感も漂う海芝浦駅鶴見線は2024年3月のダイヤ改正で新型車両E131系に統一されており、新型車両の乗車と合わせて訪れるのもよいでしょう。

鶴見線のE131系(乗りものニュース編集部撮影)。