旅客機が離陸直後や着陸前などで、上空でも車輪を出したまま飛ぶシーンで、2対4輪以上の主脚を持つ旅客機では、主脚が機首側・尾翼側に傾くという現象が発生します。なぜ、このようなことが発生するのでしょうか。

格納スペース上の都合?

旅客機の離着陸時に車輪で走行し、上空では空気抵抗を減らすなどの目的から車輪をしまいます。ただ、離陸直後や着陸前などで車輪を出したまま飛んでいる状態で、車輪を機体に垂直ではなく、あえて機首側、もしくは尾翼側に傾けられます。なぜでしょうか、

これは2対4輪以上の主脚を持つ旅客機の場合です。整備士によると、この主脚の傾きは格納スペースの都合上、生じるものといいます。

多くの旅客機では、胴体の中心部、主翼の付け根あたりに格納スペースがあり、主脚を内側へ折り込むようにして車輪をしまいます。この際、限られた格納スペースに無駄なく、効率的にしまえるよう主脚に角度をつけるとのことです。

現在飛んでいる旅客用モデルの多くでは、前の車輪が下がった状態の角度でしまわれるよう設計されているのが一般的だそう。同社で運航されているボーイング767エアバスA350は地上から離れると前下がりの状態になり、そのまま格納されます。

これらと比べて、少し変わった動きをとるのがボーイング777です。777は大型の旅客機で、そのぶん主脚も車輪の数が多く、1本あたり3対6輪となっています。

「前上がり→前下がり」の機体もあるだと…?

ボーイング777では地上から離れたのち、まるでつま先を浮かせて立つように、いったん前方の車輪が上がった、前上がりの状態になります。その後、車輪を格納する寸前、前上がりの状態からほかのモデルと同様に前下がりに再調整され格納されるとのことです。なお、同じくボーイング製の旅客機である787も、同じように前上がりの状態から前下がりに再調整され、しまわれます。

もちろんこの傾きはあくまで主脚をしまうスペースに合わせたものなので、すべて「前下がり」というわけではないようです。たとえばかつてJALの主力モデルだった「ジャンボ」ことボーイング747シリーズの主脚は、いわゆる777の離陸直後と同じように前輪が前に上がった状態で、そのまま格納されます。

また747シリーズはその大きさゆえ、2対4輪の車輪がついた主脚が、主翼下に2本、その後ろに2本という配置ですが、その傾き方、そしてしまい方も、効率的な格納のためこれまた独特です。主翼下のものは大きく傾きそのまま内側に折り込むように、後方のものは小さく傾き前方に振り上げるような形でしまわれます。

離陸中のJALのボーイング767。主脚の角度が前下がりに傾いている(乗りものニュース編集部撮影)。