高速道路をまたぐ陸橋を越えたら、その先に道がない! そんな不思議な道路が32年の歳月を経て全線開通しました。それでも現地はやはり不思議な光景が。今後どうなるのでしょうか。

32年ぶりに全線開通した川口の都市計画道路「戸塚差間線」

埼玉県川口市の都市計画道路「戸塚差間線」が、2024年4月26日に全線開通しました。“不思議な道路”としてテレビなどでも紹介されていた未開通部およそ320mが、実に32年の時を経て完成。SNSなどでも驚きの声が寄せられています。

この道路は、JR武蔵野線埼玉高速鉄道東川口駅に近い川口市戸塚地域を東西に横断する約1.6kmの路線。沿道は住宅街ですが、途中には東北道国道122号をまたぐ陸橋もあります。東北道を横断できる箇所は限られるため、交通上も貴重なポイントといえます。

ただこの橋、「大型車は通り抜けできません!!」との看板とともに、橋のたもとの車道にコンクリートブロックが置かれて意図的に幅が狭められていました。

なぜなら、橋の東側で突如として道路が途切れ、細い道のみに接続している状態だったからです。途切れた道路の向こうには、まっすぐ続く開通済の道路と住宅街。そこを“何もない”緑の空間が阻んでいました。

開通後に現地を訪れると、陸橋の警告看板やコンクリートブロックはキレイに撤去されています。ただ、道路はつながったものの、やはり“何もない”空間がそこにありました。

戸塚差間線はほぼ全線が川口市に属すものの、約320mの未開通部は2か所、さいたま市が北からわずかに食い込んでいます。その部分が“何もない”空間であり、道路の整備が進んでいませんでした。

その中間、川口市が南からわずかにさいたま市へ食い込む部分だけは、道路もできている状態で、傍らにマンションまで立っています。道路の左右が途切れたこの部分は、住民が横断するか、迷い込んだクルマが途方に暮れて転回するしかない、という状態が長年続いていたのです。

不思議な光景はこれから変わる?

川口市の道路街路課によると、開通にこぎつけたのは、「さいたま市側の土地区画整理が終わったため」だといいます。

川口市側は、土地区画整理とともに戸塚差間線の道路整備を進め、1992年に完了。同市側は成熟した住宅街が広がる一方で、さいたま市側の土地利用は進んでおらず、周辺は両市の“境界”がハッキリとわかるほど好対照をなしています。

それでも少しずつ、さいたま市側の基盤は整備されてきています。

現在、戸塚差間線の新規開通部と交わり、北へ延びる別の道路の建設も進んでいます。こちらは年内にも開通予定とのことで、戸塚差間線との交差部には信号の設置が予定されているそうです。今後、周辺はその姿を大きく変えていくかもしれません。

開通した戸塚差間線の東北道東側区間。手前にはコンクリートブロックや分離帯を撤去した跡が(乗りものニュース編集部撮影)。