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 今から数十億年前、太古の火星は、今よりもずっと水が豊かな世界だったと考えられているが、それを裏付ける新たな証拠が、かつて湖だったとされるクレーターの中から発見されたそうだ。

 NASAの火星探査車「キュリオシティ」が発見したその証拠とは「酸化マンガン」だ。それが示しているのは、かつて火星には酸化をうながす環境があったということだ。

 もしや火星の原始大気には酸素が豊富に含まれていたということなのだろうか? そしてそれは生命活動によって作られた?

 確かなことはわからない。だがいずれにせよ、酸化マンガンは大昔の火星が意外なほど地球に似ていた可能性を示している。

【画像】 火星のクレーターの底に高濃度の酸化マンガンを発見

 火星に到着して12年目を迎えるNASAの探査車「キュリオシティ」は、現在、古代の湖の跡地だったと考えられているゲールクレーターで調査を進めている。

 様々な科学機器が搭載されており、そのミッションは「過去と現在の火星における、生命を保持できる可能性について調査する」ことだ。

 米国ロスアラモス国立研究所の研究チームが、科学機器の1つであるChemCamが収集したデータを分析したところ、ゲールクレーターの底の堆積物に、意外なほど多くの「酸化マンガン」が含まれていることが判明したのだ。

 酸化マンガンがあるということは、そこに強い酸化環境があったということだ。ということは、太古の火星には酸素たっぷりの大気があったのではないだろうか?

[もっと知りたい!→]火星で発見された炭素は、生命の活動により生成された可能性

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今の姿からは想像できないかもしれないが、ゲールクレーターは数十億年前は水の豊かな湖だったと考えられている / image credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS

なぜ火星に酸化マンガンが?

 ロスアラモス国立研究所のパトリック・ガスダ氏は、「火星の地表では、そう簡単に酸化マンガンは形成されません。水面と陸地の境界に積もった堆積物からこれほど高濃度の酸化マンガンが発見されるとは予想外です」と、プレスリリースで述べている。

 ここ地球では、酸化マンガンを含んだ堆積物はどんどん作られている。

 というのも、植物や微生物の光合成のおかげで地球の大気は酸素たっぷりなので、それによってマンガンの酸化がうながされるからだ。

 もちろん、今のところ火星で生命の存在を示す証拠は見つかっていない。また、大昔に酸素が豊富な大気を作り出しただろう自然現象が起きたという証拠もない。

 そのため、クレーターで発見された酸化マンガンがどうやって作られ、そこに溜まってたのか、などついてはまだ謎のままだ。

この発見は、火星の大気や地表の水で起きているより大きなプロセスを指し示しています。火星での酸化を理解するには、もっと研究を進めねばなりません(ガスダ氏)
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ゲールクレーターを調査するキュリオシティ

かつての火星は地球によく似た環境だった可能性

 地球の酸素は植物や微生物が作っているが、火星の酸化を引き起こしたものが生物によって作られた酸素とは限らない。

 キュリオシティの発見が伝えているのは、少なくともマンガンを酸化させる何かがあったということで、生命活動が関係していない可能性もある。

 酸化マンガンは、湖の水によって作られたのかもしれない。砂の中を流れる地下水によって作られた可能性もあるし、元々その場所にあったものが地下水によって変化した可能性もある。だがいずれにせよ、金属を酸化させる必要はある。

 ロスアラモス国立研究所のニーナ・ランザ氏によるなら、クレーターの岩石から明らかになったゲール湖の状況は、かつてそこが現在の地球と驚くほどよく似た居住可能な環境だったろうことを伝えているという。

マンガン鉱物は、地球では湖の浅瀬の酸素を含んだ水によく見られるものです。太古の火星に、このような特徴が見られるのは驚くべきことです

 この研究は『Journal of Geophysical Research: Planets』(2024年5月1日付)に掲載された。

References:New findings point to an Earth-like environment on ancient Mars / written by hiroching / edited by / parumo

 
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かつて火星には地球と似た環境があったことがキュリオシティの調査で明らかに