やっぱりクルマのタッチパネルは美しいけど使いづらい! 欧州で評価機関が「物理スイッチ」採用を評価項目に加えることを決定

この記事をまとめると

◾️昨今のクルマではさまざまな操作をタッチパネルに統合しようとする動きがみられる

◾️欧州の自動車アセスメント「Euro NCAP」が一部操作系が物理スイッチであることを評価項目にすることを発表した

◾️タッチパネルによる操作系の統合には賛否両論の声がある

Euro NCAPが物理スイッチの復活を要求

 Euro NCAP(ユーロ・エヌキャップ)が3月に出した提言に対して、自動車産業界やユーザーの間で賛否両論がある。これは、昨今のトレンドである車内タッチパネルのあり方を見直し、手動のスイッチである、いわゆる「物理スイッチ」の採用を求めるものだ。

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

 Euro NCAPとは、欧州のニュー・カー・アセスメント・プログラムのこと。第三者機関が、新車の衝突安全や予防安全について独自の試験を行い、その評価を一般向けに公開するシステム。これによって、自動車メーカーはクルマの総合的な安全性に対する研究開発に対する意識を高めることができると同時に、ユーザーはクルマの安全性という尺度でクルマ選びをできる。

 規制ではないのだが、Euro NCAPの試験評価は自動車メーカーにとって極めて重要であり、Euro NCAPが提言する新しい試験項目や新しい評価基準は、自動車メーカーにとって「実質的にクリアしなければならない」案件となる場合が多い。欧州のほかにも、国や地域でNCAPが存在し、日本でもJCAPがある。

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

 これらのなかで、Euro NCAPは先進的な取り組みを行い、それを参考としてJCAPが試験項目を拡充するという流れがこれまであったため、今回のタッチパネル関連の提言が日本市場にも影響を及ぼす可能性が高い。

 Euro NCAPの提言は、ウインカー、ハザードランプ、緊急時のSOSボタンなどをタッチパネルでの操作ではなく、レバーボタンダイヤル、スイッチなどの物理スイッチで設計することを、安全性の評価基準に組み込むというもの。2026年から採用する。

 近年、テスラ「モデル3/モデルY」に代表されるように、車内での各種操作をダッシュボードのタッチパネルで行う考え方が広がっている。

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

 とくにEVでは、車内デザインの先進性を強調するため、タッチパネルを重視した車両設計が目立つようになってきた。

 こうしたトレンドに対して、「とっさの動作が必要なとき、操作がわかりにくく時間がかかってしまう」というネガティブな声がある。一方、「スマートフォンのように、直感的に操作できて便利だ」というポジティブな声もある。

 Euro NCAPは2022年11月、NCAPの将来のあるべき姿について「ビジョン2030」を取りまとめており、自動運転や予防安全技術に関する試験の拡充の可能性を示してきた。そうしたなかに、HMI(ヒューマン・マシン・インタラクション/インターフェイス)に関する新しい取組みもあり、今回の物理スイッチについても、「人とクルマ」の関係性を改めて見直す機会になりそうだ。

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

Euro NCAPが物理スイッチの復活を求める新基準を制定

やっぱりクルマのタッチパネルは美しいけど使いづらい! 欧州で評価機関が「物理スイッチ」採用を評価項目に加えることを決定