2015年9月にアダルトビデオメーカー・HMJMの専属セクシー女優としてデビューした八ッ橋さい子さん(31歳)。事務所に所属せずフリーで活動する彼女は、慶應義塾大学卒の才女であり、地方公務員として働いていたこともあり、さらに片付けられない女でもあるという異色の肩書きを持つ女優だ。

 4か月後にはデビュー9年目を迎える今、改めて過去の経歴を振り返ってもらう一方、新法に揺れる現在のAV業界について語ってもらった。

◆「ぜんぜん優等生じゃないんですよ」

――桜蔭中学校・高等学校から慶応義塾大学に進学し、卒業後は公務員に。経歴を見ると完全なる才女ですよね。

八ッ橋さい子(以下、八ッ橋):それ、よく言われますけど実際は2回も留年しているので、ぜんぜん優等生じゃないんですよ。もともと勉強も好きではないですし、公務員もなんとなくというか、仕方なく選んだ進路なので(笑)。

――特に就きたい仕事というわけではなかった?

八ッ橋:就職活動のやり方がよくわからなくて、気が付いたら採用がどこも終わっていたんです。公務員の仕事自体はやりがいもそれなりにあったのですが、最初から長く続けるつもりはありませんでした。

◆AVデビューは「ある映像作品」の衝撃で

――AVの世界にはその頃から興味を抱いていたのでしょうか。

八ッ橋:見たことはあったけれど、よくわからないものという印象でしたね。でも『劇場版テレクラキャノンボール2013』を見た時にものすごく衝撃を受けて、関連イベントにも足を運ぶようになったんです。そういった縁が重なって、結果的にカンパニー松尾監督のところでデビューさせてもらうことになりました。

――なぜAVデビューの道を選んだのですか?

八ッ橋:見たこともない世界に飛び込んでみたかったんですよ。それに、ぶっちゃけ自分のスタイルには自信がありました。彼氏だけにしか見せないのはもったいないと思っていたんです(笑)だから、デビューするにあたって抵抗感は全然なかったですね。ただ、葛藤はありました。親に反対されるであろう仕事だとは理解していたので。それでも、自分の中ではAVに出ることはハッキリと決まっていたんです。

◆適正AV、AV新法にフリーの立場から思うこと

――――現在、事務所に所属せずフリーで活動されていますね。

八ッ橋:まずデビューの時にフリーで活動を開始して、その後はしばらく事務所に所属していました。事務所を辞めた時、次のところに移籍するには少し間をあけたほうがいいと思って、再びフリーで活動を始めたらそのままにフリーが定着してしまったという感じですね。あえてフリーになりたかったわけではないんです(笑)。

――日刊SPA!でも取材した「AV新法改正『ナイスですね!』 演説イベント」にも、フリー女優として参加されていましたね。AV新法は作品ごとに契約書を求めたほか、撮影終了から4か月は作品を公表してはいけないことなどが定められました。2022年に施行されて変わったことはありましたか?

八ッ橋:正直な話をさせてもらうと、私の中ではそれよりも前に、適正AVができたことのほうが大きな変化のように感じました。

――適正AVは、AV人権倫理機構がルールを策定した出演者の人権に適正に配慮したAV作品ですね(3月末にAV人権倫理機構が解散したため、現在「適正AV」の名称は使われていない)。

八ッ橋:この適正AVという枠組みができたことで、大手メーカーではフリー女優の撮影をしないという自主規制ルールが生まれました。この時にフリー女優の活動が一気に苦しくなったんですよ。

◆このままだと「AVの面白さは失われてしまう」

――その頃は、どのような形で収入を得ていたのですか?

八ッ橋:積極的に配信をやったり、撮影会をしたりしていました。なので私はAV新法によって仕事が減ったという感覚はないんですよ。逆に施行後のほうが撮ってくれるメーカーが増えたくらいです。

――それでも、AV新法改正には賛同している?

八ッ橋:はい。外からの圧力で締め付けを受けると、業界全体が萎んでいくだろうという不安があるからです。内容自体が規制されていくことが問題だと思うんですよ。これ以上、厳しくなったらAVは絶対につまらなくなります。本来の面白さが失われてしまいます。

――確かに八ッ橋さんが大好きな『テレクラキャノンボール』のような作品は生まれづらい状況になっていますね。

八ッ橋:あんな風な撮影はもうできないだろうし、自分が出ていた作品も今では無理なものが多いし、大好きだったAVがどんどん作られなくなっていくことは純粋に悲しいですね。女優が守られることはもちろん大事ですが、今の状態は一方的に制作側が苦しめられているような気がします。内容の規制についても他に方法はなかったのかな、と今でも思っています。私はAVに出たくて出た人間だから、気楽に言えることかもしれませんけどね。

◆「仕事がなくなるのかな」と思うことも

――今後もセクシー女優は続けていくつもりですか?

八ッ橋:引退はまだしたくありません。できる限りやっていきたいです。外圧的な理由で「仕事がなくなるのかな」と思うことはありますが、自分から辞めるという選択肢はありません。

――なぜ、そこまでAVの仕事にこだわっているのでしょうか。

八ッ橋:単純に楽しいからです。現場の雰囲気も好きですし、まだやってみたい作品もありますし、本音を言えばもっといっぱいAVに出たいです。ただ、もしかしたら女優という立場ではなく、裏方にまわるという形で業界に関わるのでもいいのかもしれません。

――根本的にAV業界への愛が深いですよね。

八ッ橋:AV以外の仕事をしてみたい気持ちも、あるにはありますよ。会社員になろうとは思わないですけど、別の世界を見るのもいいかな、と。それでも、そこで得たものは”八ッ橋さい子”に、ひいてはAV業界に還元したいですね。

◆今でも「片づけられない女」のまま

――プライベートの話も少し聞かせてもらえれば。以前、テレビでごみ屋敷で暮らしていることが特集されていましたが、あれから部屋は綺麗になったのでしょうか?

八ッ橋:全く解消されてないですよ。むしろ、もっとひどくなっているかもしれません。もともと片付けが苦手なんですよね。実家の部屋も床が見えないくらい散らかっているんです。親に勝手に片されるのが我慢ならないので、きっと今もそのまま放置されていると思います(笑)。

――生粋の「片付けられない女」なのですね(笑)。

八ッ橋:でも今後も人を家に呼ぶ気はないので、部屋の状態は自分が生活できているなら今のままで十分だと思っています。

◆このまま一人で、恋愛も結婚もせずに生きていく

――他人と一緒に暮らすことも苦手そうですよね。

八ッ橋:はい。私はこのまま恋愛も結婚もしないつもりです。私はオタク気質なので、ハマるとものすごくハマってしまうんですよ。そういうのが面倒臭くて、恋愛全般から距離を置いています。

――人肌恋しいという感覚もありませんか?

八ッ橋:そうですね。性欲もあるにはありますけど、それ以上に人間関係が面倒臭くなるのが嫌な気持ちが上ですね。これからも、このまま一人で色んなことを追求しながら生きていきたいと思っています。

<取材・文・撮影/もちづき千代子>

フリーセクシー女優の八ッ橋さい子さん